
コインパーキングは、駐車場の中でも精算機やロック板等を備えた施設であり、その土地の相続税評価額は、原則として更地と同じ方法で計算しますが、業者への貸出状況や設備の有無によって評価額を下げる特例や控除を適用できる場合があります。
本記事では、運営方式ごとの具体的な計算手順や、評価額を大きく減額できる特例の要件を解説します。
もくじ
コインパーキングの相続税評価額を決める基本ルール

コインパーキングの土地の相続税評価額は、原則として更地と同じ方法で基本となる金額を計算した上で、運営状況に応じた調整を行います。
それぞれの計算手順を整理します。
まずは更地としての自用地評価額を算出する
コインパーキングの相続税評価額を計算するには、最初にその土地を更地とみなした場合の「自用地評価額」を求めます。
自用地とは、他人に貸し付けておらず所有者が自由に使用できる土地のことです。
自用地評価額の算出方法には「路線価方式」と「倍率方式」の二つがあります。
路線価とは、国税庁が毎年7月1日に公表する、道路に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額です。
公示価格の約80%に設定されており、その年の1月から12月までの価格変動を考慮し、納税者に過大な負担をかけないよう、ある程度の余裕を織り込んだ水準となっています。
「路線価方式」とは、この路線価に土地の面積(地積)を乗じて評価額を算出する方法で、都市部の土地に用います。
路線価が定められていない地域の場合は、固定資産税評価額に一定の評価倍率を乗じる「倍率方式」で計算します。
以下では路線価方式を前提に計算例を示します。
路線価が30万円、土地の面積(地積)が100平方メートルの場合、自用地評価額は3,000万円です。
この金額をベースとして、貸借の状況などを加味していきます。
参考:No.4604 路線価方式による宅地の評価|国税庁
No.4606 倍率方式による土地の評価|国税庁
路線価図の見方や相続税評価額の計算方法、土地の形状や利用状況による土地の評価方法を解説します。
運営方式や設備の有無で評価額の減額幅が変わる
算出した自用地評価額からどの程度評価額を下げることができるかは、自営か業者への土地貸付(一括借上方式)かという運営方式やアスファルト舗装などの設備の有無によって決まります。
業者が借地上にアスファルト舗装や精算機などの構築物(家屋と独立した工作物)を設置して、駐車場(コインパーキング)として第三者に貸し出している場合は、地主の土地を利用する権利に一定の制限がかかるため、更地よりも評価額が下がる仕組みです。
一方、自営の場合で、設備を一切設けずにロープで区画しただけの駐車場の場合は、土地の利用制限が少ないため、土地評価額の減額はありません。
具体的な計算方法について、運営方式とともに次章で詳しく解説します。
参考:No.4627 貸駐車場として利用している土地の評価|国税庁
運営方式で異なるコインパーキングの評価方法と計算式
駐車場設備を自分で設置して運営しているか、土地を貸し付けて専門業者が施設運営しているかによって、評価額の計算式は変わります。
運営方式ごとの評価方法を整理します。
| 運営方式 | 設備の設置者 | 相続税評価額の計算式 |
|---|---|---|
| 自営方式 | 土地所有者 | 自用地評価額 |
| 一括借上方式 (専門業者と土地賃貸借契約) | 専門業者 | 自用地評価額 − (自用地評価額 × 賃借権の割合) |
自分で設備を設置し運営している場合は自用地として評価する
所有者自身がアスファルト舗装や精算機などの設備を用意してコインパーキングを運営している場合、土地の相続税評価額は自用地評価額と同じです。
不特定多数の利用者が一時的に駐車しているだけであり、特定の利用者に土地を利用する強固な権利が発生していないためです。
前述の例と同様に、路線価が30万円で土地の面積(地積)が100平方メートルであれば、評価額は3,000万円として計算します。
設備投資の費用はかかりますが、土地自体の評価額を運営方式によって下げる効果はありません。
参考:No.4627 貸駐車場として利用している土地の評価|国税庁
専門業者に土地を貸し付けている場合(一括借上方式)は賃借権を控除する
専門のコインパーキング業者に土地を貸し付け、業者が設備を設置して運営する一括借上方式の場合、自用地評価額から賃借権の割合を控除して計算します。
賃借権とは、賃料を支払って他人の土地を借りる権利のことです。
