土地評価の現地調査を1回で終わらせるための5つのポイント

効率的な土地評価には、効率的な現地調査が欠かせません。

この記事では、現地調査を一度で終わらせるためのポイントや、短時間で終わらせるための具体的なテクニックをまとめました。

現地調査の前にやっておくべき資料収集と事前調査について知りたい先生はこちらをご覧ください。

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現地調査を効率的に行うための5つのポイント

  • 居住者に配慮してトラブルを回避する
  • 現地で得た情報と役所で得た情報を色分けしてメモをとる
  • 写真で証拠を残す
  • 複数の測量道具を持っておく
  • 相続開始時点の現況などを相続人にヒアリングする

賃貸住宅などは居住者に配慮する

評価対象地の写真を何枚も撮るため、賃貸住宅の居住者に怪しまれることがあります。

所有者(相続人等)が知らないところで調査をしトラブルになると、居住者にも依頼者にも迷惑をかけますので、事前に所有者に調査予定を知らせます。

場合によっては立ち会いを依頼してもよいでしょう。

現地と役所で得た情報を色分けしてメモをとる

現地では、事前調査でリストアップした事項について各種資料と照らし合わせながら調査を進めます。

そもそもの評価対象地の場所を間違えないよう、地図や公図と照合しながら場所を特定してください。

間口距離等の測定結果は持参した地図上に記録し、必要に応じてメジャーの目盛りを写真に収めます。

このとき、現地で判明したことは赤ペン、役所で判明したことは青ペンで記録するなど、筆記具を使い分けると便利です。

机上調査で知ることのできない減価要因を発見することも現地調査の目的です。

評価対象地やその周辺に、忌み地など時価に影響を与える要因がないかどうか、多面的な視点で観察してください。

道路や境界標等を調べるために視線が下に向きがちですが、高圧線や隣地建物の越境等、上空に減価要因が存在することもあります。

写真で証拠を残す

現地調査ではなるべく多くの写真を撮影しておきます。

評価の根拠資料として添付する目的もありますが、何より後で見返して確認・検討するのに役立ちます。

評価対象地は正面だけでなく複数の角度から撮影し、接道状況等が分かるよう遠景も記録しておきます。

その他、周辺の土地の利用状況や、評価対象地の時価に影響を与えそうな周辺環境もカメラに収めます。

1か所につき複数枚撮影しておくとよいでしょう。

経験の浅いうちは特に、測量作業に追われていると写真撮影が疎かになりがちですが、写真による記録は調査後の検討段階で生きてきます。

例えば、住居敷地の横に未利用地があったとして、評価単位(住居敷地と一体評価するのか別個に評価するのか)が問題になったとします。

調査担当者は「住居の庭のようでもあり、駐車場のようでもあった」と言います。

このようなとき、いろいろな角度から撮影した写真があれば、後から複数人で検討を加えることが可能です。

ベテランであっても、最初からすべての減価要因に気付けるわけではありません。

後で議論できるように、できるだけたくさん写真を撮っておきましょう。

持っておくと便利な4つの調査道具

登記されている地積や公図上の土地の形状は現況と一致しないことがあります。

また、一団の土地に複数棟の建物が建っている場合などは、評価単位を適正に区分し、それぞれの地積を求めなければなりません。

地積や評価単位を正確に把握するには測量士や土地家屋調査士に測量を依頼するのが理想ですが、費用対効果の観点から常に専門家に発注するのは現実的ではありません。

そこで、現地調査時に簡易的な測量を行い、縄延び・縄縮みの程度や利用区分図作成の必要性に応じて正確な測量の実施を検討します。

次のような調査道具を持っておくと、土地や道路の規模に応じた測量ができます。

調査に持って行くと便利な4つの道具

スチールメジャー

スチール製テープのメジャー。2~10mのものが一般的。

測定時にテープをストッパーで固定できるものが多く、先端のツメを角などに引つ掛けることができるので1人での作業がしやすい。

直立するので土地と道路との高低差の測定にも向く。

巻尺

テープ部分がガラス繊維など柔らかい素材でできたメジャー。

20~50mのものが一般的。間口距離や広幅員の道路を測るのに用いる。2人いないと測量しづらいのが欠点。

ウォーキングメジャー(通称:コロコロ)

ローラー付きで歩きながら距離が測定できるメジャー。柄の部分が伸縮できるものが多い。

凹凸の少ない舗装路の測量に向く。往来の多い道路でも手早く測定が可能。

レーザー距離計

レーザー光の反射により数センチから数十メートルまでの距離を測ることができる。

レーザー光を当てるところがあれば測定できるため、奥行距離や手の届かないところを測るのに便利。

現地調査で確かめたいこと:境界標(プレート)

境界標の例

境界標(プレート)は土地の境界を示す標識です。

石杭、コンクリート杭、金属杭、プラスチック杭などの種類があり、現地の状況に合わせて設置されています。

また、過去にセットバックが行われている場合は道路に中心点を表す鋲が打ってあることもあります。

間口距離や奥行距離、道路幅員等を測定するときはこれらの境界標を参考にします。

境界標がなかったり、紛失・破損していたりして境界が明瞭でない場合は、門やブロック塀の位置、隣地の接道状況等から境界を推定します。

地積測量図や境界確定図、建築計画概要書附属の配置図等との照合も行うとよいでしょう。

現地調査で確かめたいこと:間口距離・奥行距離

ウォーキングメジャーでの測定

間口狭小補正が入ると思われる場合や、2mに満たず接道義務を満たさないほどに間口が狭い場合は特に注意して測定します。

奥行距離は建物が建っていると測れないこともありますが、レーザー距離計を用いて可能な限り測定します。

隣地が更地や道路であれば、隣地側や道路を測って参考値とします。

また、メジャーが手元にない場合や物理的に敷地の奥まで入っていけないような場合は、道路の側溝やコンクリートブロック、フェンス等の枚数を数えて目算することも可能です。

