雑種地の相続税評価を徹底解説!評価方法や計算のポイント、注意点を解説

雑種地の相続税評価を徹底解説!評価方法や計算のポイント、注意点を解説

雑種地の相続税評価は、その土地がどのように使われているか、また都市計画法上の区域区分によって評価方法が異なります。

さらに、雑種地が第三者に貸し出されているようなケースでは、評価に必要な計算も一層複雑になります。
このように雑種地の評価は一筋縄ではいかず、適正な相続税額を算出するためには、相続税に関する制度や評価方法についての正しい理解が必要です。

本記事では、雑種地の相続税評価について、評価方法や計算時の注意点をわかりやすく解説します。
具体的な評価パターンごとに整理してご紹介しますので、相続税における「雑種地」について調べている方は、ぜひ最後までご覧ください。

もくじ

雑種地とは?相続税評価における定義と特徴

雑種地とは?相続税評価における定義と特徴

(1)雑種地の定義

「雑種地(ざっしゅち)」とは、財産評価基本通達(国税庁が相続税や贈与税の課税対象となる財産の評価方法を定めた基本通達)で定められた「地目(ちもく)」のうち、「雑種地」を除いていずれにも該当しない、さまざまな用途に使用されている土地のことをいいます。

財産評価基本通達上の地目には、「宅地、田、畑、山林、原野、牧場、池沼、鉱泉地、雑種地」の9種類がありますが、それ以外にも、不動産登記事務取扱手続準則第68条では、全部で23種類の地目が定められており、そのうち「墓地、境内地、公園、水道用地、運河用地、用悪水路、ため池、堤、公衆用道路」は、財産評価上では「雑種地」として取り扱われることになります。
登記簿上の地目は、法務局で取得できる「不動産登記簿謄本(全部事項証明書)」で確認できます。

ただし、相続税の評価では登記簿上の地目ではなく、相続が発生した時点での実際の使われ方(現況)によって評価を行う点に注意が必要です。

※参考:法務省.「不動産登記事務取扱手続準則」https://www.moj.go.jp/content/001394394.pdf(参照 2025-03-24)

(2)相続税評価において雑種地と判断される土地の特徴

登記簿で「宅地」と記載されていても、実際には駐車場や資材置き場などに利用されている土地は、現況に基づき「雑種地」として評価されることがあります。
また、「田」や「畑」とされている土地でも、長期間にわたって耕作が行われておらず、草が生い茂っているような状態であれば、農地ではなく雑種地と見なされることもあります。
一方で、登記上は「雑種地」であっても、住宅や店舗などの建物が立っている場合は、その土地は宅地として評価されます。

このように、登記簿上の地目は土地の現状を反映していないことがあるため、相続税の評価では、現地調査により実際の利用状況を確認したうえで、適切な地目を判定する必要があります。

雑種地の相続税評価方法と4つの確認事項

雑種地の相続税評価を行う際は、以下の4つの要素を確認し、それぞれに適した方法で評価額を算出することが重要です。

雑種地の評価方法を決めるために確認すること
  • 土地の現況(地目)
     → 登記簿上の地目ではなく、実際の使われ方(現況)を基準にして、相続税評価上の地目を判定します。

  • 都市計画法上の区域を確認
     → 対象地が市街化区域か市街化調整区域かによって、評価の方向性が異なります。
     特に市街化調整区域では、開発の制限度合いに応じて「斟酌(しんしゃく)割合」という補正が適用されることもあります。

  • 相続税評価額を算出するための評価方式
     → 路線価が設定されている「路線価地域」では路線価方式を、設定されていない「倍率地域」では倍率方式を使用します。
     評価方式法を間違えると評価額に大きな差が生じるため、事前確認が不可欠です。

  • 土地の利用単位
     → 複数の雑種地でも、用途が同じで物理的に連続していれば「一団の土地」としてまとめて評価できる場合があります。
    逆に、用途が異なる場合や道路で分断されている場合は、別々に評価します。

これらの要素を踏まえたうえで、必要に応じて宅地造成費の控除や各種補正率を適用し、最終的な相続税評価額を正確に算出していきます。

「路線価方式」と「倍率方式」の基本的な計算方法について知りたい方はこちらをご確認ください。

あわせて読みたい
相続税路線価とは?路線価図の見方と相続税の計算・土地の評価方法を解説

路線価図の見方や路線価を用いた相続税評価額の計算方法について解説しています。

あわせて読みたい
倍率方式による相続税評価の計算方法と注意点を解説!

