亡くなったご家族の遺品整理を進める中で、生前の医療費が高額だったことや、年金・給与から税金が引かれていたことに気づくことはありませんか。
そのような場合、「準確定申告をすれば税金が戻ってくるのでは」と考える方もいらっしゃるでしょう。
実際に、年末調整前に亡くなった場合や、生前に医療費の負担が大きかった場合などは、準確定申告によって納めすぎた税金が還付される可能性があります。
一方で、「どのようなケースが対象になるのか」「いつまでに何をすればよいのか分からない」と感じる方も少なくありません。
この記事では、準確定申告で還付を受けられるケースをはじめ、申告期限や必要書類、具体的な手続の流れについて分かりやすく解説します。
もくじ
準確定申告で還付金を受け取れるケースとは?
準確定申告とは、亡くなった方(以下「被相続人」といいます。)の代わりに相続人が行う確定申告のことです。
生前に納めすぎた所得税がある場合、申告によってその税金が戻ってくる可能性があります。
どのような状況で還付を受けることができるのか、代表的なケースを確認していきましょう。
| 還付の対象となる主なケース | 概要と特徴 |
|---|---|
| 年末調整前の死亡 | 給与や年金から源泉徴収されている税金が精算されていない状態 |
| 高額な医療費の支払 | 被相続人が生前に多額の医療費を負担していた状況 |
| 寄附金控除の利用 | ふるさと納税などで自治体へ寄附を行っていた場合 |
| 配当所得がある | 上場株式等の配当について、税金が源泉徴収されている場合 |
| 各種保険料の支払 | 生命保険料や地震保険料などを支払っており控除枠がある状態 |
被相続人が年末調整前に亡くなり源泉徴収されている
会社員や年金受給者の方が年の途中で亡くなった場合、毎月の収入から所得税が天引きされていることが一般的です。
本来であれば年末調整で正しい税額が計算されますが、死亡によってその精算が行われていない状態となっています。
このようなケースでは、準確定申告を行うことで納めすぎた税金が戻ってくる見込みがあります。
例えば、年の半ばで退職せずに亡くなった会社員の方などは、毎月の給与から多めに税金が引かれているため、申告により還付される可能性が高いといえます。
国税庁のホームページでも、給与所得者で年末調整を受けずに死亡した人は、準確定申告の対象になると案内されています。
生前に引かれていた税金を正しく計算し直し、還付の手続を進めることが大切です。
例えば、年収480万円(月収40万円)の会社員が6月に亡くなった場合、1月〜6月の給与から毎月約5万円の源泉徴収がされていたとすると、合計約30万円の所得税が天引きされています。
一方、半年分の給与240万円から給与所得控除(80万円)や社会保険料控除(約36万円)、基礎控除(58万円)等を差し引くと課税所得は約66万円となり、所得税額は約3万3,000円です。
この差額(約27万円)が還付される仕組みです。
※金額はあくまで目安であり、扶養親族の人数や各種控除の有無によって大きく変わります。
なお、この計算は令和7年分です。令和8年分以降、税制改正により、給与所得控除額及び基礎控除額の引上げがされており、該当年分の各控除額に応じて、合計所得金額が異なるため、実際の計算では該当年分の控除額を確認してください。
参考:No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)|国税庁
No.1410 給与所得控除|国税庁
No.1199 基礎控除|国税庁
被相続人が生前に高額な医療費を支払っていた
亡くなる前に長期間の入院や治療を受けており、医療費の負担が大きかった場合も還付の対象になり得ます。
年間で支払った医療費が一定額を超えると、医療費控除を適用して所得税を減らすことができるからです。
亡くなった年の1月1日から死亡日までに支払った医療費の合計が、原則として10万円を超えているケースが該当します(総所得金額等が200万円未満の方は、総所得金額等の5%を超えた額が対象です)。
入院費用だけでなく、通院のための交通費や医師の指示による薬代なども対象に含まれます。
