地主様・不動産オーナー様のための 円満相続コラム

フジ総合グループの代表者5名による
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民法、相続ルールの大規模改正へ(4)

 
4回にわたって取り上げてきた「民法、相続ルールの大規模改正へ」も最終回。
今回は、「4.遺留分制度の見直し」と「5.自筆証書遺言の方式緩和」を見ていきます。

第1回:民法、相続ルールの大規模改正へ(1)
第2回:民法、相続ルールの大規模改正へ(2)
第3回:民法、相続ルールの大規模改正へ(3)

配偶者保護のための改正は?

「4.遺留分制度の見直し」
「遺留分」とは、一定の相続人が最低限主張できる相続財産の割合を指します。相続人が配偶者と子2人の例では、配偶者の遺留分は4分の1、子1人の遺留分は8分の1です。
遺留分については、次のような問題が指摘されています。「遺留分減殺請求では寄与分を考慮できないこと」、「相続による法律関係を柔軟に解決できないこと(例えば土地について遺留分減殺請求がなされると、その土地は共有となり、共有関係を解消するためには別途共有物分割の手続きが必要となる)」、「事業承継の障害となること(例えば特定の子に家業を継がせるべく株式等を相続させても、遺留分減殺請求をされることによって、円滑な事業承継が妨げられる)」等の問題です。
これらを踏まえて、遺留分の算定方法の見直しが行われています。また、遺留分や寄与分、遺産分割に関する手続きを一回的に解決できるような方策が議論されています。

現在の制度では、遺産分割における調停や審判は家庭裁判所が管轄するのに対し、遺留分減殺請求は地方裁判所での手続きとなっています。これらを家裁が併合して扱えるようにすることで裁判を早める案も審議されており、私はこれに賛成です(ただし、一括したところで実際に裁判が早まるかどうかは疑問が残りますが…)。

「5.自筆証書遺言の方式緩和」
直筆で書く遺言(自筆証書遺言)は手軽に作成できる反面、定められた方式に沿って書かなければ無効となってしまうリスクがあります。これに関し、自筆証書遺言の要件が厳格すぎるとの声から、現在、要件緩和に向けての議論がなされています。
個人的には、遺言の方式を簡略化するのは素晴らしいことと思います。音声や映像でも残せるようにできれば、今の世の風潮には合うかなと思いますが、自筆証書遺言にありがちな改ざん問題もあり、慎重さはもちろん必要です。技術的にデータ改ざんが行えないように保証できれば、音声や映像での遺言もあり得るかもしれず、さらに遺言の幅が広がりそうです。

女性と相続の今後

 

以上、改正が検討されている主な項目を見てきました。まだまだ議論は難航しそうですが、早ければ年内にまとめられ、来年の国会に提案される見通しです。
配偶者(多くの場合、妻)への保障や介護問題が中心に盛り込まれていることから、女性がクローズアップされた改正であるように私には感じられます。家族関係(特に女性と家族との関係)、女性と社会との関係が移行期にある今、民法(相続法)の改正を行うというのは実に大変な作業だと思います。しかし、避けては通れない問題でもあります。

視点を変えると、介護問題が相続トラブルに発展するケースが増えているのは、女性の権利が昔よりも世間に認められてきたという何よりの証拠だとも言えます。実際にトラブルが起きてしまった方にとっては、もちろん不幸なことですが、社会がよりよい方向に向かうためには必要な一面もあるのかもしれません。
女性の社会進出をさらに促し、女性が今よりももっと男性と協働できる社会、家族と協働できる社会、社会そのものに深く関われる社会を作り上げるために、ぜひいい形で民法が改正されてほしいと思います。そうすれば、日本の国力も今以上に上がるのではないでしょうか。

この記事を書いた人

税理士
髙原 誠(たかはら・まこと)

フジ相続税理士法人 代表社員

東京都出身。平成17年 税理士登録、平成18年 フジ相続税理士法人設立。
相続に特化した専門事務所の代表税理士として、不動産評価部門の株式会社フジ総合鑑定とともに、年間約800件の相続税申告・減額・還付案件に携わる。
不動産・保険等への造詣を生かした相続実務に定評があり、プレジデントや週刊女性など各種媒体への寄稿・取材協力も多数行う。
平成26年1月に藤宮浩(株式会社フジ総合鑑定 代表)との共著となる初の単行本『あなたの相続税は戻ってきます』(現代書林)を出版。
平成27年7月に第2弾となる『日本一前向きな相続対策の本』(現代書林)を出版。
平成30年4月に第3弾となる「相続税を納め過ぎないための土地評価の本」(現代書林)を出版。