地積測量図がない場合はこれらの測定結果により公図の正確性を判断します。

また、おおむね整形の土地であれば間口距離と奥行距離からおおよその地積を把握することができるため、登記上の地積と比較し、縄延び・縄縮みの可能性を判断します。

現地調査で確かめたいこと:道路幅員

評価対象地が接する道路幅員を測定します。

場所により幅員が異なることがあるため複数個所を測ります。

なお、歩道がある場合は原則として歩道も道路幅員に含みます(歩道状空地など、幅員に含めないものもあります)。

U字溝やL字溝も道路に含まれるのが一般的ですが、自治体により異なることがあるため役所調査時に確認します。

また、表面上は道路でも暗渠が存在すること等もあるため、現地の測量結果だけで判断せず、役所で道路認定されている範囲を確認し測量結果と照らし合わせます。

両側に歩道がある場合の全幅員

両側に歩道がある場合の全幅員の計算

片側のみに歩道がある場合の全幅員

片側のみに歩道がある場合の全幅員の計算

U字溝がある場合の全幅員

側溝の断面がU字状になっているものをU字溝といいます。

U字溝の外側までを全幅員とするのが一般的です。

U字溝がある場合の全幅員

L字溝がある場合の全幅員

側溝の断面がL字状になっているものをL字溝といいます。

L字溝の外側までを全幅員とするのが一般的です。

L字溝がある場合の全幅員

境界の判断が難しい場合の幅員

道路と土地の境界が不明瞭

境界標がなく、道路と土地の境界の判断が付かないときは、現地の状況により境界を推定しながら測量をすることとなります。

アスファルト舗装の切れ目やブロック塀(境界が塀の内側の場合と外側の場合とがあるため、塀の幅も測る)等、境界となり得る周辺物を参考に数パターン測定しておき、役所調査の結果をふまえて検証します。

道路幅員を示す図面が手元にあるならば、図面上の幅員を現地に当てはめてみるとよいでしょう。

道路幅が4m未満であるときの幅員

幅が狭い道、未舗装道路

道路幅員が4m未満の場合は、セットバックを必要とする可能性があるため、その後退距離も合わせて調べます。

4m以上ある場合でも、基準容積率の算定や都市計画道路の現況幅員の判断に用いることがあるため、幅員を把握する必要があります。

また、道路幅員が極端に狭い場合や未舗装の場合は、たとえ路線価が設定されていたとしても建築基準法上の道路に該当しない可能性があります。

このような道路に接道していても建築ができないため、無道路地として評価することとなりますので、役所調査で詳細を確認します。

現地調査で確かめたいこと:高低差・傾斜

高低差のある土地

土地と道路との間に高低差がある場合はその高低差を測定し、接道しているといえるかどうか、利用価値が著しく低下している宅地に該当するかどうか等を検討します。

地点により高低差の程度が異なるときは平均した数値が採用されるため、複数個所を測定します。

このようにして測定した高低差の数値は、市街地農地等の宅地造成費(土盛費、土止費)の計算にも用います。

土地内に傾斜がある場合

傾斜がある土地

土地内に一定以上の傾斜がある場合は、がけ地補正や市街地山林等の宅地造成費に影響します。

傾斜が広範囲に及ぶ場合や木が茂っている場合は現地では計測が困難なため、国土地理院の等高線図などを基に標高を測り、奥行距離と合わせて角度計算により傾斜度を計測するのが一般的です。

しかし、例えば凸部の高さを周辺の建物と比較したり、凹部に人間が立ってみたり等、現地で高低差を目算できることもあります。

高低差や傾斜のある土地の調査は2人以上いると作業がしやすいでしょう。

メジャーで測定した際は、後で資料として使用するため目盛りを写真に収めておきます。

現地調査で確かめたいこと:評価単位

評価単位の酒井が不明瞭な土地

一筆の土地に複数のアパートが建っている等、一団の土地に利用単位の異なる部分がある場合は、それらを合理的に区分して個別に評価する必要があります。

貸家の敷地等の評価単位の区分は、建物図面や建築計画概要書附属の配置図等を参考に各棟の配置を把握し、測量図面等に落とし込んでいくのが一般的です。

現地では判断できないこともありますが、可能であれば、舗装の状態やフェンス等を参考に区分を分け、間口等を測定します。

駐車場や駐輪場等、各棟の居住者が共有している部分については利用比率により按分しそれぞれの評価単位に含めて評価する方法もありますので、共有部分の有無等も確認します。

目印になるものがなく境界が判断できないときは、必要に応じ測量士や土地家屋調査士に利用区分図の作成や地積測量を依頼することもあります。

現地調査で確かめたいこと:相続人の認識

相続税の財産評価は相続開始時点の現況に基づき行います。

したがって、土地の利用状況が相続開始時から変わっていないかどうかを相続人等に確認する必要があります。

例えば、相続開始時は更地だったが現在は建物が建っているケース、相続開始時は農地だったが現在は地目が変わっているケース等が考えられます。

また、住居敷地は特に、居住者に聞かなければ利用状況を判断できないことが少なくありません。

例えば、庭に作物を栽培している一角がある場合に、それが家庭菜園(宅地)なのか農地なのかは、作物を自家消費しているのか外部に出荷しているのかといったことをヒアリングした上で判断することとなります。

同様に、屋敷林(宅地)と山林、敷地内通路(宅地)と私道なども、利用単位の判定にヒアリングが必要となる例です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

現地調査と役所調査が完了した後は、社内で評価の方針を決めることになりますが、ポイントを押さえた測量と、証拠となる写真があることで、方針の検討に要する時間も短縮できます。

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