倍率方式による相続税評価額の計算方法と、計算する際の注意点について解説しています。

(1)土地の現況を確認し、地目を判定

相続税評価額を正確に計算するためには、まず土地の現況に基づいた地目の確認が重要です。
登記簿謄本に記載されている地目は、申請時点の情報であり、必ずしも現在の利用状況を正確に反映しているとは限りません。

たとえば、登記上は「山林」とされていても、実際には宅地や駐車場として使われている場合、評価上の地目は山林ではなく、「宅地」または「雑種地」として見なされます。
現況確認には、現地の目視調査が基本ですが、補助的に航空写真やGoogleマップの衛星画像を利用することも可能です。

ただし、写真は過去の状態を写している可能性があるため、最終的な確認は現地で行います。

(2)雑種地の所在する都市計画法上の区域区分を確認(市街化区域・市街化調整区域)

雑種地がどの用途地域にあるかによって、相続税評価の方法や評価額に大きな差が出ることがあります。
そのため、都市計画法に基づく区域区分の確認は非常に重要です。

以下は、代表的な区分とその特徴です。

区域区分特徴
市街化区域住宅や商業施設などの建設が進められている地域で、開発がしやすいため、土地の評価額が高くなる傾向があります。
市街化調整区域自然環境や農地の保護を目的として開発が厳しく制限される地域であり、相続税評価額は相対的に低くなりがちやすいです。

市街化調整区域にある雑種地を評価する場合、開発制限の影響を反映するために「斟酌(しんしゃく)割合」と呼ばれる減額補正が適用されることがあります。
区域区分は、市区町村の都市計画図で確認できます。

近年では、自治体のホームページ上に都市計画図を公開しているケースも多く、インターネットからの確認も可能です。
また、いずれの区域にも該当しない「非線引き区域」の雑種地については、評価方法が明確に定められていないため、路線価の有無に応じて「路線価方式」または「倍率方式」を使って評価するのが一般的です。

(3)雑種地の所在する相続税評価方式を確認(倍率方式・路線価方式)

雑種地の相続税評価では、対象となる土地が属する地域に応じて「路線価方式」または「倍率方式」のいずれかが適用されます。

国税庁が毎年公開している「路線価図」や「評価倍率表」を使えば、所在地ごとの評価方式を調べることができます。
評価倍率表の宅地欄に「路線」と記載があれば「路線価方式」、数値(倍率)のみが記載されている場合は「倍率方式」と判断されます。
一般的に、都市開発が進んでいる市街化区域は路線価が設定されていることが多く、路線価方式による評価となります。

一方、市街化調整区域や非線引き区域は倍率方式が多く、固定資産税評価額に評価倍率をかけて算出します。
評価方式を誤って選択してしまうと、相続税額に大きな差が生じる可能性があるため、評価対象地の評価方式は、必ず事前に確認しておきましょう。

①市街化区域内の「路線価地域」に所在する雑種地の相続税評価

市街化区域内で、かつ「路線価地域」に分類されるエリアにある雑種地は、相続税評価にあたって「宅地比準方式」によって評価を行います。
「宅地比準方式」とは、その土地が宅地であったと仮定した場合に、近隣の宅地の評価額をもとにして雑種地の価値を算出する方法です。

具体的には、以下の計算式を用います。

宅地比準方式による雑種地の相続税評価額

雑種地の相続税評価額=(路線価 × 画地補正率 - 宅地造成費)× 地積

まず、対象地が宅地であると仮定し、該当する路線価に画地補正率(形状や接道条件に応じた補正)をかけて仮の評価額を算出します。
そのうえで、雑種地を宅地として利用するには造成工事などの費用がかかるため、その造成費を差し引くことで、雑種地としての相続税評価額が算出されます。
宅地造成費の金額は、土地の状態によって大きく異なるため、評価の精度を高めるには、税理士などの専門家に相談するのが望ましいでしょう。

宅地比準方式と宅地造成費については、こちらで詳しく解説しています。

あわせて読みたい
宅地比準方式とは?農地・山林・雑種地の相続税評価額を計算する方法を解説

宅地比準方式を用いた計算方法について詳しく解説しています。

あわせて読みたい
【具体例あり】宅地造成費の計算方法を解説|相続税の土地評価

宅地造成費の種類と計算方法、計算する際の注意点について解説しています。

②市街化区域内の「倍率地域」に所在する雑種地の相続税評価

市街化区域にある雑種地のうち、路線価が設定されていない「倍率地域」に該当する土地については、「倍率方式」によって相続税評価額を算出します。
この方式では、まず対象地の固定資産税評価額を確認します。
固定資産税評価額は、毎年市区町村から送られてくる納税通知書や、役所で取得できる固定資産税評価証明書などで確認できます。

次に、国税庁が公表する「評価倍率表」で、その地域に適用される雑種地の倍率を調べます。
倍率が記載されておらず、当該雑種地が宅地に類似する場合は、近隣宅地の倍率を用いて代替するケースもあります。