こうしたコインパーキングの敷地は「賃借権の目的となっている雑種地」として評価されます。
業者が土地を使用する権利を持っている分、所有者の自由な利用が制限されるためです。
控除できる賃借権の割合は、賃貸借契約の残存期間に応じて以下のとおり定められています。
| 賃貸借契約の残存期間 | 自用地としての価額に乗じる割合 |
|---|---|
| 5年以下 | 2.5% |
| 5年超10年以下 | 5% |
| 10年超15年以下 | 7.5% |
| 15年超 | 10% |
例えば、自用地評価額が3,000万円で賃貸借契約の残存期間が5年以下の場合、控除額は3,000万円 × 2.5% = 75万円です。
評価額は3,000万円 − 75万円 = 2,925万円となります。
なお、賃借権は借地借家法の対象ではないため、所有者が受ける制約の程度も限定的です。
貸家建付地(自身が所有する賃貸物件の敷地として利用している土地)の場合は評価額が約20%減額となるのに対し、コインパーキングの賃借権による減額幅は小さい点に注意してください。
以下は、路線価30万円・土地の面積(地積)100平方メートル(自用地評価額3,000万円)のケースで、運営方式ごとの評価額を比較した表です。
| 運営方式 | 土地の評価額 | 小規模宅地等の特例(詳細は後述)を適用した場合 |
|---|---|---|
| 自営方式 | 3,000万円 | 1,500万円 |
| 一括借上方式(残存期間5年以下) | 2,925万円 | 1,462.5万円 |
※いずれもアスファルト舗装等の構築物が設置されていることが前提です。
構築物がない場合は小規模宅地等の特例を適用できません。
参考:No.4627 貸駐車場として利用している土地の評価|国税庁
アパートやマンションの敷地となる貸家建付地の相続税評価額の計算方法を、ケース別に解説します。
評価額を50%減額できる小規模宅地等の特例の適用要件
コインパーキングの評価額を大きく下げる制度として、小規模宅地等の特例があります。
小規模宅地等の特例とは、被相続人が事業や居住、貸付けに使っていた土地の評価額を大幅に下げる制度です。
要件を満たせば土地の評価額を半分にできるため、適用するための主要な要件を整理します。
土地の相続税評価額を最大8割減額できる小規模宅地等の特例について、適用要件と申告手続きを解説します。
貸付事業用宅地等として200平方メートルまで評価額を半分にできる
一定の要件を満たすコインパーキングの敷地は、小規模宅地等の特例のうち「貸付事業用宅地等」の区分に該当します。
200平方メートルを上限として評価額の50%を減額できます。
例えば、自用地評価額が3,000万円で土地の面積(地積)が100平方メートルの場合、特例を適用すれば評価額は1,500万円として計算します。
相続税の負担を大幅に軽減する効果があるものの、適用には厳格な要件が定められています。
特に重要なのは取得者に関する要件です。
この特例の適用を受けるには、土地を取得した相続人が相続税の申告期限まで引き続き貸付事業を営んでいること、かつ申告期限までその土地を保有し続けていることが必要です。
相続後すぐに土地を売却したり、駐車場(コインパーキング)経営をやめたりした場合は特例が適用できなくなるため、注意してください。
なお、小規模宅地等の特例は相続税の申告書を提出することが適用の要件です。
特例の適用により納付税額がゼロになる場合でも、申告書の提出を省略すると特例そのものが適用できなくなるため、必ず期限内に必要な添付書類を揃えて申告書を提出してください。
参考:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁
アスファルト舗装や精算機などの構築物があることが適用の要件
貸付事業用宅地等として特例を適用するには、アスファルト舗装や精算機、車止めなどの構築物を土地の上に設置していなければなりません。
国税庁の通達では、建物の敷地ではない土地に特例を適用する要件として、有形償却資産に該当する構築物(アスファルト舗装や精算機など)の存在を定めています。
砂利を敷いただけの土地や、ロープを張って区画割りをしただけの状態では、原則として構築物があると認められず特例の対象外となります。
ただし、砂利敷きについては、敷設の厚さや整地の程度によって構築物と認められる余地もあるため、実務上は個別に税理士へ確認することをおすすめします。
専門業者に一括借上げで土地を貸し付け、業者が構築物を設置している場合も、要件を満たせば特例の対象に含まれます。
