地主様・不動産オーナー様のための 円満相続コラム

フジ総合グループの代表者5名による
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今押さえておきたい、3つの税制改正トレンド(1)

平成28年度税制改正が去る3月29日に成立しました。

消費税ばかり注目を集めていますが(増税先送り論が浮上していまだ流動的な状況にあります)、「税率10%」のインパクトはやはり大きいです。諸外国の影響も受け国内景気が揺らぐ中、この増税が景気に甚大な悪影響を与えないことを祈るばかりです。

では、かつて消費税が8%に引き上げられたとき、不動産市場では何が起きたでしょうか? 今回も前回の増税時と同じく、不動産売買の際に不動産会社に支払う仲介手数料には、旧税率の経過措置(図表1)が設けられる見込みです。

 

 

よって、次のような方は不動産売却を検討するタイミングが来ていると言えます。

①相続税の納税資金を不動産売却により確保しようと考えている方
②不動産賃貸事業から撤退しようと考えている方

大規模修繕もすることが決定済ならば、増税前がいいと思います。ただし、タイミングは今に限った話ではありません。なぜなら、少子高齢化の中で国の財源は消費税と相続税に頼らざるを得ず、税制の動向は毎年注視する必要があるからです。

ここ数年の税制改正トレンドは?

さて、着目すべきは消費税だけではありません。今回は、近年の税制改正の流れを私なりにまとめてみたいと思います。

ここ数年の税制改正の傾向をズバリ表すと、

1.自宅介護の促進
2.遊休不動産の有効活用
3.世代間の財産移転の促進

の3つです。
今回は「1.自宅介護の促進」についてお話したいと思います。

自宅介護の促進

 

平成25年に住宅ローン控除の改正が行われたとき、バリアフリー改修工事の税額控除についても、期間が延長されました。さらに、今年の改正でも、3世代同居の住宅リフォームに関する税額控除規定が設けられようとしています(図表2)。

これらは何を意図しているのでしょうか? お気付きの通り、「自宅介護の促進」以外の何ものでもありません。もちろん国は介護施設等の整備も推進していますが、残念ながら、今の少子高齢化や女性の社会進出のスピードについてこれていません。

ところで、私は事あるごとに申し上げていますが、「介護は相続トラブルの引き金になりやすいので要注意!」です。「自宅介護を念頭においた減税策ができたから」という節税一辺倒の理由で実行するのではなく、親も子も、まずは目前の介護と真剣に向き合ってから、その先の相続を考えてほしいと思います。

税金を法律の範囲内で節税するのはもちろん重要です。しかし、税金だけがコストでしょうか? お孫さんは、おじいちゃん・おばあちゃんの介護や相続を大人達がどのように進めたのか、完全には理解しないながらも見ています。そしてその経験が、自分達の親の介護や相続のときに生かされるのです。

さて今回はここまで。残りの「2.遊休不動産の有効活用」と「3.世代間の財産移転の促進」は次回にお話ししたいと思います。

この記事を書いた人

税理士
髙原 誠(たかはら・まこと)

フジ相続税理士法人 代表社員

東京都出身。平成17年 税理士登録、平成18年 フジ相続税理士法人設立。
相続に特化した専門事務所の代表税理士として、不動産評価部門の株式会社フジ総合鑑定とともに、年間950件以上の相続税申告・減額・還付案件に携わる。
不動産・保険等への造詣を生かした相続実務に定評があり、プレジデントや週刊女性など各種媒体への寄稿・取材協力も多数行う。
平成26年1月に藤宮浩(株式会社フジ総合鑑定 代表)との共著となる初の単行本『あなたの相続税は戻ってきます』(現代書林)を出版。
平成27年7月に第2弾となる『日本一前向きな相続対策の本』(現代書林)を出版。
平成30年4月に第3弾となる「相続税を納め過ぎないための土地評価の本」(現代書林)を出版。