計算式は、以下のとおりです。

倍率方式による雑種地の相続税評価額

雑種地の相続税評価額 = 固定資産税評価額 × 評価倍率

なお、近傍宅地の倍率を用いた場合は、造成費の控除などを加味して評価額を調整する必要があります。

③市街化調整区域内に所在する雑種地の相続税評価

市街化調整区域にある雑種地は、多くの場合「倍率地域」に該当し、相続税評価には「近傍地比準方式(きんぼうちひじゅんほうしき)」が用いられるのが一般的です。

この評価方式では、近隣の標準的な宅地の価格を参考にして(当該雑種地が宅地に類似する場合)、対象雑種地の相対的な価値を算出します。
算出にあたり、以下の項目を事前に確認する必要があります。

近傍地比準方式を用いるために必要な情報
  • 近隣宅地の1㎡あたりの固定資産税評価額
  • 宅地の評価倍率
  • 土地の形状や接道条件に応じた画地補正率
  • 評価基準年度と相続発生日の時点差による修正(時点修正)
  • 市街化調整区域特有の減額補正「斟酌(しんしゃく)割合」

「斟酌割合」とは、宅地への転用が困難な土地に適用される補正で、開発制限の程度に応じて30~50%の範囲で評価額が減額されます。
この割合は、国税庁が示す基準を参考に、土地の状況に応じて決定されます。

以下に、斟酌割合30%の場合の計算式を示します。

(近傍宅地の1㎡価格 × 補正率 ×(1 − 斟酌割合)− 宅地造成費)× 地積

たとえば、斟酌割合30%、宅地の評価倍率が1.1倍、近隣宅地の固定資産税評価額が1万円/㎡、宅地造成費が1㎡あたり700円、地積が400㎡、補正率が1.00の場合、次のように計算されます。

計算例

(10,000円 × 1.1 × 1.00 ×(1 − 0.3)− 700円)× 400㎡ = 2,800,000円

このように、市街化調整区域における雑種地の評価は多くの要素を加味する必要があります。

④非線引き区域に所在する雑種地の相続税評価

非線引き区域に所在する雑種地は、市街化区域にも市街化調整区域にも分類されない地域であり、都市計画による明確な区分がないため、評価方法の選定に注意が必要です。
このような区域では、土地利用の方向性が定まっておらず、宅地化や開発に対する制限も不明確であるため、土地の評価額にも幅が出やすくなります。
相続税評価にあたっては、その地域に路線価が設定されていれば「路線価方式」を適用し、設定されていない場合には、「倍率方式」で評価額を算出するのが原則です。

ただし、非線引き区域の土地は一様ではないため、同じ区域内でも立地条件や周辺環境により評価に差が生じることがあります。

(4)土地利用の単位を確認(一団の雑種地の判定)

土地利用の単位を確認(一団の雑種地の判定)

雑種地の相続税評価においては、「一団の雑種地」として複数の土地をまとめて評価するか、個別に評価するかを見極める必要があります。
これは、評価単位が土地の「利用目的」によって決まるという「財産評価基本通達7-2」のルールに基づいています。
つまり、複数の雑種地が同じ目的で使用されていれば、それらはまとめてひとつの土地(一団)として評価されます。

たとえば、隣り合う雑種地AとBがあり、Aは駐車場として使われ、Bは空き地のままの場合、利用目的が異なるため別々に評価します。
しかし、Bも駐車場として使用されていれば、AとBは一団の雑種地として一括して評価されることになります。
なお、物理的に隣接していても、道路や川などによって土地が分断されている場合は、一団とは認められません。

また、例外的に、市街化調整区域外で市街地形成が認められるようなエリアでは、利用目的が異なっていても、一団としての評価が合理的と判断されるケースもあります。
たとえば、テニスコートとそれに隣接した駐車場のように、用途が異なっていても実質的に一体の施設として利用されている場合は、一団の雑種地としてまとめて評価されることがあります。

※参考:国税庁 土地及び土地の上に存する権利「土地の評価上の区分と評価単位」
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/02/01.htm

貸し付けられている雑種地の相続税評価額

雑種地に限らず、土地に賃借権や地上権が設定されている場合、相続税評価は非常に複雑になります。
これらの権利が評価額に与える影響を正しく把握しなければ、相続税の申告時に、税金を納めすぎてしまう可能性があります。
貸し付けられている雑種地の評価では、まず自用地としての価値を算出し、次に賃借権や地上権の価額を控除するのが基本的な流れです。

(1)貸し付けられている雑種地とは

雑種地が第三者に貸し付けられている場合、相続税評価は自用地の場合と比べて複雑になります。
貸し付けの目的としては、以下のような施設の設置やその運営のために行われることが多くあります。