一方で、差額ベッド代(個室料)や美容目的の治療費、健康診断の費用(重大な疾病が発見されなかった場合)などは対象外となるため注意してください。
医療費控除を利用することで、課税される所得が減少し、既に納めていた税金の一部が手元に戻ってきます。
領収書をしっかりと整理して、漏れなく計算に含めるようにしてください。
なお、死亡後に相続人が支払った入院費用は、被相続人の準確定申告の医療費控除には含められず、支払った相続人自身の確定申告で控除の対象となる点にも注意が必要です。
高額療養費制度による払戻しや医療保険の給付金を受け取った場合は、その給付の目的となった医療費の金額を限度として差し引いて計算する必要があります。
引ききれない金額が生じたと場合であっても他の医療費からは、差し引く必要はありません。
参考:No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)|国税庁
ふるさと納税などの寄附金控除を利用している
生前にふるさと納税を行っていたり、特定の団体へ寄附をしていたりする場合も、寄附金控除による還付が期待できます。
ふるさと納税は、実質的な自己負担額2,000円を除いた金額が所得税や住民税から控除される仕組みです。
ただし、控除には所得に応じた上限額があり、上限を超えた分は自己負担となります。
また、ワンストップ特例制度は、確定申告を行わないことを前提に寄附金控除を受けられる簡便な制度です。
そのため、被相続人が申請書を提出していた場合でも、準確定申告を行う場合はワンストップ特例の適用は受けられません。
したがって、準確定申告の際に改めて寄附金控除の申告を組み込む必要があります。
寄附先の自治体から送られてくる寄附金受領証明書を忘れずに添付し、正しい手続を進めていくことが重要です。
配当所得がある
被相続人に上場株式等の配当所得がある場合は、準確定申告によって還付が受けられる可能性が高くなります。
上場株式等の配当については、通常、源泉徴収ありの特定口座や一般口座において、所得税及び住民税があらかじめ差し引かれています。
そのため、何も手続をしなければ、そのまま課税関係が完結してしまうケースが一般的です。
しかし、準確定申告で配当所得を申告し、総合課税を選択することで、既に源泉徴収された所得税の全部又は一部が還付されることがあります。
例えば、他に大きな所得がなく、適用される所得税率が低い場合には、源泉徴収された税率との差額分が戻ってくるケースがあります。
一方で、総合課税を選択すると配当控除が適用される反面、他の所得と合算して税額が計算されるため、場合によっては税負担が増えることもあります。
配当所得は申告方法によって税額が大きく変わるため、還付の可能性があるかどうかを事前に試算した上で、最適な申告方法を選択してください。
参考:No.1250 配当所得があるとき(配当控除)|国税庁
No.1330 配当を受け取ったとき(配当所得)|国税庁
生命保険料や地震保険料などの控除枠がある
被相続人がご自身で生命保険や地震保険に加入し、保険料を支払っていた場合も控除の対象となります。
毎月の口座振替などで支払っていた保険料は、年末調整や確定申告によって所得控除として計算されるものです。
年の途中で亡くなった場合でも、死亡日までに支払った保険料の金額に応じて控除を受けることが可能です。
生前の書類整理の際に、保険会社からのハガキや通知が見つかった場合は、大切に保管しておくことをおすすめします。
準確定申告をしても還付にならないケース
以下のような場合は、準確定申告を行っても還付金が発生しない、あるいは逆に納税が必要になることがあります。
- 被相続人の所得が少なく、そもそも源泉徴収税額がない場合
- 給与・年金以外に不動産所得や事業所得などがあり、年間の所得税額が源泉徴収額を上回る場合(納税が必要)
- 年金収入が公的年金等控除や基礎控除の範囲内に収まっていた場合
還付が受けられるか判断がつかない場合は、手元にある源泉徴収票の「源泉徴収税額」欄を確認し、0円又は空欄であれば、還付の可能性は低いと考えられます。
準確定申告の還付申告を行う期限はいつまで?
