土地はその使い方によって細かく分けると23種類の地目に分類されていますが、財産評価上は9種類に分けられています。その中で「雑種地」はほかの8種類には該当しない土地のことを指します。
本コラムでは、雑種地の評価方法を、ケーススタディを交えて詳しく解説します。
もくじ
雑種地とは
相続税などの申告や納税のため、財産の評価額を計算しなければならない人に向けて、国税庁は、財産評価基本通達によって、様々な種類の財産の評価方法を定めています。
このうち、土地については、その地目を9つに分類し、それぞれで評価方法を定めています。
その地目の一つが、「雑種地」です。雑種地は、他の8種類(宅地、田、畑、山林、原野、牧場、池沼、鉱泉地)に該当しない地目とされ、評価方法の確立が難しい土地の受け皿のような位置づけになっています。
やや詳しい話も付け加えますと、雑種地を含めた9つの地目は、不動産登記事務取扱手続準則に定められる地目に基づいています。
この準則による地目は20種類以上もあって、その中の10種類(※)もの地目が、相続税評価では雑種地に統合されていますから、雑種地の範囲はとても広いものとなっています。
※墓地、境内地、運河用地、水道用地、用悪水路、ため池、堤、井溝、公衆用道路、公園
雑種地の具体例
他にあてはまらない地目が雑種地に該当するため、一見してまったく関連性のない、さまざまな用途の土地が、雑種地として評価する対象になっています。
・駐車場
・資材置き場
・空き地
・鉄塔敷地、変電所敷地
・遊園地、ゴルフ場、運動場、テニスコート、プール 等
雑種地として現実によくあるのは、駐車場です。
月極駐車場やコインパーキングなどとして使っている土地が該当します。
ただし、スーパーマーケットの駐車場など、店舗の敷地に続いている駐車場は、基本的には雑種地ではなく店舗の敷地と一緒に宅地として評価されます。
土地の評価の基本として、異なる地目の土地がまとまって一体として利用されている場合は、全体をその中の主たる地目で評価するというルールがあるためです。
雑種地を賃貸している場合
たとえば、資材置き場などとして建設業者等に雑種地を賃貸していれば、雑種地の評価額から、賃借権に相当する額を控除することができます。
ただし、自身で駐車場を経営している場合、駐車場は単に保管場所を提供しているだけですから、利用者に賃借権が発生しているとまではいえません。
この場合は、自用の土地として評価することになるため注意が必要です。
賃借権の計算方法は、登記の有無、賃借権を設定する対価としての権利金等の有無などの事情で変わります。
市街化区域・市街化調整区域について
市街化区域・市街地調整区域内にある雑種地の評価をするときは、その評価単位や評価方法に注意点があります。
詳しい内容は後述しますが、まずは、市街化区域・市街地調整区域とはそれぞれどのようなものかを把握しておく必要があります。
都道府県では、都市計画法に基づく「都市計画区域」を定めて、その区域内を、生活に便利な「市街化区域」と市街化を抑制している「市街化調整区域」に線引きしています。
市街化を抑制しているといっても、「市街化調整区域」は山奥の未開の地のような場所のことを指すわけではありません。
「市街化調整区域」とは、市街化区域と同様に「都市計画区域」の一部で、その区域内で、農業や林業など第一次産業を行っているエリアです。
「市街化調整区域」では、こうした産業を守るため、勝手に土地を潰して建築物を新築することができません。しかし、農業等を営む方の生活基盤は必要ですから、農家の方の住宅などは許可なく建てることができますし、生活に必要な物品を販売するお店なども、開発許可があれば建築することができます。
つまり、市街化調整区域にも、宅地として利用されている区域が存在します。
「見渡す限り、大自然」のような場所を想像すると、この後の解説で出てくる「しんしゃく割合」の話がわかりづらくなりますので、ここでは、「市街化調整区域とは、田んぼや畑、山だけでなく、店や住宅地もある地域」ということを押さえておきましょう。
雑種地の評価単位
利用単位で評価する
土地の相続税評価額を計算するためには、まず評価する土地の単位を決めなければなりません。評価する単位とは、土地のどこからどこまでを一つの土地として評価するのかということです。
「お隣の土地との境界線まででしょ」「登記された一筆の土地では?」といろいろな考え方が出てきそうですが、原則は、利用目的が同じである土地ごとに評価します。
すなわち、一筆の雑種地の中で利用者や利用目的が異なる部分がある場合、それらは別の土地として評価しなければなりません。
反対に、同じ目的で利用されている、物理的にまとまった複数の雑種地があれば、それを一つの単位として評価することになります。
市街地にある雑種地の評価単位
前述で、利用目的が異なる部分は別々に評価するとしましたが、例外的にこれを一つの土地として評価すべき場合があります。
それは、市街化区域など市街地を形成している区域(市街化調整区域は除く)において、宅地と類似する状況にある雑種地を評価する場合です。
「周囲の状況から見て宅地としても活用できそうな雑種地を、土地の内部で利用単位を分けて別々に評価してはいけません」という意味が込められていると考えられます。
雑種地は、資材置き場や駐車場など、土地の内部で部分的な利用をすることが可能です。
しかし、内部で利用単位を分けて評価すると、道路に接していない土地や不自然な形状の土地が出てくる可能性があり、路線価に過度な減額補正がかかる恐れがあります。
個別の状況で判断していくしかないのですが、とにかく、周りが宅地だらけの場所にある雑種地を利用目的で分けるときは、少し注意が必要ということです。
雑種地の評価方法
雑種地の評価方法は「比準方式」
