高圧電線の下に位置している土地を高圧線下地と言います。
高圧線下は30~50%の 相続税評価額額減
高圧線下地では、電力会社と土地の所有者が、送電線架設保持に関する「線下補償契約」を結び、電力会社に土地の部分利用を認めることが一般的です。
この際、送電線にかかる土地部分を分筆し、そこに「地役権(自己の土地の便益のために他人の土地を利用する権利)」を設定する場合と、契約のみ取り交わし、地役権が設定されない場合とがあります。
高圧線下地では、安全の確保のため、線下の建物には高さなど一定の建築制限が加えられます。土地利用に制限が生じるという点で、相続税土地評価でも減価が行われ、「家屋の構造用途等に制限を受ける場合」は30%、「家屋の建築がまったくできない場合」は50%とその土地に適用される借地権割合を比較し、いずれか高い方の割合を、その土地の価額から控除することができます。
地役権の登記がないと見落とされるケースも
高圧線下地は、地役権の登記がされていれば、土地の登記情報を確認することで減額要素に容易に気付くことができます。しかし、線下補償契約のみで地役権の登記がされていない場合、現地調査を怠ると、高圧線下地であることを見落としてしまい、控除をし忘れてしまうことがあるため、この点、とくに注意が必要です。
また、この減額は、高圧線により「建物建築に制限が生じる」点を考慮して定められたものであり、建物の建築を前提としない農地や山林といった土地については、適用がないものとされています。
『家主と地主』2021年2月号掲載
この記事を書いた人
不動産鑑定士
藤宮 浩(ふじみや・ひろし)
フジ総合グループ 代表
株式会社フジ総合鑑定 代表取締役
フジ総合グループの代表を務め、年間950件以上の相続関連案件の土地評価に携わる。相続税還付業務の第一人者として各地での講演を多数行い、ビックサイトで行われる賃貸住宅フェアでは、毎年100名以上の動員を誇る。