準確定申告の手続には、期限が設けられています。
還付を受ける場合と、追加で税金を納める必要がある場合とで期限が異なる点に注意が必要です。
それぞれのケースに応じた申告期限を把握しておきましょう。
| 申告内容 | 期限の目安 |
|---|---|
| 還付を受ける申告(還付申告) | 亡くなった年の翌年1月1日から5年以内 |
| 納税義務が生じる申告 | 相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内 |
還付申告であれば翌年から5年以内に行う
計算の結果、追加で納める税金がなく純粋に還付だけを受ける場合は、通常の還付申告と同じ期限が適用されます。
具体的には、亡くなった年の翌年1月1日から起算して5年以内であれば、いつでも申告できます。
期限にゆとりがあるため、四十九日の法要や遺品整理が落ち着いてから準備を始めることもできますが、後回しにしすぎると領収書の紛失や関係者への連絡が難しくなるリスクがあります。
できるだけ早めに着手するのがおすすめです。
※なお、この5年の期限は、被相続人が生前に確定申告義務を負っていなかった場合(年末調整済みの給与所得者など)に適用されるものです。
確定申告義務のある方(納税義務のある方)の場合は、4か月以内の申告が原則となるため、判断に迷う場合は税理士にご確認ください。
また、被相続人が生前に青色申告の承認を受けていた場合の準確定申告でも、被相続人の青色申告として扱われますが、被相続人から事業を承継した相続人が改めて青色申告承認申請書を一定の期限内に提出しなければ、相続人自身の申告には青色申告の特典は適用されません。
参考:No.2030 還付申告|国税庁
No.2070 青色申告制度|国税庁
還付申告の期限が土日祝日等の官庁閉庁日に当たる場合の取扱い
還付申告の期限は、亡くなった年の翌年1月1日から5年間とされており、最終日は5年後の12月31日となります。
この期限は、通常の確定申告とは異なり、最終日が土曜日・日曜日・祝日等の官庁閉庁日あっても、翌営業日に延長されることはありません。
例えば、還付申告の期限である12月31日は、官庁閉庁日ですが、翌年の平日に繰り越されることはなく、その年の12月31日をもって請求できる期間は終了します。
このように、還付申告は「期限内に請求する権利」として扱われるため、一般的な申告期限とは異なる取扱いとなる点に注意が必要です。
特に、年末年始は税務署が閉庁している期間が続くため、郵送の遅延や書類不備による差戻しのリスクもあるため、12月に入る前には準備を終え、余裕をもって還付申告書を提出しましょう。
納税義務が生じる場合は相続開始を知った日から4か月以内に行う
医療費控除などを含めて計算した結果、納税義務が生じることもあります。
この場合は、死亡の年の1月1日から死亡日までの被相続人の所得税・消費税の申告と納付を、相続開始を知った日から4か月以内に完了させなければなりません。
期限を過ぎてしまうと、無申告加算税や延滞税といったペナルティが課されることがあります。
不動産収入があった方などは、納税義務が発生しやすい傾向にあります。
ご自身で判断がつかない場合や期限が迫っている場合は、税理士に早めに相談することも検討してみてください。
参考:所得税及び復興特別所得税の準確定申告のe-Tax対応について|国税庁
準確定申告の還付手続の手順
準確定申告の手続は、相続人同士の連携や書類の収集など、複数の段階を経て進められます。
ここでは、実際に申告を終えるまでの流れをステップ順に解説します。
| 手順のステップ | 具体的な作業内容 |
|---|---|
| 手順1 | 相続人全員での協力体制と申告内容の確認 |
| 手順2 | 還付金を誰の口座でどのように受け取るかの決定 |
| 手順3 | 申告書の作成と管轄の税務署(業務センター)への提出 |
手順1相続人全員で準確定申告への協力を確認する
準確定申告は、被相続人の財産や税金に関わる重要な手続であるため、原則として相続人全員が連名で行います。
