騒音や震動は、住環境にとってはマイナス要素です。
利用価値の低下部分は 評価額の10%を控除
たとえば、住宅街で、電車の往来の激しい線路に接している場合、その土地の取引価格にも影響があることが少なくありません。
相続税の土地評価では、騒音、震動が甚だしいなど、付近に比べてその利用価値が著しく低下していると認められる「宅地」は、利用価値が低下している部分について、評価額の10%を控除することができるとされています。
ただし、路線価がそのマイナス要因を考慮したうえで付けられている場合には適用できません。また、その要因が土地の価格にどれほどの影響を及ぼすのかといったことも考慮したうえで、減額が適用できるかどうかが判断されます。
一般に、騒音や震動というのは主観的要素が絡むものなので、減額要素として評価に組み入れてよいものか判断が難しい点があるかもしれません。そこで、実務では、裁決事例や、環境省による「騒音にかかる環境基準」、またこれをもとにした、各自治体が定める騒音についての環境基準を判断の参考とします。たとえば、東京都の場合、第1種住居地域の昼間の騒音の基準は、原則「55デシベル以下」とされています。
こんな土地でも評価減 相続に備えて要チェック
騒音、震動のほかにも、「道路より高い位置にある宅地又は低い位置にある宅地で、その付近にある宅地に比べて著しく高低差のあるもの」「地盤に甚だしい凹凸がある宅地」「日照阻害、臭気、忌み(墓地)等により、その取引金額に影響があると認められるもの」など、土地の利用価値が付近の土地に比べて著しく低下していると認められる場合には、同様に、10%の評価減が適用できる場合があります。
『家主と地主』2021年8月号掲載
この記事を書いた人
不動産鑑定士
藤宮 浩(ふじみや・ひろし)
フジ総合グループ 代表
株式会社フジ総合鑑定 代表取締役
フジ総合グループの代表を務め、年間950件以上の相続関連案件の土地評価に携わる。相続税還付業務の第一人者として各地での講演を多数行うほか、各種媒体への出演、寄稿多数。