なお、アスファルト舗装や精算機などの構築物自体も相続税の計算上、課税価格の対象となります。
構築物の相続税評価額は「(再建築価額 − 建築時から課税時期までの償却費の合計額)× 70%」で計算します。
例えば、アスファルト舗装の再建築価額が500万円で償却費の合計が300万円であれば、(500万円 − 300万円)× 70% = 140万円が構築物の評価額です。
土地だけでなく構築物の評価も忘れずに申告する必要があります。
参考:第4章 構築物|国税庁
相続開始前3年以内に始めた駐車場経営は原則対象外になる
相続開始前3年以内に新たに貸付事業を始めた駐車場経営は、原則として小規模宅地等の特例の対象から外れます。
これは、相続開始の直前に駆け込みで駐車場を整備して過度な節税を図る行為を防ぐために、平成30年度税制改正で設けられた規定です。
ただし、被相続人が相続開始の日まで3年を超えて引き続き、当該新規の駐車場以外の特定貸付事業を行っていた場合は例外です。
なお、特定貸付事業とは、貸付事業のうち準事業(事業と称するに至らない規模の不動産貸付け)を除いたものを指します。
この要件を満たしていれば、新たに始めた駐車場経営についても特例の適用ができます。
特例を活用して過大な税負担を避けるには、長期的かつ計画的な事業の継続が求められます。
参考:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁
コインパーキングの相続税評価で間違えやすい三つの注意点
コインパーキングの利用状況や土地の形状によっては、計算が複雑になり評価を誤るリスクがあります。
実務上で注意すべきポイントを挙げます。
月極駐車場と併設している場合は利用状況ごとに評価単位を分ける
一つの土地の中で、コインパーキングと月極駐車場を併設している場合、利用状況ごとに土地の面積(地積)を分けて別々に評価額を計算します。
不特定多数が利用するコインパーキングと、特定の契約者が継続して利用する月極駐車場では、土地に対する権利関係が異なります。
相続税の財産評価では、実際に利用されている範囲ごとに土地を区分して、それぞれの評価額を求めるのが原則です。
例えば、全体で200平方メートルのうち、150平方メートルを一括借上方式による専門業者が行うコインパーキング、50平方メートルを自営の月極駐車場として貸し出している場合、まず、それぞれの割合に応じて自用地評価額を算出します。
その算出した額に、コインパーキング部分のみ自用地評価額に賃借権の割合を乗じた控除を行い、月極部分は該当する評価方法(利用者による車庫設置などの構築物があれば賃借権控除を行い、なければ自用地評価額のまま)をそれぞれ適用して合算する流れです。
青空駐車場は構築物と認められず特例が使えないリスクがある

設備投資をせずに更地をそのまま貸し出す青空駐車場は、構築物が存在しないため、小規模宅地等の特例による50%の減額対象にはなりません。
特例の要件である構築物には、アスファルト舗装やフェンス、精算機などが該当しますが、これらが一切ない状態では単なる空き地としての自用地評価と同じ扱いになります。
初期費用を抑えて駐車場経営を始めた結果、相続開始時に想定外の相続税が課される事態になりかねないため、アスファルト舗装などの適切な整備を行い、特例の適用を受けることを検討する余地があります。
参考:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁
敷地の一部に親族の自家用車を停めている部分は特例から外れる
コインパーキングの敷地内に、所有者や親族の自家用車を無償で停めている区画がある場合、その部分の土地の面積(地積)には小規模宅地等の特例を適用できません。
無償で土地を使用させる使用貸借は、特例の対象となる貸付事業に含まれないためです。
実務上は、親族から近隣相場程度の賃料を収受していれば賃貸借として扱われ、特例の適用対象に含まれる余地があります。
ただし、形式だけ賃料をやり取りしても実質的に使用貸借と判断されるおそれがあるため、賃貸借契約書の締結や賃料の振込記録の保存など、客観的な裏付けを整えておくことが重要です。
全体の地積から親族が使用している区画分を差し引き、収益を生んでいる貸付用の部分のみを対象として特例の計算を行うのが原則です。
身内での利用が混在していると計算が複雑化し、申告漏れの原因となります。
参考:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁
コインパーキングの土地評価を専門家に依頼すべきケースは?