そのため、まずは誰が相続人になるのかを、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を取得して確定させ、全員に申告手続を行う旨を連絡して協力を仰ぐことが最初のステップです。
なお、他の相続人に連絡がつかない場合や同意が得られない場合でも、各相続人が単独で申告を行うことは可能です。
その場合、申告した内容を他の相続人に通知する義務がありますので覚えておきましょう(所得税法施行令263条2項及び3項)。
通知方法について細かな形式までは定められていませんが、後日の紛争防止の観点から、書面やメールなど記録が残る形で行うことが望ましいといえます。
手続を円滑に進めるためにも、代表者を一人決めておき、その人が中心となって他の相続人に説明すると効率的です。
還付金を按分する際の端数処理の考え方
相続人ごとに還付金を法定相続分などで分割する場合は、円未満の端数処理の取扱いに注意が必要です。
準確定申告では、確定申告書付表に基づき、相続人一人ずつについて、個別に還付額を計算します。
この際、納税額に100円未満の端数が生じた場合は切り捨てとされており(国税通則法119条1項)、還付金等の額に1円未満の端数がある場合には、その端数を切り捨てる取扱いとなっています(同法120条1項)。
例えば、還付金の総額を法定相続分で按分した結果、各相続人の金額に1円未満の端数が生じた場合には、それぞれの相続人ごとに切り捨てて計算します。
その結果、各相続人の還付額の合計と、確定申告書第一表に記載された還付金額とが一致しない場合がありますが、この差額について特別に調整を行う必要はありません。
これは、あくまで付表に基づく相続人ごとの個別計算が優先されるためです。
実務上は、付表に記載した各相続人の金額に従って処理されるため、端数のズレを無理に一致させる必要はありません。
手順2還付金を誰がどう受け取るか方法を決める
相続人全員の協力が得られたら、次に還付金をどのように受け取るかを話し合って決めます。
還付金の受取方には、大きく分けて二つの方法が存在します。
相続人それぞれの口座に分割して振り込んでもらう
一つ目の方法は、法定相続分などの割合に応じて、各相続人の銀行口座へ直接振り込んでもらう形式です。
この方法は、お金の行き違いによる親族間の揉め事を防ぎやすいという利点があります。
ただし、申告書の付表に全員分の口座情報を正確に記入しなければならないため、書類作成時の確認作業は増えます。
代表者が指定口座で一括して受け取る
二つ目の方法は、相続人の代表者を一人定め、その方の口座へ全額をまとめて振り込んでもらう形式です。
税務署とのやり取りや口座情報の記入が一人分で済むため、手続自体はシンプルになります。
受け取ったあとは、代表者が責任を持って他の相続人へ分配するか、遺産分割協議の対象財産としてプールしておくことになります。
実務上はこちらの方法を選ぶケースが多いですが、確定申告書付表の右下にある委任状欄に代表者以外の相続人全員の署名が必要になる点に注意してください。
なお、準確定申告では、還付金は本来、相続人ごとに確定し、それぞれに帰属するものとして取り扱われます。
その上で、相続人全員の同意がある場合に限り、代表者がまとめて受け取る方法が認められていますが、所得税法上、明確な規定が設けられているわけではありません。
この取扱いは、還付金の権利自体を移転するものではなく(債権譲渡ではなく)、各相続人が代表者に受領を任せる「代理受領」の形式によるものと考えられます。
還付金の分割割合は遺産分割協議で指定できない
準確定申告における還付金の分割割合は、遺産分割協議によって自由に指定することはできない点に注意が必要です。
これは、国税通則法5条2項において、相続人が複数いる場合には、各相続人が承継する国税の額は、民法900条から902条までに定める相続分により按分して計算するとされているためです。
ここでいう相続分には、法定相続分だけでなく、代襲相続や遺言によって指定された相続分、いわゆる指定相続分も含まれます。
