共有不動産は、共有者の持ち分に応じて分割し、早めに単独所有化しておくことをおすすめします。
制限多い共有不動産
ひとつの不動産を、複数の人が「共有持分」という形で所有していることがあります。
特に多いのが、相続が発生した際、相続人間で共有する形で遺産分割したことにより生じた共有状態です。親子間の共有であれば、次の相続により最終的に子どもの完全所有とすることができるため問題が少なく、節税面から見て有効な場合もあります。
しかし、兄弟姉妹や第三者との間での共有は、利用や処分が制限される、いわゆる「共憂」問題が起こる可能性が高いため、できるだけ避けるのが賢明です。
また将来、相続が繰り返された結果、疎遠な人との共有状態となり、さらに問題が複雑になるおそれもあります。
土地を分けて単独所有化
共有状態を解消する方法は、持ち分の贈与や譲渡、交換、共有者全員での売却などさまざまありますが、ある程度広い土地の場合、共有者の持ち分に応じて分割し、単独所有にするという方法があります。
その際、「どこで分割するのが最も価値が高くなるのか?」「価値の目減りを避けられるのか?」といった問題が生じますが、分筆線の根拠として、不動産鑑定評価(時価)が有効な場合があります。単に面積比で分割を行った場合、価額の差額が贈与とみなされ贈与税が課せられる可能性もあるため注意が必要です。
土地を分割して相続した場合、相続税土地評価は取得した土地ごとに行うのが原則です。共有の土地を分筆し所有者を分けた結果、不整形や面積が縮小し、相続税評価額が下がることがあります。
共有土地が有利な場合も
なお、相続税土地評価の観点から見ると、共有土地の評価は、当該土地の評価額に共有持分を乗じて算出します。
このため、地積規模の大きな宅地の評価減を入れられる場合は、共有土地の方が有利になる場合があります。
『家主と地主』2021年10月号掲載
この記事を書いた人
不動産鑑定士
藤宮 浩(ふじみや・ひろし)
フジ総合グループ 代表
株式会社フジ総合鑑定 代表取締役
フジ総合グループの代表を務め、年間950件以上の相続関連案件の土地評価に携わる。相続税還付業務の第一人者として各地での講演を多数行うほか、各種媒体への出演、寄稿多数。