相続専門税理士 髙原誠の「円満相続コラム」

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『名義預金は役に立つ?』

2021年1月8日 [ 相続 ]

名義預金

 

申告漏れ多数!名義預金とは

今回は、相続ではあまりいいイメージのない「名義預金」について考えてみます。
名義預金とは口座名義人と実質的な預金者が異なる預金をいいます。親が作った子名義の預金などですね。

相続税においては、名義に関わらず、実質的に故人の所有と認められる財産は課税財産として計上しなければなりません。お金を出したのが故人で、実際に口座を管理していたのも故人なのであれば、真の所有者は故人だということになります。これは、資金拠出者、通帳や印鑑等の管理状況、口座が作られた経緯などから総合的にみて判断されます。

税務調査で指摘される申告漏れ財産には名義預金が相当数含まれるとみられ、申告漏れともなれば追徴課税に延滞税などもかかってきます。「何十年も前に作った口座だから時効が成立しているのでは…」とおっしゃる方も多いのですが、名義預金はそもそも贈与が成立していないので、贈与税の時効は適用されません。

ですので、相続税申告を承った際にはそういった口座がないかよくよく確認するのですが、それでも後から発覚することがあります。故人が自分の生活費の余りを少しずつ子名義の口座に貯めていたような場合、税理士が預金移動調査をしてもなかなか気づくことができません。また別の例では、故人が名義預金を元手に株や不動産を購入していたことがありましたが、預金に限らずこれらもすべて名義財産と判断されます。

 

名義預金にもメリットはある?

そんなわけで、申告漏れしやすい要注意財産として扱われがちな名義預金ですが、役に立つ場面もないことはありません。

例えば相続開始直後にお金が必要となる場面です。医療費の精算等のほか、大きな出費は何といっても葬儀費用でしょう。家族葬が増えてきたとはいえ、概ね150~200万円はみておかなければなりません。

この費用を賄うために故人の銀行口座からお金を引き出したいと考える方は多く、名義人の死亡を金融機関が自動的に知る術はないので、暗証番号を知る家族がキャッシュカードを使って預金を下ろすことは事実上不可能ではありません。しかし、故人の口座はあくまで相続開始とともに凍結され、遺産分割が終了するまで引き出せないのが原則です。

一方、名義預金はどうでしょうか。金融機関は税務署のように「実質的な所有者は誰か」とは考えません。口座のお金は名義人が自由に引き出せるのです。仮に残される奥様の名義で名義預金を作っておけば、相続開始後、奥様は口座凍結の気兼ねなくそのお金を当面の生活費や葬儀費にあてることができます。

ただしきちんと相続財産に計上して相続税申告するのは大前提です。

また、遺産分割上は他の相続人に対してもその存在を明らかにし、名義預金の存在を踏まえた遺言を残すなど、他の相続人から不満が出ないようにしておくべきです。税務署や他の家族に内緒の名義預金はトラブルの元。この点は十分ご注意ください。

 

相続開始直後の出費への対応

相続開始後の出費への対応としては他の方法もあります。

一つは2019年7月から始まった預金の払い戻し制度です。これにより、遺産分割前でも一定金額までなら故人の預金口座からお金を引き出せるようになりました。戸籍等の書類を揃えて金融機関に申請する必要があるため即座に引き出せるわけではなく、金額も一金融機関あたり最大150万円が上限です。

次に生命保険(死亡保険)に加入しておく方法です。書類が揃っていれば請求後5営業日程度で保険金が支払われることが一般的で、保険会社によっては簡易的な書類で一定金額を即日支払うサービスを行っていることもあります。死亡保険金は一定額まで相続税が非課税になるので、その点でもメリットがあります。

最後に家族信託です。例えば委託者・受益者を親、受託者を子とし、信託財産としたお金を子名義の口座(信託口口座でない口座)に預ければ、事実上は名義預金と似た状況になります。そして、親の死亡を信託終了事由とし、その際の財産の帰属先を子と設定すれば、預金の承継先指定という遺言に代わる効果が得られます。ただしこの場合、信託口口座で管理するのと違い倒産隔離機能(委託者や受託者が破産・倒産等に陥った際に信託財産が保護される機能)はありません。

名義預金も相続後の出費への一つの対策となり得ますが、申告漏れや遺産分割トラブルにつながる可能性も高いものですので、安易に放置せず、よりよい方法を検討しましょう。

 

名義預金