相続税申告(相続が発生した方へ)

相続税申告事例 第22回-建築基準法上の道路でない路線に面した土地の評価は?

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相続税は、相続開始時点の現預金、株式、家屋、土地といった相続財産の評価額を算定し、その総額が基礎控除(3,000万円+600万円×相続人の数)を超える場合、原則、相続開始後10か月以内に、税務署に申告を行う必要があります。

相続財産の中で、一番のウェイトを占めるのが「土地」です。土地は、評価がとくに難しいために、判断が分かれることも少なくありません。そのため、土地の評価額を適正に算定できるかが、適正申告のカギとなります。

M県S市在住の猪野様(仮名)は2か月前にお父様を亡くされ、多くの田畑を相続されました。自分で申告することを検討していましたが、土地評価でつまづき、インターネットのコラム記事で当グループの存在を知り、申告業務をお任せいただくことになりました。

一見すると、道路のようだが…?

猪野様のご自宅に伺い現地調査を行うと、猪野様のご自宅(A土地)は図に示す通り、県道(甲道路)を正面とし、大きな河川沿いに延びる道路(乙道路)を側方とした角地です。

乙道路は、2tトラックなどがギリギリ通行可能ですが、いわゆる「堤防」沿いにある通路で、サイクリング・ロードのようになっています。乙道路に沿ってA土地、その隣に田んぼ(B土地)が並んでおり、A土地は甲道路・乙道路の高さまで土盛りがしてありますが、B土地は乙道路から1.5mほど下がったところにあります。

後日、役所調査に行ったところ、乙道路は「建築基準法上の道路」に該当しない単なる通路であることがわかりました。

建築基準法上の道路ではない、単なる通路にしか接していない土地は、「建築物の敷地は、道路に2メートル以上接しなければならない」とする建築基準法の規定(これを「接道義務」といいます)を満たさないため、原則として建物が建てられません。

そのため、その通路に付けられた路線価によりその土地を評価する場合は、この「建築不可」というマイナス要素が路線価に反映されているか、また、周辺の建物建築が可能な道路に付けられた路線価と十分な価格差が付けられているかどうか、検証しなければなりません。その結果、「価格差が不十分である」と判断される場合は、その路線価を採用せず、「無道路地」として評価するのが適切と考えられます。

建物が建てられないのに高い路線価!

以上の論点を今回のケースにあてはめてみると、建築基準法上の道路である甲道路は路線価65,000円/㎡なのに対し、乙道路は53,000円/㎡となっており、その価格差は20%程度となっています。不動産市場において無道路地は、道路に接する同型の宅地に比べて3割程度の価格しかつかないといわれており、これを考えると、乙道路の路線価は、甲道路に付されたものに比べてその価格差が十分とはいえず、採用には慎重にならざるを得ません。

さらに、先述の役所調査において、乙道路が将来的に建築基準法上の道路として認められる可能性があるのかどうか担当者に確認したところ、「堤防上に設けられた単なる通路であり、幅員等の問題もあり、今後も認めない可能性が高い」との回答を得たことから、乙道路の効用は著しく低いと考え、私たちはこの道路の路線価を採用しないこととしました。

その結果、A土地については、角地ではなく正面の路線価の65,000円/㎡のみに接する一方路として評価でき、B土地については無道路地となるため、不整形地補正や、図のような想定通路を設けた際の通路開削費用といった減額を評価に織り込むことが可能になります。

さらに、現状、田んぼであるB土地に建物を建築しようとした場合、土盛り・土留め・整地といった造成工事が必要となるため、これら造成にかかる費用(宅地造成費)も土地の減額要因として控除することができます。

それらの要因を考慮して評価した結果、A土地・B土地の評価額は合わせて約6,700万円となり、これとともに現預金や株式などの評価も行って申告書を作成し、税務署に提出したのです。

今回の申告作業をご自身でされた場合、乙道路についた路線価をそのまま採用し、さらに宅地造成費の減額も考慮しないまま評価、申告してしまったかもしれません。その場合、2つの土地の評価額の合計は、当グループによる評価額より約1,500万円上がり、約450万円も余計に相続税を支払っていた可能性があります。

相続税申告・都市計画道路予定地を含んだ土地の評価、説明

土地の評価額を算出するにあたっては、資料調査だけでなく、現地調査や役所調査といった実地による調査も怠らぬようにし、客観的・批判的な観点から減価要因を導き出す姿勢が大切です。

今回のポイント

建築基準法上の道路ではない、単なる通路に路線価が付されており、その通路にしか接していない土地を評価する場合、「建築不可」というマイナス要素が路線価に反映されているか、周辺の建物建築が可能な道路に付けられた路線価と十分な価格差が付けられているかどうかを検証する。その結果、「価格差が不十分である」と判断される場合には、その土地は「無道路地」として評価することが適当である。

―この記事を書いた人―

藤宮 浩(ふじみや ひろし)(不動産鑑定士) フジ総合グループ(フジ相続税理士法人/株式会社フジ総合鑑定)代表 株式会社フジ総合鑑定 代表取締役

埼玉県出身。平成7年宅地建物取引主任者資格試験合格。平成16年不動産鑑定士試験合格および登録。平成24年ファイナンシャルプランナーCFP登録。主な著書に税理士・髙原誠との共著『日本一前向きな相続対策の本』(平成27年現代書林)、不動産鑑定士・小野寺恭孝との共著である『これだけ差が出る 相続税土地評価15事例 基礎編』(平成28年クロスメディア・マーケティング)、『現地調査・役所調査からみえてくる、相続税土地評価の減額要因』(令和元年税務経理協会)。セミナー講演、各種媒体への出演、寄稿多数。雑誌『家主と地主』への寄稿は70回を超える。

藤宮浩不動産鑑定士
藤宮浩
(不動産鑑定士)

髙原 誠(たかはら まこと)(税理士) フジ総合グループ(フジ相続税理士法人/株式会社フジ総合鑑定)副代表 フジ相続税理士法人 代表社員

東京都出身。平成17年税理士登録。平成18年税理士・吉海正一氏とともにフジ相続税理士法人を設立、同法人代表社員に就任。相続に特化した専門事務所の代表税理士として、年間約700件の相続税申告・減額・還付業務を取り扱う。不動産鑑定士の藤宮浩と共著あり(詳細は藤宮のプロフィールを参照)。セミナー講演、各種媒体への出演、寄稿多数。

髙原誠税理士
髙原誠
(税理士)

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