相続専門税理士 髙原誠の「円満相続コラム」

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税理士賠償責任訴訟(税賠訴訟)を引き起こさないために(「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」を題材として)

2020年12月2日 [ 相続 ]

税理士賠償責任(税賠訴訟)

皆さまこんにちは。税理士は「税金の専門家」としてクライアントから多大なる責任を負っている存在ですが、ときとして、その対応が不十分なために、裁判の対象となってしまうことがあります。今回は「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」の要件確認不足が原因で、賠償責任を求められた事例をご紹介します。

トラブルの概要

X税理士は、顧問先社長のA氏が亡くなったことにより、相続人である長男のB氏と次男のC氏の両名より相続税申告業務の依頼を受けました。そして、相続税の資産額等を相続人に報告した際に、次のようなことを相談されました。

相続人B氏
「生前父が一人暮らしをしていた住居を相続後に売却し、代金は兄弟で平等に分けたいと思っています。税金の計算上、有利な方法はありませんか?」

X税理士
「それなら『被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例』を使いましょう。一定の要件を満たせば、譲渡所得税の計算において、譲渡益から最高3000万円が控除されますよ。」

相続人B・Cさん
「3000万円も控除されるなんてすごいですね!ぜひ使用してください。」

X税理士
「家屋を取り壊し後の、敷地のみの譲渡であっても特例を適用することは可能です。Aさんの居住用家屋の敷地を、家屋取り壊し後に譲渡してはいかがでしょう?」

X税理士の説明を聞いた相続人2人は、その敷地を両名で50%ずつ取得し、家屋は長男のB氏が取得するということで遺産分割協議がまとまりました。

その後、相続税の申告も無事終わり、居住用家屋の敷地等を予定通り譲渡し、B氏とC氏は引き続き所得税の申告業務をX税理士に依頼しました。

ところがX税理士は所得税の申告作業中にあることに気がつきました。

X税理士
「『被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例』は、被相続人の居住用家屋と被相続人の居住用家屋の敷地等の両方を取得した者にしか適用できないのを見落としていた…。これではCさんには特例の適用ができない!」

X税理士はC氏に事情を説明し謝罪しましたが事態は収まらず、当初、考えていたよりも多大な所得税、住民税を納めることとなった同氏から、損害賠償請求を受けることとなりました。

トラブルを引き起こさないためには何が必要だったか?

税理士賠償責任(税賠訴訟)

本件のようなトラブルを引き起こさないためにはどのようなことが必要だったでしょうか? 私が考える方法は2つあります。

① 「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」に限らず、特例においては適用要件を正しく満たさなければならない。とくに、措置法で規定されているものは時限的なものが多く改正が頻繁に行われるため、必ず条文で確認する。

② 特例の適用にあたっては、申告時に間違いに気づいても取り返しがつかないケースがある。依頼者と一緒に要件・添付書類等を細かく確認し、申告書の作成時には、リスト等にまとめてチェックを行う。

(関連条文等)所法33、措法35、措令20の3、23、措規18の2 (国税庁ホームページ 措置法第35条《居住用財産の譲渡所得の特別控除》関係)

<参考>措置法通達35-9
「被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等取得をした個人」の範囲措置法第35条第3項に規定する「相続又は遺贈による被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等の取得した個人」とは、相続又は遺贈により、被相続人居住用家屋と被相続人居住用家屋の敷地等の両方を取得した個人に限られるから、相続又は遺贈により被相続人居住用家屋の敷地等のみを取得した個人は含まれないことに留意する。

所得税を苦手とする税理士というのは少ないのですが、相続がかかる部分については、相続にふれる機会の多い税理士でないと、見落としが起きないとも限りません。この点、「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」など、相続が関連する税金についての相談は、「相続専門税理士」に行うことが、今回のようなミスを防ぐ一番のポイントと言えるでしょう。

私たちは、この税理士の事例を他山の石として、最新の税法の確認及びスタッフの情報共有に努めており、「相続専門税理士」の看板を汚さぬよう、気を引き締めて日々、業務にあたっています。