【都市計画法】相続税の役所調査をスムーズにするための7項目

相続税の土地評価に伴う役所調査では、不動産に関する法令法規を交えた専門用語が飛び交うため、苦手意識をもつ先生もいらっしゃると思います。

中でも都市計画法はよく出てきますので、基礎的な部分は頭に入れておくことが重要です。

ここでは、90条以上ある都市計画法の中から、相続税の土地評価を行う際の役所調査で頻出する項目を7つに絞ってまとめました。

▼役所調査でよく出る建築基準法の条項を知りたい先生はこちらをご覧ください。

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都市計画区域(都市計画法5条)

都市計画区域とは、自然的および社会的条件、人口、土地利用、交通量等を勘案した上で、一体の都市として総合的に整備や開発、保全を行う必要があるとして指定される区域をいいます。

都市計画区域は市町村の別に捉われずに定められ、区域内に市街化区域・市街化調整区域や用途地域が設定されます。

準都市計画区域(都市計画法5条の2)

準都市計画区域とは、都市計画区域の外ではあるものの土地利用の整序や環境保全の措置を講ずることなく放置すれば将来に支障が生じるおそれがあるとして、無秩序な開発等を防ぐために指定される区域をいいます。

準都市計画区域は都市計画区域外に定められ、例えば、市街地から離れた高速道路のインターチェンジ周辺や幹線道路の沿線等が挙げられます。

市街化区域・市街化調整区域(都市計画法7条)

計画的な市街化を図るため、都市計画区域内には市街化区域および市街化調整区域が定められます。

市街化区域は、「①すでに市街地を形成している区域」または「②おおむね10年以内に優先的に市街化を図る区域」です。
市街化区域内には必ず用途地域が設定されます。

市街化調整区域は市街化を抑制すべき区域であり、開発行為や建物の建築が厳しく制限されます。

市街化調整区域内には、原則として用途地域は定められません。

このほか、都市計画区域内であっても市街化区域・市街化調整区域の区分を定めない区域があり、これを非線引き区域(区域区分が定められていない都市計画区域)といいます。

現時点で区域区分が保留されている区域であり、用途地域の設定は任意となります。

用途地域(都市計画法8条・9条)

都市計画区域には目的に応じた地域地区が定められます。用途地域は地域地区の一つで、市街地の類型に応じて13種類あります。

それぞれの地域には各地域に建築できる建物の用途や建ぺい率、容積率、高さ制限等が定められ、住居・商業・工業の適切な配置が図られます。

居住系の用途地域

第一種低層住居専用地域低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域
第二種低層住居専用地域主として低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域
第一種中高層住居専用地域中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域
第二種中高層住居専用地域主として中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域
第一種住居地域住居の環境を保護するため定める地域
第二種住居地域主として住居の環境を保護するため定める地域
準住居地域道路の沿道としての地域の特性にふさわしい業務の利便の増進を図りつつ、これと調和した住居の環境を保護するため定める地域  
田園住居地域農業の利便の増進を図りつつ、これと調和した低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域

商業系の用途地域

近隣商業地域近隣の住宅地の住民に対する日用品の供給を行うことを主たる内容とする商業その他の業務の利便を増進するため定める地域
商業地域主として商業その他の業務の利便を増進するため定める地域

工業系の用途地域

準工業地域主として環境の悪化をもたらすおそれのない工業の利便を増進するため定める地域
工業地域主として工業の利便を増進するため定める地域
工業専用地域工業の利便を増進するため定める地域

地区計画(都市計画法12条の4・12条の5)

建築物の態様や配置等は用途地域をはじめとする地域地区によって規制されますが、地域の特性に応じたより細かな都市計画を必要とする場合に地区計画が定められます。

地区計画には地区施設の配置や規模のほか、建築物等の用途制限、容積率の最高・最低限度、建ぺい率の最高限度、敷地面積や建築面積の最低限度、壁面の位置の制限等が定められます。

中でも容積率は財産評価に直接影響を及ぼす可能性がありますので、役所調査では用途地域だけでなく地区計画の存在も確認します。

開発許可(都市計画法29条)

都市計画区域や準都市計画区域等で一定規模以上の開発行為(宅地造成等)を行うときは、開発許可制度に基づき、原則としてあらかじめ都道府県知事の許可を受けなければなりません。

また、市街化調整区域では原則として開発行為が認められませんが、建築物の用途等が一定の条件に当てはまる場合は開発が許可されます。

開発許可基準は都市計画法等の規定に加え、条例や開発指導要綱で各自治体が独自に定めます。

竣工後は工事が適切に行われたかどうかを確認するための完了検査を受け、適合すると認められれば検査済証が交付されます。

開発許可を必要とする開発行為の規模

まとめ

膨大な都市計画法の条項も、相続税の土地評価に絞ってみると、必要なのは基礎的な条項に限られます。

そうは言っても、各条項が専門用語の集まりですので、事前に把握した上で、役所職員の回答に不明点がある場合は遠慮せず聞き直すことをお勧めします。

また、例えば都市計画課で「用途地域を教えてください」と尋ねると、用途地域だけでなく容積率、建ぺい率、高度地区等々の都市計画情報を一度に教えてくれることがほとんどですので、素早くメモをとるために、調査シートの作成もお勧めです。

▼調査シート(サンプル)のダウンロードはこちらから

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