皆さまこんにちは。不動産鑑定士の住江悠です。今回は、法人所有の土地評価等を見直して相続税還付に成功。その後、事業承継のために行っていた自社株贈与の還付手続きも行い成功した事例をご紹介します。
相続税還付のご相談を受けた瀧川様(仮名)は、創業300年のA株式会社の経営者。先代経営者の相続では顧問税理士先生に相続税申告をお願いし、約7,850万円の相続税を納めていました。相続税の申告書、土地評価明細を見ると、相続した不動産のほとんどに減額の可能性があり、さらに自社株の評価の減額も見込まれることが分かりました。
自社株の評価額も下がる?
A株式会社は先祖代々、長男が家業を継ぐことになっています。瀧川様は70歳という年齢から、そろそろ長男に家業を任せてご自身は身を引きたいとお考えでした。A社の株式は瀧川様と瀧川様の長男を含むご家族のほか、瀧川様の弟二人が保有していました。弟二人は代々長男が継ぐことに異論はなかったため瀧川様らに保有する株式の一部を贈与していました。
瀧川様は自社株の評価額も下がることに疑問を持っていらっしゃいましたが、会社所有の土地の評価額が下がると、同時に自社株の評価額も下がる仕組みをご説明し、相続税が還付になれば贈与税も還付になる可能性があることをお伝えすると、それならば是非ともお願いしたいとのことで、まずは相続税還付から手続きすることになりました。
自社株の見直しで、贈与税は全額還付!
役所調査・現地調査を行い評価意見書にまとめて、税務署に相続税の更正の請求を行ったところ、自社株を含む多数の減額が認められ、瀧川様には当初納めた額の約3割、約2,430万円の相続税が戻ってきました。
この結果を踏まえ、贈与税の自社株の評価も見直すことにしました。瀧川様と瀧川様のご家族(妻、長男、長男の妻、孫)は弟二人から400株ずつ贈与を受け、瀧川様ご家族は各々88,100円の贈与税を納めていました。申告時の純資産価額の計算明細書を確認すると土地の評価額は1億1,038万円と全体の6割超を占め、一株当たりの評価額は4,954円と求めていました。今回私たちが評価を見直したところ、土地の評価額は5,455万円、一株当たりの評価額は1,341円に下がったため、基礎控除の範囲に収まり、贈与税はかからない計算になりました。この検証結果をまとめた評価意見書を税務署に提出して更正の請求を行ったところ、瀧川様とご家族には各々納めた贈与税の全額が戻ってきました。
事業承継対策として行っていた自社株の贈与。瀧川様は弟二人が保有する残りの株式についても今後、贈与のスピードをあげることができると、大変喜んでいらっしゃいました。
この記事を書いた人
不動産鑑定士
住江 悠(すみえ ゆう)
フジ相続税理士法人/株式会社フジ総合鑑定
大阪事務所 所長
平成25年、フジ総合グループ大阪事務所の設立とともに所長に就任。
関西のみならず四国、 中国、九州、沖縄まで幅広く対応し、大阪事務所の相続関連業務実績は開設以来7年間で1,500件以上。
相続・不動産に関するセミナーも各地にて多数講演(年間講演実績約80 件)。