地主様・不動産オーナー様のための 円満相続コラム

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固定資産税評価の縦覧をしましょう

こんにちは。不動産鑑定士の小野寺 恭孝です。
今回は、多くのお客様の関心事である「固定資産税」の話をさせていただきます。

令和3年度は評価替え年度です

4月からは「固定資産税課税評価額の縦覧期間」が始まります。加えて今年は、固定資産税の課税評価額に対して3年に一度の見直しが行われる「評価替え」の基準年度です。

固定資産税は「適正な時価」を標準として課税されるものなので、本来であれば毎年度評価替えを行い、これによって得られる「適正な時価」をもとに課税を行うことが正しいのですが、膨大な量の土地、建物について毎年度評価を見直すことは不可能であることから、土地と建物については3年ごとに評価額を見直す制度がとられています。

「固定資産税課税評価額の縦覧期間」は、土地の評価額を近隣と比較できることで、普段知ることができない所有地周辺の評価額を知る良い機会になります。縦覧によって万一評価額に誤りが見つかれば、将来にわたって税額を減らすことが出来るとともに、場合によっては固定資産税の還付が認められる場合があります。評価額に誤りがないことがわかれば、固定資産税が適正であるという証になります。何より、固定資産税評価に興味を持つということは、間接的に相続税対策にもつながるため、多方面での効果が期待できます。

固定資産税にもコロナ禍の影響

さて、今年の「評価替え」には波乱が予想されます。コロナ禍の影響で固定資産税評価の下落が見込まれる中、予想に反して上昇している可能性が高いからです。その原因は、評価替えの際に用いられる土地の価格について、今年ではなく、「昨年の」1月1日時点の価格を採用することが決まっているためです。

もっとも今年に限っては、固定資産税評価額が上がっていても税額を据え置く特例が盛り込まれたことで影響はありません。しかし来年・再来年は、高くなった評価額を基に課税されるため、税額が上がる可能性があります。

固定資産税の見直しについて

このため「少しでも税額を下げられれば」と固定資産税の見直しサービスに注目する方もいるかと思いますが、実際はそれほど簡単なことではありません。

事実このサービスは、その大部分が「建物」の固定資産税の見直しであり、「土地」の固定資産税についての見直しはしていないところが大半です。なぜなら、建物の固定資産税評価額と、土地の固定資産税評価額は算出方法が異なり、建物の場合、算出の過程で単純ミスが多発する一方、土地の評価においては、単純ミスは殆ど見られないためです。

建物の固定資産税評価では、各自治体の評価担当者が、定められた建築単価に建物の用途・構造・工法・施工の質等による評点を振り、個々の建築単価を算定することで評価が行われますが、この評点を振る過程でミスが発生することが多いようです。(例:冷凍倉庫と倉庫を見間違え、用途による評点が異なるにもかかわらず、評点を間違える/建物の装飾の質等に過多な主観が入り評点が大げさになってしまう等)

しかし、土地の固定資産税評価では、単価(固定資産税路線価)の算出過程にも、その後の個別の各種補正法(画地計算法)にも一貫した評価手法が設けられており、間口や奥行による利用制限に主観が入ることはなく、それぞれの数値によって評点が定められているため、ミスが発生しづらくなっています。このため算出過程に単純な計算ミスがある場合等を除き、評価額に矛盾が生じることはありません。

また課税の公平性の観点から考えると、ある更正が他の土地の評価額にも影響を及ぼす場合には、これをすべて更正しなければならないため、少々の見解の相違は認められないことが多いのです。

この機会に検討しましょう

以上のことからもわかるように、土地の固定資産税に大きな評価誤りが生じることはまれですが、外見からは発見しづらい利用単位分けや、非課税資産の切り離し、実測面積の採用といった細かい評価誤りは往々にして見受けられますので、今一度チェックしてみる価値はあります。還付が認められたとして金額のインパクトは大きくないかもしれませんが、将来にわたって効果が及ぶことや、前述した相続対策につながることで得るところも多いのではないでしょうか。

また、土地には大きな評価誤りがないという話とやや矛盾しますが、最近大阪市の幹線道路沿いの土地について、容積またがりによる減価が市の評価基準に定められているにも関わらずそれを織り込んでなかったことで、対象者全員に大型還付を認めた話もあります。

私共、フジ総合グループは、相続専門税理士と不動産鑑定士が協働することで、相続税土地評価を得意としておりますが、ご要望があれば固定資産税の評価誤りについてもご相談を承ります。皆様のお役に立てれば幸いです。

この記事を書いた人

不動産鑑定士
小野寺 恭孝(おのでら・きよたか)

東京事務所 副所長
不動産鑑定評価の知識を⽣かした広⼤地判定等に定評があり、現在は、他事務所の税理⼠が ⾏った相続税⼟地評価をチェックする『⼟地評価セカンドオピニオン』や評価意⾒書の作成 を⾏うサービスを展開中。