事前調査で予備情報を得ておくことで、現地・役所調査での減価要因の見落としを防ぎ、調査をスムーズに進めることができます。
この記事では、資料を揃えた後に済ませておきたい事前調査の項目と、そこから推察できる現地・役所調査の項目をまとめました。
事前に収集すべき資料について知りたい先生はこちらをご覧ください。
まずは充分な打合せを
調査漏れがあれば何度も現地や役所に出向くことになりますので(役所は直接でなければ回答を得られないことが多く、現地調査はなおさらです)、特に調査慣れしていない者が担当する場合は、この時点で経験者と十分に打ち合わせを行います。
「現地調査・役所調査は、机上予測の裏付けをするためにある」という気持ちでやると漏れが少ない
すべての土地に共通する調査事項に加え、相続人へのヒアリング等からあらかじめ減価要因を把握している場合は、その要因に応じた調査事項を事前に整理しておきます。
例えば事前調査により、住宅地図等から崖や土壌汚染の可能性のある土地、埋蔵文化財包蔵地等に該当する可能性が推察できた場合は、それらの土地がどのような法規制を受けるかを確認し、時価に与える影響を検討する必要があります。
「現地調査や役所調査は、事前調査による予測を裏付けるための情報や資料を入手する場」だという気持ちで取り組むと、漏れのない、効率的な調査ができます。
対象地に共通する事前調査の確認事項
資料 | 確認事項の例 |
住宅地図、Googleマップ、ストリートビュー等 | ・評価単位 ・現況地目 ・庭内神祠・隅切部分等の非課税財産の有無 ・評価に影響を与える周辺環境(線路・墓地・高圧線など) |
公図 | ・接道状況 ・セットバックの必要性 ・赤道・青道の存在 ・地役権設定の有無など |
相続人等からのヒアリング | ・相続開始時点の利用状況 ・都市計画施設の計画の有無 |
事前調査から推察したい現地調査の調査事項
事前調査から、現地では何を中心に調査すべきか推察し、計画を立てます。
すべての対象地に共通する調査事項
項目 | 調査内容 |
利用状況 | ・土地の利用状況 ・建物の用途等 |
地目 | ・現況地目(登記地目・課税地目との照合) |
境界 | ・隣地・道路との境界(境界標) ・越境物の有無等 |
間口距離、奥行距離、土地の形状 | ・間口距離・奥行距離(登記地積や公図と差異がないかどうか) |
接道状況 | ・接道義務を満たしているかどうか(前面道路と原則2m以上接しているかどうか) |
道路幅員 | ・接面道路の幅員 ・セットバックの必要性(4m未満) ・基準容積率の算定 |
道路との高低差 | ・道路と高低差(あれば高低差を測定) ・周辺の土地の接道状況(評価対象地と同様の状況かどうか) |
段差、傾斜(崖) | ・土地内の凹凸や傾斜(あれば高低差や傾斜度、傾斜方位、範囲等の確認) |
非課税財産 | ・庭内神祠、セットバック済の部分、隅切り部分、公共の用に供している部分等(あれば範囲や利用状況等の確認) |
周辺環境 | ・高圧線、埋蔵文化財包蔵地(古墳や遺跡等)、忌み地(墓地等)、土壌汚染(工場等)、震動・騒音(線路等)等 |
雑種地・市街地農地といった対象地の調査事項
項目 | 調査内容 |
宅地造成費 | ・地面の凹凸、雑草や樹木の状態、地盤改良の必要性、道路との高低差等 |
生産緑地 | ・生産緑地の看板がないかどうか |
事前調査から推察したい役所調査の調査事項
事前調査から、役所では何を中心に調査すべきか推察し、計画を立てます。
すべての対象地に共通する調査事項
代表的な担当課 | 調査内容 |
資産税課 | ・名寄帳等の取得 ・公図(課税業務上、資産税課で整備している可能性あり) ・近傍宅地等の価格 ・固定資産税評価の内容 |
道路課 ※国道・県道等の別により管理者が異なる | ・道路法上の道路 (公道)かどうか(道路法上の道路種別) ・道路幅員(道路台帳の取得) |
都市計画課 | ・区域区分(都市計画区域、市街化区域/市街化調整区域等の範囲) ・用途地域 ・容積率、建ぺい率 ・都市計画施設の計画の有無 ・上記以外の都市計画上の規制等 |
建築指導課 | ・建築基準法上の道路かどうか、建築基準法上の道路種別、セットバックの必要性(道路中心線、セットバック済かどうかの確認) ・建築計画概要書の取得 ・市街化調整区域に係る建築規制等 ・がけ条例・宅地造成等規制法等との関係 ・図画等の取得 |
減価要因に応じた調査事項
代表的な担当課 | 調査内容 |
開発指導課 | ・開発指導要綱の取得 ・開発登録簿の取得 ・市街化調整区域で可能な開発の内容等 |
区画整理課、土地区画整理組合 ※施行者により異なる | ・土地区画整理事業の進捗状況 ・仮換地位置図、仮換地明細図等の取得 |
環境課 | ・土壌汚染の有無 ・土壌汚染対策法・下水道法・その他条例との関係 |
文化財課 | ・周知の埋蔵文化財包蔵地所在地図 ・過去の試掘・本掘履歴 |
まとめ
いかがでしたでしょうか。
実際に現地調査・役所調査に訪れると、新たな調査事項が見つかったり、訪問すべき担当課が異なるなど、様々なイレギュラーが発生すると思いますが、事前に主な調査事項を整理しておくことで、臨機応変に対応する余裕ができます。
今回の記事が効率的な相続実務のお役に立ちましたら幸いです。
フジ総合グループ 東京事務所所長。不動産鑑定評価の知識を⽣かした土地評価に定評があり、全国の税理士会などで土地評価のノウハウを共有する活動を続け、税理士からも高い評価を得る。
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