相続専門税理士 髙原誠の「円満相続コラム」

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2020年度 税制改正解説

2020年4月15日 [ その他 ]

今回は今年の税制改正の中から、読者の皆様に関係のありそうな項目を中心に見ていきます。
税制改正2020

法人は投資を促進個人は税逃れ封じ

法人関係では、ベンチャー企業への投資や5G設備への投資を行った企業への優遇措置、反対に設備投資に消極的な大企業への税優遇の厳格化など、さまざまな投資を促す内容が目立ちます。経済成長戦略を強く意識した大手企業向けの施策が中心で、中小企業も無関係ではないものの、身近な内容とはいえませんね。

個人関係で目立つのは課税逃れの取り締まりでしょうか。このところ国税局は資産フライト(国外に財産を移すこと)に目を光らせていますが、今回も国外財産の監視強化や、国外財産を利用した節税策への規制が盛り込まれました。では順不同で概観していきます。

4月から配偶者居住権スタート譲渡所得の取扱いも明らかに

 いよいよ今年4月から配偶者居住権が開始。配偶者居住権の消滅や消滅前の建物売却に伴って対価を得た場合、譲渡所得として課税されることが明確になりました。また譲渡所得の計算上、控除できる取得費の計算方法も明示されました(図表1)。

配偶者居住権

ほったらかしなら早く売るべき⁉長期保有空地の売却の特別控除

 5年超所有している低未利用土地等で、建物を含めた譲渡対価が500万円以下のものを売却した場合に、譲渡所得から最大100万円が控除される制度が創設されます。
 今年7月※から2022年末までの譲渡に適用される期間限定。低未利用土地等に該当するかどうかの確認は自治体が行いますが、確認方法などの詳細はまだ不明です。

不適切な消費税還付に待った!金売買等による消費税節税に規制

 賃貸住宅を建築・取得するときにかかる消費税に関して、制度を逆手にとった不適切な還付が行われているとして規制が入ります。
 消費税に仕入税額控除制度というものがあります。仕入税額控除とは、消費税の課税売上にかかる消費税から課税仕入にかかる消費税を差し引くことです。課税事業者はこの差額分の消費税を納税するわけですが、受け取った消費税より支払った消費税が多い場合には、払いすぎた分の還付を受けることができます。
 居住用の賃貸建物の家賃収入は非課税売上にあたりますので、これに対応する建物の建築・取得時に支払う消費税は、本来、仕入税額控除の対象となりません。ところが一部で、金などの売買を繰り返すことにより課税売上を増加させ、建物にかかる消費税の還付を受けるという節税スキームが存在していました。建前は「金の売買業者が賃貸住宅を建築しただけ」というわけです。
 これが問題視され、居住用賃貸建物には建築・取得時の仕入税額控除が認められなくなります。今年10月以後に引き渡しを受けるものから対象となりますが、同年3月末までに契約したものは除外されます。

課税逃れ取り締まり強化

 国外中古不動産節税に規制
 所得税の計算上、不動産所得の赤字(損失)は他の所得の黒字(利益)と相殺(損益通算)することが可能です。これを利用し、高額な国外中古物件を購入して損失を発生させ、給与所得等と損益通算するという節税が流行していましたが、歯止めがかけられます。
 なぜ損失が出るのか。欧米は日本に比べ建物の資産価値が高く保たれることが多く、中古物件であっても購入価格に占める建物の割合が高くなります。建物は減価償却資産であり、法定耐用年数(これは日本のものが採用されます)を経過したものであれば、簡便法として、その耐用年数の20%に相当する年数で償却することが可能です。
 したがって、例えば木造で耐用年数(22年)経過済の建物であれば、わずか4年で購入費を減価償却することができ、2億円の建物なら毎年5000万円を経費計上できることになります。また償却後の売却時、譲渡所得に分離課税の低い税率が適用されることで、出口戦略としての効果もありました。
 国外不動産の特徴と日本の税制を上手く利用したスキームでしたが、2021年以後の所得税の計算上、国外中古建物から生じる不動産所得の損失のうち、減価償却費に相当する金額は生じなかったものとみなされます(一定のものは除く)。一方、なかったものとされた償却費は売却時の譲渡所得の計算上、必要経費として算入できることとなります。

提出できなければ追徴負担増!国外財産調書制度の見直し

 12月末時点で国外に5000万円超の財産を保有している人は、翌年3月15日までに税務署に国外財産調書を提出しなければなりません。
 今後は資産残高だけでなく、預金の利子や不動産の賃料、株の配当金や売却益といった入出金記録等の保管も要請されることになります。保管は義務ではありませんが、税務調査の際に提出を求められ、提出できなければ加算税が増額されることが想定されます。2020年分以後の所得税または同年4月以後の相続等による相続税に適用となります。

増える所有者不明土地、使用者に固定資産税課税も

固定資産税課税

 所有者が死亡したのち相続登記がなされず、現所有者が特定できなくなった不動産は、その不動産を使用している人がいても自治体は使用者に固定資産税を課すことができませんでした。これを見直し、調査を尽くしても所有者が一人も見つからない場合、使用者に課税することができることとなります(2021年度以後の年度分に適用)。

 税制改正を知るといま有効な税金対策の潮目も分かります。賃貸経営や相続対策のヒントを得るためにも税制改正に注目してみてください。