相続専門税理士 髙原誠の「円満相続コラム」

フジ相続税理士法人 代表税理士 髙原誠のコラムページです。相続・不動産に関する最新情報やホットな話題をわかりやすくお伝えします。

不動産オーナーの8050問題

2019年10月14日 [ 不動産 ]

5080問題

今回は税金の話から離れて、不動産オーナーの「8050問題」を取り上げます。
 ご存じでしょうが、8050問題とは近年、顕在化してきた長期的な引きこもりに関する社会問題をいいます。引きこもりの子をもつ家庭が高齢化し、80代の親が50代の子の面倒をみるという体力的にも経済的にも苦しい状況の中、社会から孤立してしまうという深刻な問題です。
 しかし、ここではその本来の意味ではなく、同様の年代における不動産オーナーの親子間ギャップの問題についてお話しします。

不動産オーナー家族の「8050問題」

「突然、不動産管理をしなきゃならなくなって、何が何だかわからなかったよ」。賃貸不動産を持つ親御さんが亡くなり(あるいは介護状態になり)、管理を引き継いだお子さんからよく聞かれる言葉です。
「駐車場を借りてるって人がいきなりお金を持ってやってきて、『これ来月分の賃料ね。台帳にハンコちょうだい』なんて言うんだもん。それが月末に何人もだよ。全部で何人に貸してるのかもわからないし、本当にその人の言う金額で合ってるのかもわからない。こっちは仕事もあるから妻に対応をお願いしたけど、買い物にも行けないって困ってた。こう言っちゃなんだけど、正直、残された自分たちは迷惑したよ。親父は最後まで何も教えてくれなかったし、書類も整理してくれてなかったんだもん」。
 これが、私の考える不動産オーナーの8050問題。不動産から隔てられていたお子さんが突然、不動産管理(賃貸経営)の世界に放り込まれて、右往左往している場面のなんと多いことか。

どうしてスムーズに引き継げない?

不動産管理業務

 なぜ、元気なうちに上手く管理を引き継げないのでしょうか。
 親としては「借主との付き合いが長く関係も良好だからあえてそれを変えるのが面倒」「自分の懐具合を子どもに知られたくない」。子としては「忙しくて不動産管理に回す時間がない」「実家が遠くて通えない」、といった理由が挙げられるでしょうか。親子双方に事情がありますが、だからといって先延ばしにするのはあまりよくありません。

 不動産そのものについては、ほとんどのご家族が「親から子へ引き継ぐべきもの」とお考えです。承継にかかる税金などのコスト削減に意欲的な方もたくさんいます。ところが、不動産に関するさまざまな「情報」の引き継ぎとなると、その必要性を見過ごしている方が多いのです。
 しかし、情報が伝わっていないことで被る不利益は確実にあります。賃貸経営は「自動的にお金が入ってくる仕事」ではありません。仲介会社や管理会社との連携、空室対策、入居者の審査、トラブルへの対処、原状回復といった入退去に伴う一連の業務をこなす一方で、中長期的な建物修繕やリノベーションも計画的に行っていく必要があります(図表1)。慣れない人が手探りで管理していたのでは何ごとも後手後手になり、余計な費用もかかります。

 もちろん、引き継ぎマニュアルがあるわけでもなければ、親の持つ情報がテレパシーで子に伝わるものでもありませんから、誰にどのタイミングで移管するのかは各々の家庭で決めていかねばなりません。明白なのは、経験者が隣で伴走しながら指導するのが時間的にもコスト的にも効率的だということです。

まずは情報のリストアップを

まとめる情報

 ではどのように移管すればいいのか。まずは親が情報を整理することから始めましょう。
 第一に、不動産に限らずすべての資産・債務をリストアップした財産目録を作ります。これは、資金繰りや相続対策の優先度などを検討する上で必須の資料となります。評価額の算定が難しければ、税理士に作ってもらいましょう(宣伝になりますが、当グループでも財産評価と相続税額試算、相続対策の提案をする「相続対策シミュレーション」を承っています。よろしければご検討を)。
 第二に、物件ごとに賃貸借情報や修繕履歴をまとめます(図表2)。また、敷地の境界や私道に関することは当事者の属人的な情報になりがちですので、取り決め等があるなら記録に残しておきましょう。地積測量図や建築計画概要書、設計図面などの図面類も整理します。
 また、人脈の引き継ぎも大事です。賃貸経営は仲介会社や設備会社、税理士などとパートナーシップを組んで進めていくもの。名刺ファイルでもいいですが、できることなら顔合わせもしておくのが理想的です。

できるところから関わっていきましょう

 これらを後継者となるお子さんと共有します。お子さんは年間を通して管理を手伝えれば、繁忙期・平時・閑散期のサイクルを一通り経験できてベストです。通して関わるのが難しければ、入居審査や退去立会い、修繕立会いなどのパーツだけでもいいでしょう。それさえも…ということであれば、相続や不動産の本を読ませる、セミナーに親子で参加する、税理士との打ち合わせに出させるなど、とにかく一部分だけでも参加させる(参加する)ことが重要です。

 こうして不動産管理のソフト面(入居者に関すること)とハード面(建物・設備に関すること)の要領をつかめれば最低限の目的は達成。ただ、常に時流の研究と工夫が求められるのが賃貸経営です。入居率アップ、入居者満足度アップ、リスク(家賃滞納や入居者同士のトラブル)回避のためのアイデアを一緒に考えられるようになれば頼もしい存在です。
 あとは帳簿類の整理、税務申告のレクチャーも忘れずに。間もなく年末=個人事業者の事業年度末。一緒に確定申告をやってみれば、年間の収支の感覚もつかめると思います。思い立ったが吉日、今がベストタイミングではないでしょうか?