相続税申告(相続が発生した方へ)

相続税申告事例 第17回-容積率の異なる2以上の地域にまたがる土地の評価は?(容積またがり)

相続税申告・容積率の異なる2以上の地域にまたがる土地の評価、トップページ

相続税は、相続開始時点の現預金、株式、家屋、土地といった相続財産の評価額を算定し、その総額が基礎控除(3,000万円+600万円×相続人の数)を超える場合、原則、相続開始後10か月以内に、税務署に申告を行う必要があります。

相続財産の中で、一番のウェイトを占めるのが「土地」です。土地は、評価がとくに難しいために、担当する税理士により評価額が変わることも少なくありません。そのため、土地の評価額を適正に算定できるかが、適正申告のカギとなります。

都内S区在住の倉田様(仮名)は、2か月前にお父様を亡くされ、複数の不動産を相続されました。申告を依頼できる税理士を探していたところ、雑誌記事から当グループの存在を知り、申告業務をお任せいただくことになりました。

今回の申告でポイントになったのは、路線価54万円/㎡の道路に面した360㎡の土地です。駅からほど近い商店街の一角にあり、賃貸マンションの敷地として利用されています。この土地について役所調査を行ったところ、ある減額要素が見つかりました。

2種類の用途地域に広がる所有地

役所で都市計画図を確認したところ、倉田様の土地は「容積率」の異なる2つの地域にまたがっていることが判明しました。「容積率」とは、敷地面積に対し建築可能な建物延べ床面積の割合のことです。

それぞれの土地に対して適用される容積率は、都市計画により定められています。都市計画法において、市街地は原則として13の地域(用途地域)に分けられ、用途地域ごとに土地の使い方や建物の建て方などのルールが定められています。

例えば、400㎡の土地に指定される容積率が400%だった場合、その敷地に建築可能な延べ床面積は1,600㎡となります。

都市計画図によると、倉田様の土地は用途地域の境目に位置し、南側の240㎡は「近隣商業地域」(近隣の住民が日用品の買物をする店舗等の、業務の利便の増進を図る地域)で容積率は400%、北側の120㎡は「第一種中高層住居専用地域」(中高層住宅の良好な住環境を守るための地域)で容積率は200%でした。

つまり、1つの土地ではあるものの、2種類の用途地域にまたがっていたため、容積率に差があったのです。このような状態は、実務上、「容積またがり」と呼ばれます。

建築基準法に準じた土地評価を実施

このように土地が容積率の異なる2つ以上の地域にまたがっている場合、土地の全体として実際に適用される容積率(基準容積率)は面積により按分計算して求めることと、建築基準法で規定されています。したがって、この土地の容積率は約266%となります。

一方、正面道路に付された54万円/㎡という路線価は、その道路に接する土地の容積率が300%であることを前提として定められています。したがって、300%の容積率を全て消化できない今回のようなケースにおいて、路線価54万円/㎡をそのまま適用するのは適切ではないといえます。この場合、その土地が、容積率の異なる地域にまたがる面積はどの程度か、そして、容積率がどれほど価額に影響を及ぼしているのかを考慮し、一定の減価を行います。私たちは、この考えに基づき申告書を作成し、税務署に提出しました。

今回の案件を、相続税があまり得意でない税理士にお願いした場合、容積またがりを考慮せず評価を行っていたかもしれません。その場合、この土地の評価額は、当グループによる評価額より約860万円上がり、約260万円も余計に相続税を支払っていた可能性があります。

相続税申告・容積率の異なる2以上の地域にまたがる土地の評価、説明

現地調査のみでは、今回のような減額要素などまで把握することは困難です。そのため、適正な土地評価の実現には現地調査だけでなく役所調査も重要であるといえるでしょう。このように、当グループでは相続専門税理士と相続に強い不動産鑑定士との協働により、適正申告を実現することが可能です。

今回のポイント

1つの土地であっても、容積率の異なる2以上の地域にまたがっている場合がある。その場合、その土地が、容積率の異なる地域にまたがる面積はどの程度か、そして、容積率がどれほど価額に影響を及ぼしているのかを考慮し、一定の減価を行う。

―この記事を書いた人―

藤宮 浩(ふじみや ひろし)(不動産鑑定士)
フジ総合グループ(フジ相続税理士法人/株式会社フジ総合鑑定)代表
株式会社フジ総合鑑定 代表取締役

埼玉県出身。平成7年宅地建物取引主任者資格試験合格。平成16年不動産鑑定士試験合格および登録。平成24年ファイナンシャルプランナーCFP登録。主な著書に税理士・髙原誠との共著『日本一前向きな相続対策の本』(平成27年現代書林)、不動産鑑定士・小野寺恭孝との共著である『これだけ差が出る 相続税土地評価15事例 基礎編』(平成28年クロスメディア・マーケティング)、『現地調査・役所調査からみえてくる、相続税土地評価の減額要因』(令和元年税務経理協会)。セミナー講演、各種媒体への出演、寄稿多数。雑誌『家主と地主』への寄稿は70回を超える。

藤宮浩不動産鑑定士
藤宮浩
(不動産鑑定士)

髙原 誠(たかはら まこと)(税理士)
フジ総合グループ(フジ相続税理士法人/株式会社フジ総合鑑定)副代表
フジ相続税理士法人 代表社員

東京都出身。平成17年税理士登録。平成18年税理士・吉海正一氏とともにフジ相続税理士法人を設立、同法人代表社員に就任。相続に特化した専門事務所の代表税理士として、年間約700件の相続税申告・減額・還付業務を取り扱う。不動産鑑定士の藤宮浩と共著あり(詳細は藤宮のプロフィールを参照)。セミナー講演、各種媒体への出演、寄稿多数。

髙原誠税理士
髙原誠
(税理士)

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