土地評価を効率化させる第一歩は、事前準備にあり!
対象地の資料を事前に収集し、調査の順番を考慮して丁寧にファイリングしておくことで、 実際の調査を無駄なく効率的に行うことができます。
現地調査・役所調査における事前資料収集のポイント
- 1か所の対象地につき複数の資料で現状を把握する
- 調査の順番を考慮して丁寧にファイリングする
- 調査に持参しなくてもよいが、 内容を把握しておくべき資料もある
資料収集の後に行いたい、「事前調査」に関する記事はこちらをご覧ください。
ファイリングしておくと便利な資料
- 名寄帳、固定資産税課税明細書
- 登記事項証明書(土地・建物)
- 公図
- 住宅地図
- 広域地図(複数の評価対象地の位置関係を把握)
- 路線価図、倍率表
- 地積測量図
- 建物図面
- Googleマップ等の航空写真
- 役所の窓口一覧
上記の資料を収集するにあたり、気を付けたいポイントを順番にご説明します。
気をつけたい資料:名寄帳
はじめに、評価対象となる不動産を漏れなく把握するために名寄帳等を取得します。
固定資産税課税明細書にも所有不動産の一覧が記載されていますが、 固定資産税が非課税となる通り抜け私道や免税点以下の不動産等は記載されないことがありますので、名寄帳が最適です。
名寄帳は相続人等から入手するか、委任状を持参して資産税課等の窓口で取得します。
共有名義の不動産がある場合、単独名義の不動産とは名寄帳が別個になっており指定しなければ提示されない可能性があるため注意してください。
特に共有になっている私道等は見落としがちです。
気をつけたい資料:登記事項証明書
共有名義不動産の持分割合は登記事項証明書等で確認します。
登記情報はインターネットの登記情報提供サービスで閲覧できますが、プリントアウトしたものには登記官印等が付されないため、法務局で取得する登記事項証明書と異なり法的な証明力はありません。
不動産調査の上では支障ありませんが、用途によっては注意が必要です。
気をつけたい資料:住宅地図、広域地図
調査すべき不動産をリストアップできたら、各種の資料や図面を揃えファイリングします。
評価対象地が複数ある場合、まわる順番等を考慮してあらかじめ広域な地図上に対象地や役所の場所をプロットし、位置関係を把握しておくと効率的に調査できます。
評価対象地の地番からより詳細に所在地を特定するために、住宅地図に印を付けておきます。
この時点で間違えると適正な評価も意味をなさなくなるので、公図やブルーマップと照らし合わせ、特定しづらい場合は相続人等に確認を取るなどして慎重に行います。
特に、区画街路が整備された(いわゆる碁盤の目のような)特徴に乏しい地域は、大きな交差点、三叉路、カーブ等の特徴のある道路や、学校、公園、病院等の目標物を参考に注意して確認します。
気をつけたい資料:公図、 路線価図
公図や路線価図等にも所在地の落とし込みをしておきます。
評価対象地が複数ある場合は、各資料に共通して記入する連番(数字やアルファベット)を決めておくとわかりやすくなります。
対象地ごとに分類してインデックスを付けてファイリング
土地数や資料が多い場合は分類しインデックスを付けますが、不動産ごとに分類するのか、資料の種類ごとに分類するのかは各自のやりやすい方法でかまいません。
要は、現地で疑問が生じたときや役所で質問を受けたときに、その場で答えが得られるよう情報を整理しておくことが大切です。
例えば、現地調査で「この建物の名義は誰だったか?」「図面上の道路幅員は4mあるのか?」といった疑問が生じることはよくあります。
同様に、役所調査で職員から「登記地目は何ですか?」「建物の築年は?」「測量図は持っていますか?」等と聞かれることもよくあります。
そのときに、情報や図面がなければ話が進まず、もう一度来なければならない事態になりかねません。
効率的な調査となるよう、丁寧に分類してファイリングしておくことをおすすめします。
調査時に持参しなくても影響の少ない資料
以上の通り、最低限必要な資料は揃えておかなければなりませんが、持参しなくても影響の少ない資料もあります。
例えば、不動産の賃貸借契約書はボリュームがありますが、調査では契約の当事者が誰であるかを把握していれば十分です。
同様に、被相続人や相続人の戸籍謄本は不動産調査では特段必要ありません。
強いていうなら、関係者の氏名を押さえておくと現地調査の際に建物が親族の所有なのか第三者の所有なのかといったことが判断しやすく、評価単位の判定に役立つことがありますので、簡単な相続人関係を把握しておくとよいでしょう。
その他、登記事項証明書も土地数や所有権の移転が多い場合はかさばるため、必要最小限のものだけでかまいません。
これらは別冊にして持参することもありますが、 戸籍などは万一紛失した場合のリスクが高いため、最低限の情報をメモ書きしておく程度でよいかと思います。
いかがでしたでしょうか。
今回の内容が、効率的な相続実務のお役に立ちましたら幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
フジ総合グループ 東京事務所所長。不動産鑑定評価の知識を⽣かした土地評価に定評があり、全国の税理士会などで土地評価のノウハウを共有する活動を続け、税理士からも高い評価を得る。
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