例えば、相続人が2人いて、遺産分割協議により一方がすべての財産を取得することに合意していたとしても、準確定申告の還付金については、法定相続分又は指定相続分に基づいて金額を計算する必要があります。
そのため、準確定申告書の付表に記載する還付金額は、あくまで法令に基づく相続分で按分した金額となります。
すなわち、還付金の振込額は遺産分割協議では指定できません。
一方で、実際の受取りについては、代表者が一括して受け取った上で、遺産分割協議に従って分配することは可能です。
準確定申告における計算方法と、実際の財産の分け方は別のルールで動くため、混同しないように注意しましょう。
手順3準確定申告書と付表を作成し管轄の税務署へ提出する
すべての書類が揃ったら、準確定申告書と付表を作成します。
通常の確定申告書に加えて、相続人全員の氏名やマイナンバーなどを記入する、「確定申告書付表」を作成しなければなりません。
書き上がった書類は、被相続人の最後の住所地(住所と異なる納税地を指定していた場合には当該納税地)を管轄する税務署へ提出します。
提出方法は、まず、書面(紙ベース)かe-Taxを利用した電子申告があります。
国税庁のホームページから管轄の税務署を検索し、業務センターが宛先となる税務署か直接提出できる税務署かを確認してください。
税務署が提出先となっている場合には、直接持参するか郵送できますが、業務センターの場合には、郵送となります。
なお、令和8年7月以降、全国の税務署で業務センター宛の郵送となりますので、業務センターへの直接持参や税務署窓口での提出(マイナンバーの提示など)ができなくなります。
税務署の時間外収受箱への投函により、提出することはできます。
また、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で作成した準確定申告書(還付申告を含む。)は、通常の確定申告のようなe-Taxによる電子送信には対応していない点に注意が必要です。
そのため、電子申告を行う場合は、e-Taxソフトなどを利用して申告書を作成し、送信する必要があります。
例えば、通常の確定申告であれば作成コーナーからそのまま提出できますが、準確定申告では別途ソフトを使った手続が必要になります。
準確定申告では相続人が複数いるケースが多いため、相続人代表者がまとめて電子送信を行うのが一般的です。
その際には、各相続人から代表者へ申告書の提出を委託する旨の確認書を作成し、添付する必要があります。
e-Taxを利用する場合は、代表相続人自身の電子証明書(マイナンバーカード)が必要です。
税務署で内容が確認され、問題がなければ、おおむね1か月から1か月半ほどで指定した口座に還付金が振り込まれます。
(e-Taxで申告した場合は、書面提出よりも処理が早く、2〜3週間程度で振り込まれることもあります。)
※確定申告書付表の正式名称は、「死亡した者の__年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(兼相続人の代表者指定届出書)」です。
還付前に相続人が死亡している場合の記載方法(数次相続)
相続人の中に、準確定申告による還付を受ける前に亡くなっている方がいる場合は、「数次相続」として取り扱う必要があります。
数次相続とは、相続が発生した後、遺産分割や申告などの手続が完了する前に相続人が亡くなり、更に相続が発生している状態をいいます。
この場合、亡くなった相続人の地位は、その相続人(次の相続人)に引き継がれます。
例えば、被相続人の相続人がA・B・Cの3人で、そのうちAが還付を受ける前に亡くなっている場合には、Aの相続人である子のD・EがAの地位を引き継ぐことになります。
そのため、準確定申告書の付表には、B・Cに加えてD・Eを含めた全員の連名で申告する必要があります。
このように、還付前に相続人が死亡している場合でも、最終的に権利を承継している相続人全員を付表に記載することが重要です。
特に数次相続が発生している場合は、相続関係が複雑になりやすく、戸籍の収集や関係整理に時間がかかることも多いため、早めに状況を確認し、手続の準備を進めておきましょう。
消費税の準確定申告でも還付が見込める場合の手続は?
