相続税申告(相続が発生した方へ)

相続税申告事例 第24回-土壌汚染がある土地の評価は?

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相続税は、相続開始時点の現預金、株式、家屋、土地といった相続財産の評価額を算定し、その総額が基礎控除(3,000万円+600万円×相続人の数)を超える場合、原則、相続開始後10か月以内に、税務署に申告を行う必要があります。

相続財産の中で、一番のウェイトを占めるのが「土地」です。土地は、評価がとくに難しいために、判断が分かれることも少なくありません。そのため、土地の評価額を適正に算定できるかが、適正申告のカギとなります。

神奈川県C市在住の窪川様(仮名)は、3か月前にお父様を亡くされ、土地や建物、現金や預貯金、有価証券などを相続されました。自分で申告することを検討していましたが、土地評価でつまづき、知人から当グループの紹介を受け、申告業務をお任せいただけることになりました。

ご依頼を受けて、私たちは窪川様の相続された各土地に実際に出向き、調査を行いました。相続された土地の一つであるA土地は貸し工場の敷地で、その周辺地域には、同じような工場施設が林立しており、A土地のまわりだけが空き地になっています。窪川様にお聞きすると、もともとはそのあたりにも工場が建っていたそうですが、移転のため、今は更地になっているということでした。

土壌汚染は減額要素

工場の敷地を評価する場合、「土壌汚染」の可能性を検討しなければならない場合があります。 化学工場やクリーニング店、ガソリンスタンドなどは、長年の稼働により、人体に有害な物質を流出し、土壌を汚染してしまうことがあります。また宅地を造成した場合、運び込まれた土砂に汚染物質が含まれている場合があります。

平成15年に施行された土壌汚染対策法によると、土壌汚染による健康被害の恐れがある場合は、原則、その土地の所有者の負担により調査を行わねばならず、それにより汚染が発覚した場合は、汚染原因者が明らかな場合等を除いて、その浄化・改善も土地所有者が行わねばなりません。

その場合、除去費用が土地の実勢価格を上回るケースもあり、土地所有者の負担が大きくなりやすいことから、相続税でこのような土地を評価する場合、土壌汚染がないものとした場合の評価額から、「浄化・改善費用に相当する金額」などを控除することができるとされています。

この「浄化・改善費用に相当する金額」とは、掘削除去、遮水工封じ込めといった工事にかかる費用の80%相当額をいいます。

80%相当額で評価するのは、汚染がないものとした場合の評価額(土地評価額)が、地価公示価格の80%水準額(相続税評価額)となることから、浄化・改善費用に相当する金額についても、この水準に合わせることが適当とされるためです。

なお、この評価方法は、相続が開始した時点で、「土壌が汚染されていることが分かっている」場合に適用でき、同時点において「土壌汚染の可能性がある」など潜在的な場合には適用できません。

また、相続開始時点より後に汚染が判明し、浄化改善費用を請求する訴訟が提起されている等の場合、その汚染が相続開始時点において存在していることが明らかとされる場合には、当該浄化費用相当額を、相続開始時点までさかのぼって控除できる場合があります。

浄化・改善費を控除

窪川様にさらに聞き取りをしたところ、次のようなことがわかりました。 「A土地周辺では、相続開始前に工場が移転し、自治体の命令により行われた土壌汚染状況調査で、環境省の土壌環境基準を超える有害物質が検出された。その土地の所有者が、調査や浄化にかかる費用の相当分を負担したため、工場経営会社と係争状態にある」 「また、そのことを知って心配になったお父様が、A土地の簡易な土壌汚染調査を自主的に行ったところ、同土地でも基準を超える汚染物質が計測された。そして、その直後にお父様が急逝された」

A土地では、土壌汚染が判明した段階で相続が開始しており、A土地の評価額から、浄化・改善費用相当額を控除するのが適切と考えられます。そこで、提携する土壌汚染調査会社にA土地の浄化費用の見積もりを依頼し、その見積額をもとに、相続開始時点の浄化・改善費用相当額を計算しました。それを汚染がないものとした場合のA土地の評価額から控除し土地の評価額を求め、現預金や株式などの評価も行って申告書を作成し、税務署に提出しました。

今回の申告作業をご自身でされた場合、A土地の浄化・改善費用相当額を控除しないまま評価して申告してしまったかもしれません。その場合、A土地の評価額は、当グループによる評価額より約2,350万円上がり、約700万円も余計に相続税を支払っていた可能性があります。

相続税申告・土壌汚染がある土地の評価、説明

当グループでは相続専門税理士と相続税土地評価を得意とする不動産鑑定士との協働により、適正申告を実現することが可能です。

今回のポイント

土壌汚染地を評価する場合、土壌汚染がないものとした場合の評価額から、「浄化・改善費用相当額」等を控除する。ただし、相続開始時点でその汚染が可能性の域を出ない場合には適用できないなど、各種条件があるため注意が必要である。

―この記事を書いた人―

藤宮 浩(ふじみや ひろし)(不動産鑑定士) フジ総合グループ(フジ相続税理士法人/株式会社フジ総合鑑定)代表 株式会社フジ総合鑑定 代表取締役

埼玉県出身。平成7年宅地建物取引主任者資格試験合格。平成16年不動産鑑定士試験合格および登録。平成24年ファイナンシャルプランナーCFP登録。主な著書に税理士・髙原誠との共著『日本一前向きな相続対策の本』(平成27年現代書林)、不動産鑑定士・小野寺恭孝との共著である『これだけ差が出る 相続税土地評価15事例 基礎編』(平成28年クロスメディア・マーケティング)、『現地調査・役所調査からみえてくる、相続税土地評価の減額要因』(令和元年税務経理協会)。セミナー講演、各種媒体への出演、寄稿多数。雑誌『家主と地主』への寄稿は70回を超える。

藤宮浩不動産鑑定士
藤宮浩
(不動産鑑定士)

髙原 誠(たかはら まこと)(税理士) フジ総合グループ(フジ相続税理士法人/株式会社フジ総合鑑定)副代表 フジ相続税理士法人 代表社員

東京都出身。平成17年税理士登録。平成18年税理士・吉海正一氏とともにフジ相続税理士法人を設立、同法人代表社員に就任。相続に特化した専門事務所の代表税理士として、年間約700件の相続税申告・減額・還付業務を取り扱う。不動産鑑定士の藤宮浩と共著あり(詳細は藤宮のプロフィールを参照)。セミナー講演、各種媒体への出演、寄稿多数。

髙原誠税理士
髙原誠
(税理士)

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