雑種地の評価は、状況が類似する付近の土地の1㎡あたりの価額を基に、雑種地であることの条件差を調整して評価します。
この評価方法を、「比準方式」といいます。
市街化区域にある雑種地であれば、付近の土地は宅地がほとんどでしょうから、雑種地の付近にある宅地の1㎡あたりの価額を参考に、条件差を考慮して評価していくこととなります。
これに対し、市街化調整区域にある雑種地は、周辺が、山や田畑の場合もあれば、住民の生活用品店などが立ち並ぶ区域である場合もありますので、何の地目の土地と比準させるか迷うことがあります。
そのため、市街化調整区域にある雑種地については、比準させる土地の地目の判定方法や、宅地と比準させた場合の「しんしゃく割合」(=減額割合)が別途示されています。
市街化区域にある雑種地の計算方法
市街化区域にある雑種地は、雑種地を宅地であるとして1㎡あたりの価額を計算し、そこから地積を乗じる前に「1㎡あたりの宅地造成費」を控除して計算します。(宅地比準方式)
路線価地域・倍率地域のそれぞれの計算式は、下記のとおりです。
評価する雑種地の路線価×各種補正率=1㎡あたりの価額
(1㎡あたりの価額−1㎡あたりの宅地造成費)×地積=評価額
〈解説〉宅地を評価するときの路線価方式とよく似ています。
評価する雑種地と類似する付近の宅地(比準宅地)1㎡あたりの固定資産税評価額×宅地の評価倍率×各種補正率=比準宅地の1㎡あたりの価額
(比準宅地の1㎡あたりの価額−1㎡あたりの宅地造成費)×地積=評価額
〈解説〉比準宅地との位置や形状の条件差を補正するため、路線価方式で使用する各種補正率を使用します。このとき、地区区分は「普通住宅地区」のものを使用します。
雑種地を宅地にする際に負担する平均的な費用のことです。
インターネットで、国税庁の路線価図・評価倍率表に掲載された「宅地造成費の金額表」から調べることができます。
市街化調整区域にある雑種地の計算方法
雑種地の周辺の状況から、類似する付近の土地の1㎡あたりの価額を用いて比準方式で評価します。
どの地目に比準させるかは、下記の「周囲(地域)の状況」と「比準地目」で判定します。
評価対象の雑種地の周囲が、純農地、純山林、純原野であるときは、付近にある農地、山林、原野の1㎡あたりの固定資産税額などに基づいて評価します。
ただし、農地等の価額を基に評価する場合で、評価対象の雑種地が、資材置場や駐車場として利用されているときは、農地等の価額に宅地造成費を加算した価額によって評価します。(宅地と比準して計算した評価額を上回ることはできません)
類似する付近の宅地1㎡あたりの価額を基に評価します。
線引き後(市街化調整区域に区分された後)に沿道サービス施設が建設される可能性のある土地(都市計画法第34条第9号)や、日常生活に必要な物品の小売業等の店舗として開発・建築される可能性のある土地(同条第1号)のある地域が該当します。
「可能性のある土地」ですので、役所に問い合わせて、こうした開発許可ができる区域なのかどうかを確認する必要があります。
「農地や山林も近いし、宅地も近いし…」という状況にある雑種地もあるでしょう。
こればかりは、周囲の状況を見て、その雑種地が、農地等と宅地のどちらの価額に比準させて評価するのが適切かを一つずつ判断していくしかありません。
しんしゃく割合を使った計算例
一番右の「しんしゃく割合」とは、宅地比準方式で評価する雑種地の市街化の度合いから、宅地との差をしんしゃくするための割合です。
たとえば、しんしゃく割合50%では、比準宅地1㎡あたりの価額を半分にして評価します。
・しんしゃく割合30%の地域にある資材置き場(400㎡)
・倍率地域にある(宅地の評価倍率:1.1倍)
・類似する付近の宅地(比準宅地)の1㎡あたりの固定資産税評価額:1万円
・各種補正率(比準宅地との条件差を補正するためのもの)は、奥行価格補正率1.00のみとする
・1㎡あたりの宅地造成費は700円
(計算式)
{1万円×1.1倍×奥行価格補正率1.00×(1-30%)-700円}×400㎡=280万円
市街化区域・市街化調整区域以外にある雑種地
国土交通省の令和3年都市計画現況調査によると、全国の都市計画区域は、約1,027万ha、そのうち、市街化区域が約145万ha、市街化調整区域が約376万haだそうです。
日本の国土が約3,780万haですから、そのうち約1割が市街化調整区域で、市街化区域の倍以上の広さが確保されていることがわかります。
しかし、両者の面積から、都市計画区域ではあるものの市街化区域・市街化調整区域のどちらにするか決められていない、いわゆる「非線引き区域」や、都市計画区域「外」の面積もかなりあることがわかります。
非線引き区域や都市計画区域外にある雑種地も、周辺の状況を見て、付近の類似する土地を比準して評価します。
ちなみに都市計画区域外では、山林や原野などが多くなると考えられますが、中には「準都市計画区域」として開発されているエリアもあります。
イメージとしては、高速道路や幹線道路の沿道などを中心に開発や建設が行われている区域です。
例外:比準方式を使わない評価方法
レアケースですが、倍率地域において、「雑種地」の評価倍率が設定されている地域があります。
この地域にある雑種地を評価する場合に関しては、比準方式を使う必要はなく、その雑種地の固定資産税評価額に、雑種地の評価倍率を乗じて、ダイレクトに評価することが可能です。
まとめ
相続した雑種地の価額は、周りの土地と比べて、相続時点でその雑種地と最も似ている使い方をしている付近の土地の価額を基準として、雑種地との位置、形状等の条件の差を考慮して評価します。
相続や贈与によって雑種地を取得された方、雑種地が所在する区域の調べ方や計算方法について不明点がある方は早めに専門家へ相談することをオススメします。