準確定申告というと所得税をイメージしがちですが、被相続人が事業を行っていた場合には、消費税についても準確定申告が必要になることがあります。
消費税についても、国税通則法5条2項の規定により、相続人が納税義務を承継し、相続分に応じて申告を行う点は所得税と同様です。
そのため、消費税の準確定申告を行う場合にも、相続人全員の情報や相続分を記載した付表を添付して申告する必要があります。
例えば、被相続人が課税事業者であり、仕入税額控除の結果として消費税の還付が見込まれる場合には、相続人がその還付申告を行うことが可能です。
この場合も、還付金は相続人ごとに計算され、法定相続分又は指定相続分に応じて取り扱われる点に注意が必要です。
一方で、消費税は所得税とは異なり、課税期間や計算方法、簡易課税制度の適用の有無などによって手続内容が大きく変わることがあります。
例えば、課税期間の途中で亡くなった場合の売上や仕入の集計方法などは、状況に応じた判断が必要になります。
また、被相続人が簡易課税制度を選択していた場合、還付されることはなく、納税となる準確定申告をすることが必要になります。
このように、消費税の準確定申告は所得税よりも判断が複雑になるケースが多いため、必要に応じて専門家への相談が望ましいと言えます。
準確定申告の還付手続には何が必要?
準確定申告を正しく行うためには、状況に応じたさまざまな書類を用意しなければなりません。
ここでは、還付手続において必要となる代表的な書類について解説します。
| 必要となる主な書類 | 用途と準備のポイント |
|---|---|
| 源泉徴収票・各種控除証明書 | 収入の金額と控除できる金額を証明するために使用する |
| 確定申告書・付表 | 税額の計算結果と相続人全員の情報を税務署へ申告する |
| 本人確認書類・マイナンバー | 相続人本人が申告していることを証明するために提示する |
被相続人の源泉徴収票や各種控除証明書を用意する
申告の基礎となるのが、被相続人の収入と支出を証明する書類です。
公的年金等の源泉徴収票は、最寄りの年金事務所の窓口または、「ねんきんダイヤル(0570-05-1165)」へ電話で再発行を依頼できます。
給与の源泉徴収票は、生前の勤務先の総務・経理部門へ連絡して再発行を依頼してください。
いずれも再発行には2〜3週間程度かかることがあるため、遺品の中に見当たらない場合は早めに手配することが大切です。
また、医療費控除を受けるための、「医療費控除の明細書」は相続人自身が領収書をもとに作成する書類であり、発行を依頼するものではない点に注意が必要です。
生命保険料控除証明書は保険会社から毎年秋頃に届くハガキが該当し、寄附金受領証明書はふるさと納税先の自治体から届く書面を使います。
これらの書類は申告書に添付するか、提出時に提示する必要があります。
なお、保険組合(国民健康保険の場合は市町村)が発行する「医療費のお知らせ」も医療費控除に使用できますが、保険請求データの到着や事務処理の関係で、最終診療日から3~4か月程度の期間要することに注意が必要です。
参考:ねんきんダイヤル(年金相談に関する一般的なお問い合わせ)|日本年金機構
通常の確定申告書及び確定申告書付表を作成する
準確定申告専用の申告書というものは存在せず、一般的に使用される確定申告書(第一表・第二表)を用いて作成します。
もしくは国税庁の、「確定申告書等作成コーナー」からも作成が可能です。
余白部分に、「準確定申告」と朱書きなどで目立つように記載し、被相続人の住所や氏名を記入していくのが基本的なルールです。
さらに、準確定申告ならではの書類として、「死亡した者の令和〇年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表」を一緒に提出します。
この付表には、各相続人の住所、氏名、マイナンバー、そして、相続割合などを記入する欄が設けられています。
相続人全員が内容を確認し署名する必要があるため、遠方にお住まいの相続人がいる場合は書類の郵送にかかる日数も考慮しておきましょう。
参考:確定申告書等の様式・手引き等(令和7年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁
【確定申告書等作成コーナー】-作成コーナートップ
相続人全員の本人確認書類とマイナンバーを提示する
手続の透明性を高め、なりすましを防ぐために、マイナンバー(個人番号)の記載と本人確認書類の提示が義務付けられています。
付表に相続人全員のマイナンバーを記入した上で、それぞれのマイナンバーカードのコピー(表と裏の両方)を提出書類に添付します。
マイナンバーカードを持っていない方の場合は、番号確認書類(通知カード又はマイナンバー入りの住民票)と、身元確認書類(運転免許証、パスポート、健康保険証のいずれか)のコピーがそれぞれ1点ずつ必要です。
マイナンバー入りの住民票は、住所地の市区町村の窓口において1通300円程度で取得できます。
複数人の相続人がいる場合は、全員分のコピーを漏れなく集めなければなりません。
個人情報が含まれる大切な書類ですので、親族間で郵送する際は書留を利用するなど、取扱いには十分な配慮が必要です。
税務署窓口へ直接提出に行く代表者は、自身の原本を持参すると手続がスムーズに進みます。
準確定申告の還付金を受け取る際の注意点は?