相続した土地の状況によっては、一般の方が正確に評価額を算出するのは困難です。
税理士や不動産鑑定士に相談すべき具体的な状況を整理します。
奥行きが長いなど土地の形状が複雑で自力での路線価計算が難しい
奥行きが極端に長い土地や、形がいびつな不整形地は、路線価に各種の補正率を乗じて評価額を調整する必要があるため、専門家に計算を依頼するのが確実です。
不整形地とは、正方形や長方形に整っていない土地のことです。
国税庁は、土地の使い勝手の悪さを評価額から減額できる補正率を定めており、路線価方式では、路線価を基に、奥行価格補正、不整形地補正、間口狭小補正及び奥行長大補正などの画地補正を行い、その価額に地積を乗じて評価額を算出します。
これらを正しく適用すれば評価額を下げる効果があります。
しかし、補正率の計算には高度な知識が求められます。
自力で計算すると減額要素を見落として、過大な税金を納めるおそれがあるため、注意が必要です。
なお、路線価方式による画地補正を適用してもなお評価額が実勢価格より高くなる場合は、不動産鑑定士による鑑定評価を取得し、鑑定評価額で申告する方法も選択肢の一つです。
相続する不動産が複数ありどの特例を優先適用すべきか迷う
コインパーキング以外にも自宅やアパートなどの複数の不動産を相続する場合、どの土地に小規模宅地等の特例を優先して適用するかによって、全体の相続税額が大きく変わります。
特例が適用できる土地が複数ある場合、どの土地に適用するかは自由に選択できますが、適用できる地積の限度や減額割合が存在します。
居住用の土地(特定居住用宅地等:上限330平方メートル・減額割合80%)と貸付事業用の土地(上限200平方メートル・減額割合50%)を併用する場合は、それぞれの適用面積に調整計算が入り、単純な合算とはなりません。
有利な組合せを税理士とともにシミュレーションして選ぶことをおすすめします。
基本的には、最も節税効果が高い土地から優先して適用するのが望ましいです。
ただし、適用を受ける取得者のみが有利となるため、相続人間で争いが起こらないよう配慮が必要です。
遺産分割面と節税面の双方から検討し、事前に方針を立てておくことが大切です。
駐車場が複雑な利用状況であり法的判断や評価単位の判定が困難である
運営方式だけでなく、駐車場利用者が賃貸アパートの居住者に限定されているのか、不特定多数なのか、親族を含めそれらが入り混じっているかなど複雑な利用状況となっており、法的判断や評価単位の判定が困難となる場合が考えられます。
このような場合でも、相続税法に則した相続税評価ができる税理士や不動産鑑定士に相談することをおすすめします。
申告期限の10か月が迫る中で過大申告や税務調査のリスクを防ぎたい
相続税の申告期限である「相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内」が迫っている場合は、迅速かつ適正な評価を行うために専門家への相談が有効です。
期限に間に合わず無申告加算税を課されたり、評価額計算を誤ったことで税務署調査によって指摘を受けたりするリスクを回避できます。
土地評価の経験が豊富な税理士は、税務署から指摘を受けづらい適正な範囲で減額要素を見つけ出すことに長けています。
無駄な税金を納める事態を防ぐ上でも、時間的猶予がない中で安全に手続を進めたい状況であれば、早めの対処をおすすめします。
相続税の税務調査が行われる時期や目的、調査対象になりやすいケースと対策を解説します。
まとめ
コインパーキングの相続税評価額の計算方法や、小規模宅地等の特例を活用する際の要件について解説しました。
- 評価の基本は、路線価方式や倍率方式により更地としての自用地評価額を算出する
- 専門業者に一括借上方式により土地貸付けをしている場合は、賃貸借契約の残存期間に応じた賃借権の割合(2.5%〜10%)を自用地評価額から控除する
- アスファルト舗装などの構築物がある場合は小規模宅地等の特例で評価額を50%減額できる(申告期限まで事業継続・土地保有が要件)
- 設備がない青空駐車場や親族の無償利用部分は特例の適用対象外になる
- 土地だけでなくアスファルト舗装や精算機などの構築物自体にも相続税がかかる
- 複雑な形状の土地や複数不動産がある場合や複雑な状況であり法的判断や評価単位の判定が困難である場合は税理士や不動産鑑定士への相談が有効である
適正な土地評価を行い、過大な相続税の負担を防ぐための情報として役立ててください。
コインパーキングの適正な相続税評価はフジ相続税理士法人にご相談ください
コインパーキングの相続税評価は、運営方式や設備の有無、土地の形状などによって計算が複雑化するため、正確な評価額の算出には専門的な知識が求められます。
フジ相続税理士法人は、地主様や不動産オーナー様の不動産相続に強みを持つ専門事務所です。
土地に強い相続専門の税理士と不動産鑑定士が連携し、適正な土地評価に基づく相続税額の計算から、スムーズな申告手続までサポートしています。
コインパーキングの相続税評価に関するお悩みから、過大な税負担を防ぐためのご相談まで、お気軽にご相談ください。
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