地主様・不動産オーナー様のための 円満相続コラム

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今後に注目!検討が進む税制改正案(2)

皆さまこんにちは!相続専門税理士の髙原誠です。

今回も前回に引き続き、今後の動きに注目したい税制改正案について考えていきます。
おさらいですが、今後注目したい相続税関連の税制改正案はこの3つ…

1.遺言控除
2.タワーマンション節税の規制
3.小規模宅地等の特例の減額幅引き上げ

前回は「遺言控除」と「タワーマンション節税の規制」についてお話しましたので、今回は残る「小規模宅地等の特例の減額幅引き上げ」について考えます。

小規模宅地等の特例の減額幅引き上げ

以前のコラム(今押さえておきたい、3つの税制改正トレンド(1))でも取り上げました通り、3世代同居の住宅リフォームについての特例は今年の税制改正で導入されています。ねらいはまさしく、自宅介護の促進です。

この改正要望は内閣府から出たものですが、同時に、内閣府からは「小規模宅地等の特例」(自宅敷地等の相続税評価額を減額できる規定)への改正要望も出ていました。次の3つの要件を満たした場合には特例の減額幅を増加させるという案です。

①相続開始時点で被相続人と同居
②同居期間が3年以上である親族(推定相続人に限定)
③被相続人の所有する居住用宅地(要するに自宅)を相続する

つまりはこれも自宅介護を促すもので、日本政府はなかなか、介護について行政サービスを厚くするという方向には向かわないようです。少子高齢化ですので致し方ない部分もあるかもしれませんが、相続防衛も兼ねて、やはり介護も自助努力が必要ということでしょうか。

実は東京税理士会でも改正の要望を提出しています

注目の改正案についてのお話はここまでとなりますが、実は私の所属している東京税理士会も、平成29年税制改正に向けて、相続税の税制改正要望を出しています。

現在の相続税の計算方法は、簡単に申し上げますと「被相続人が所有していた相続財産に税率を乗じた金額を、相続人が実際に取得した割合で按分する」方式(法定相続分課税方式)ですが、これを「相続人が取得した相続財産に税率を乗じて計算する」方式(遺産取得課税方式)にしてほしい、という要望です(図表1参照)。

 

 

これはかつて戦後のわずかな期間(昭和25年~33年)に採用されていたもので、この方式であれば、財産を多く相続した人ほど税率が高くなり、少なく相続した人ほど税率が低くなります。

例えば相続税申告をした後に申告漏れ財産が見つかった場合、現在の方式ですと、その財産を取得していない人も追徴課税されてしまいます。東京税理士会の要望は、このような問題を解消するものとなりますが、仮装分割の横行が危ぶまれるなどの懸念はありますし、相続財産が不動産ばかりである場合の納税資金の問題は依然残ります。

もちろん、この案が導入されるとなると課税状況がガラッと変わりますので、今考えている遺産分割方針なども考え直す必要があるでしょう。

前回と今回で、今後注目される税制改正案について考えました。

このように税制は毎年のように変化していくものです。私たち税理士は常に研究を怠らず、改正がお客様にどのような影響をもたらすのか、常に考えておく姿勢が求められていると感じます。

この記事を書いた人

税理士
髙原 誠(たかはら・まこと)

フジ相続税理士法人 代表社員

東京都出身。平成17年 税理士登録、平成18年 フジ相続税理士法人設立。
相続に特化した専門事務所の代表税理士として、不動産評価部門の株式会社フジ総合鑑定とともに、年間950件以上の相続税申告・減額・還付案件に携わる。
不動産・保険等への造詣を生かした相続実務に定評があり、プレジデントや週刊女性など各種媒体への寄稿・取材協力も多数行う。
平成26年1月に藤宮浩(株式会社フジ総合鑑定 代表)との共著となる初の単行本『あなたの相続税は戻ってきます』(現代書林)を出版。
平成27年7月に第2弾となる『日本一前向きな相続対策の本』(現代書林)を出版。
平成30年4月に第3弾となる「相続税を納め過ぎないための土地評価の本」(現代書林)を出版。

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