準確定申告で戻ってきたお金は、ただの臨時収入というわけではありません。
相続税の計算に影響を与えたり、場合によっては追加の申告が必要になったりすることもありますので、後悔しないよう重要な注意点を押さえておきましょう。
受け取った還付金は被相続人の財産として相続税の課税対象になる
準確定申告によって手元に戻ってきた還付金は、被相続人が本来受け取るはずだったお金として扱われます。
そのため、この還付金は、「被相続人の遺産(相続財産)」の一部に組み込まれます。
預貯金や不動産など他の財産と合算して基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合は、相続税の課税対象になるため注意が必要です。
なお、逆に準確定申告で納税が発生した場合、その納付した税額は相続財産から控除できる、「債務控除」の対象になります。
還付金と併せて受け取る還付加算金は相続人の雑所得として扱う
税務署から還付金が振り込まれる際、申告から処理までに時間がかかったことに対する利息のような性質として、「還付加算金」が上乗せされることがあります。
この還付加算金は、被相続人の財産ではなく、お金を受け取った相続人自身の所得(雑所得)として扱われる点に気をつけてください。
相続人自身の翌年の確定申告に影響を与える可能性があります。
会社員の方であれば、給与所得以外の所得が20万円以下であれば原則として確定申告は不要です(ただし、住民税の申告は別途必要となる場合があります。)。
少額の還付加算金であれば気にする必要はありませんが、他の副業収入などがある場合は合算して計算する必要があります。
通知書に記載されている還付金本体の金額と、還付加算金の金額をしっかりと区別して記録しておくことが大切です。
参考:還付加算金の収入すべき時期|国税庁
No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人|国税庁
相続税申告をするときは相続税申告期限内(10か月以内)に還付手続も終える
被相続人の財産が多く、相続税の申告が必要になることが見込まれる場合は、全体のスケジュール管理が非常に重要になります。
相続税の申告期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内と定められており、
準確定申告による還付金は相続財産に含める必要があります。
そのため、10か月の期限までに準確定申告を終え、還付額を確定させておくのが望ましいといえます。
還付の準確定申告は5年以内に行えばよいのは、前述のとおりですが、相続税の申告が控えている場合はのんびりしている余裕はありません。
還付額が未確定のまま相続税申告の期限を迎えてしまうと、後から修正申告など余計な手間や税金が発生するリスクがあります。
税金の計算は複雑に絡み合っているため、四十九日が過ぎたら速やかに税金関係の書類整理に取りかかることをおすすめします。
まとめ
この記事の要点をまとめます。
- 医療費が高額だったり年の途中で亡くなったりした場合は還付を受けられる可能性がある
- 還付にならないケースもあるため、まずは源泉徴収票で税額が天引きされているか確認する
- 還付の準確定申告であれば翌年から5年以内というゆとりを持った期限が設けられているが、相続税申告が要る場合は10か月以内に終えるのが望ましい
- 準確定申告には相続人全員の協力が必要であり、付表やマイナンバーなどの書類を揃える必要がある
- 受け取った還付金は、相続財産として扱われるため、相続税の計算に含めるのを忘れない
準確定申告は手続が複雑に感じられますが、一つずつ確認しながら進めれば難しいものではありません。
不安がある場合は、税理士や、不動産の評価が関わるケースでは不動産鑑定士への相談も検討してみてください。
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準確定申告による還付手続や、それに伴う相続税の計算は複雑で、ご自身だけでは判断が難しいケースも少なくありません。
特に、不動産をお持ちの場合や、相続税の申告も控えている場合は、専門的な知識が求められます。
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