相続税申告(相続が発生した方へ)

相続税申告事例 第14回-住宅街にある山林の評価は?(宅地化の見込めない市街地山林)

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相続税は、相続開始時点の現預金、株式、家屋、土地といった相続財産の評価額を算定し、その総額が基礎控除(3,000万円+600万円×相続人の数)を超える場合、原則、相続開始後10か月以内に、税務署に申告を行う必要があります。

相続財産の中で、一番のウェイトを占めるのが「土地」です。土地は、評価がとくに難しいために、判断が分かれることも少なくありません。そのため、土地の評価額を適正に算定できるかが、適正申告のカギとなります。

神奈川県Y市在住の鈴木様(仮名)は、お父様を亡くされ、山林(A土地)を相続されました。自分で申告することを検討していましたが、土地評価でつまづき、不動産オーナー向けのフェアでブース出展していた当グループを知り、申告業務をお任せいただけることになりました。

ご自宅に伺い、現地を調査してみると、A土地は草木が生い茂る傾斜地で、まわりには住宅街が広がっていました。A土地は正面路線とは高低差が3mほどあり直接出入りできない状況です。また正面路線に接する起点部分と頂点との高低差が5mほどあって、起点と頂点のなす角度は約25度と計測されました。

この土地について鈴木様に伺ったところでは、「以前、この土地周辺一帯は山林だったが、開発が進み、この部分だけ開発されず残った。A土地は傾斜が急なことから、宅地開発業者から『造成は困難』として敬遠された場所である」とのことでした。

評価が難しい市街地山林

今回の事例でポイントとなったのは、「市街地山林の評価」です。市街地山林とは、住宅街の中、もしくはその外縁部に存在する山林をいい、その価額は、路線価地域にある場合、その山林を宅地とみなした場合の1㎡あたりの価額から、その山林を宅地に転用するときにかかる1㎡あたりの造成費用を控除し、その山林の面積を乗じて算出します(宅地比準方式)。

そして、市街地山林として評価する場合、評価対象地を「山林から宅地へ転用できるかどうか」を検討しなければなりません。これは、宅地への転用が見込めない場合、宅地比準方式とは異なり、その価額は、近隣の「純山林」(市街地から離れた、宅地の価額の影響を受けない山林)の価額をもとに評価することになるためです(純山林比準方式)。

この「宅地への転用が見込めない場合」とは、たとえば、「その山林が急傾斜地等であるために、宅地転用の経済合理性が認められない」といった場合が挙げられます。

宅地への転用可能性がカギ

上述の考え方をA土地にあてはめてみます。まず、A土地は、土地の利用状況およびその立地から、市街地山林として評価するのが適当と考えられます。

次にA土地は、「急傾斜」が原因で、開発残地となってきた経緯があります。さらに、A土地を造成して、正面路線に等高の宅地とすることを想定した場合、造成費がかさみ、造成費を上乗せした分譲価格は、周辺宅地に比べはるかに割高となることが予想され、このような土地は、宅地転用の経済合理性を欠いているものと考えられます。

このような点から、A土地は宅地への転用が見込めないと認められ、近隣の純山林の価額をもとに評価することが適当と判断できます。

それにより評価すると、評価額は2万856円となり、これと現預金などの評価も行って申告書を作成し、期限内に税務署に提出しました。

今回の申告作業をご自身でされた場合、A土地は「宅地比準方式」で評価されていた可能性が考えられます。この場合、A土地の評価額は約440万円上がり、約100万円も相続税を余計に支払っていた可能性があります。

相続税申告・市街地山林の評価、説明

市街地山林は、宅地への転用が見込めるか否かで評価額が大きく変わってきます。また、「面積が広い」「傾斜が著しい」「前面道路が建築基準法上の道路ではない」といった場合、宅地比準方式以外の方法が適用できる可能性があり、この場合、評価額が大幅に下がるかもしれません。

市街地山林の評価にはさまざまな検証が必要です。今回の事例に似た山林を相続されたという方は、当グループまでぜひご相談ください。

今回のポイント

市街地山林の評価は、宅地への転用が見込めるか否かで評価額が大きく変わってくる。判断にはさまざまな検証が必要なため、住宅街の中、もしくはその外縁部に山林を保有しているという方は、ぜひ一度、専門家にご相談を。

―この記事を書いた人―

藤宮 浩(ふじみや ひろし)(不動産鑑定士)
フジ総合グループ(フジ相続税理士法人/株式会社フジ総合鑑定)代表
株式会社フジ総合鑑定 代表取締役

埼玉県出身。平成7年宅地建物取引主任者資格試験合格。平成16年不動産鑑定士試験合格および登録。平成24年ファイナンシャルプランナーCFP登録。主な著書に税理士・髙原誠との共著『日本一前向きな相続対策の本』(平成27年現代書林)、不動産鑑定士・小野寺恭孝との共著である『これだけ差が出る 相続税土地評価15事例 基礎編』(平成28年クロスメディア・マーケティング)、『現地調査・役所調査からみえてくる、相続税土地評価の減額要因』(令和元年税務経理協会)。セミナー講演、各種媒体への出演、寄稿多数。雑誌『家主と地主』への寄稿は70回を超える。

藤宮浩不動産鑑定士
藤宮浩
(不動産鑑定士)

髙原 誠(たかはら まこと)(税理士)
フジ総合グループ(フジ相続税理士法人/株式会社フジ総合鑑定)副代表
フジ相続税理士法人 代表社員

東京都出身。平成17年税理士登録。平成18年税理士・吉海正一氏とともにフジ相続税理士法人を設立、同法人代表社員に就任。相続に特化した専門事務所の代表税理士として、年間約700件の相続税申告・減額・還付業務を取り扱う。不動産鑑定士の藤宮浩と共著あり(詳細は藤宮のプロフィールを参照)。セミナー講演、各種媒体への出演、寄稿多数。

髙原誠税理士
髙原誠
(税理士)

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