
皆さまは「延納」と「物納」という言葉を聞いたことはありますか?
「延納」とは税金を分割払いで納める方法を言い、「物納」とは税金を物(不動産がイメージしやすいでしょうか)で納める方法を言います。
今回から3回に分け、個別相談会等でもよくご質問を受ける相続税の「延納」と「物納」という制度についてお話ししていきたいと思います。今回は「延納」と「物納」の概要をお話します。
「延納」と「物納」が認められる税金は限られる
相続税をはじめとする税金は、納付(申告)期限までに「現金一括払い」が原則ですが、相続税においては、「延納」と「物納」の制度が認められています。
一部例外もありますが、原則として「延納」が認められているのは、「所得税」(所得税法第131条)と「相続税(贈与税)」(相続税法第38条)だけであり、「物納」が法的に認められているのは「相続税」(相続税法第41条)だけです。
相続税の場合、例えば相続財産の多くを不動産等、容易に換価できない資産が占めており、その資産を何らかの事情で処分できず、さらには相続人の固有財産に現金や預貯金等が少ない場合などには金銭納付が困難となってしまいます。
また、遺産分割により相続人の誰かに現金・預貯金等の金融資産が集中すると、仮にその人は相続税を払えても、不動産ばかりを相続した人は金銭納付が困難になります。
このような事情を抱えてしまいがちな相続税(贈与税)については、納税のための救済措置として「延納」や「物納」制度が認められているのです。
延納、物納には高いハードルが
ただし、あくまでも納税は「現金一括納付」を原則としていることから、「延納」や「物納」が認められるには、申告期限までに各種の手続きをすることが必要になってきます。
そして、「延納」や「物納」が認められるための条件はなかなかハードルが高いものとなっています。
そのため、ここで話題にしている「物納」や「延納」は「相続税法」の規定であり、手続きに関する規定自体は法律で決められていますが、「物納」や「延納」は「相続税法」の中でもまた異種の分野とも言え、税理士事務所以外にも専門(コンサルティング)業者がいる程の取り扱いの難しい分野となっております。
では、具体的にどのような条件をクリアする必要があるのでしょうか。相続税の「延納」や「物納」を受けるための要件等の詳細につきましては、次回以降のコラムで2回に分け、それぞれ詳しくお話ししていきます。
この記事を書いた人

税理士
髙原 誠(たかはら・まこと)
フジ相続税理士法人 代表社員
フジ総合グループの副代表を務め、不動産に強い相続専門事務所の代表税理士として、相続税申告・減額・還付案件に携わる。
多くの経験とノウハウを活かした相続実務に定評があり、プレジデントや週刊女性など各種媒体への寄稿・取材協力も多数行う。