貸し付けられた雑種地の利用例
  • 鉄塔(送電線用地など)
  • バッティングセンターなどの娯楽施設
  • コインパーキング(時間貸し駐車場)
  • 公園や公共スペース
  • 中古車展示場などの営業用地

雑種地を貸している場合の評価は、次の3段階で行います。
① まず、その雑種地を自用地として評価します。

その際の評価方法は、「財産評価基本通達の82~84」に基づいて行われます。
② 次に、土地に設定されている権利(賃借権や地上権)の価額を計算します。

これらの権利が、所有者による使用収益を制限するため、その分を差し引く必要があります。
※具体的な評価方法は後述します

③ 最後に、自用地として評価した価額から②の権利価額を控除して、最終的な相続税評価額を算出します。
このように、貸し付けられた雑種地の評価では、権利関係が正しく評価されているかが非常に重要なポイントになります。

(2)賃借権の評価方法

雑種地に賃借権や地上権が設定されている場合、その土地の相続税評価額は、自用地としての評価額から、これらの権利の価額を差し引くことで算出します。

この評価の基本式は、以下のとおりです。

貸し付けられている雑種地の相続税評価額の計算式

貸し付けられている雑種地の相続税評価額 = 自用地としての評価額 − 賃借権または地上権の価額

賃借権や地上権が設定されると、土地所有者の利用権限が制限されるため、その分だけ相続税評価額も低くなります。
権利の評価額は、設定された契約内容や利用状況をもとに計算しますが、具体的には、「財産評価基本通達87」に従って算定されます。

通達では、賃借権が「地上権に準ずる賃借権」か「それ以外の賃借権」かで、評価方法が異なります。
地上権に準ずる賃借権とは、登記がされている賃借権や権利金の授受があるもの、堅固な構築物の所有を目的とするものなどです。
これらは借地権に近い権利と見なされ、より高く評価されます。
一方、その他の賃借権は借主の権利が弱いため、賃借権評価額の2分の1相当額を賃借権以外の評価額とします。

このように、賃借権の評価は土地評価に大きく影響するため、慎重な判断が求められます。

※参考:国税庁 雑種地及び雑種地の上に存する権利
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/02/16.htm

地上権に準ずる賃借権の評価方法

「財産評価基本通達87」では、一定の条件を満たす賃借権を「地上権に準ずる賃借権」として評価するよう定めています。

このような賃借権には、以下の特徴があります。

「地上権に準ずる賃借権」の特徴
  • 賃借権が登記されている
  • 権利金や一時金の授受がある
  • 堅固な構築物の所有を目的としている

これらの条件を満たす場合、当該賃借権は借地権と類似の性質を持つものとして、次の手順で評価を行います。

「地上権に準ずる賃借権」の要件を満たす場合の評価手順
  1. 雑種地の自用地としての価額を算出します。(例:路線価 × 補正率 × 地積)
  2. 法定地上権割合に基づいて、賃借権の価額を計算します。
  3. 借地権割合に基づく賃借権の価額も別途算出します。
  4. 2と3のうち、金額が低い方を「暫定的な賃借権価額」として仮決定します。
  5. 「財産評価基本通達86」に定める「調整賃借権割合(賃借権の残存期間に応ずる割合)」に基づき、調整後の評価額も算出します。
  6. 最終的に、4と5の金額を比較し、より高い方の金額を控除対象額として採用します。

この手順により、地上権に準ずる賃借権が設定された土地の評価額が、公平に反映されます。

地上権に準ずる賃借権以外の賃借権の評価方法

地上権に準ずるとまではいえない賃借権も、相続税の計算においては適切に評価する必要があります。
これらの賃借権は、借主の権利が比較的弱いため、評価額もそれに応じて算出されます。

評価方法は、以下の手順に従います。

地上権に準ずる賃借権以外の賃借権の評価手順
  1. まず、雑種地の自用地としての評価額を算出します。
  2. 次に、賃借権を仮に地上権と見なした場合に適用される「法定地上権割合」を、賃借権の残存期間に応じて確認します。
  3. この法定地上権割合に2分の1を乗じて、評価割合を求めます。
  4. その割合を1で求めた自用地としての価額に乗じて、賃借権の価額を算出します。
  5. さらに、「財産評価基本通達86」に定められた「調整賃借権割合賃借権の残存期間に応ずる割合)」に基づき、別途調整後の賃借権価額を計算します。
  6. 4と5の価額を比較し、より高い方の価額を自用地としての価額から控除する価額として用います。

(3)地上権に準ずる賃借権の目的となっている雑種地の評価方法の計算例

ここでは、地上権に準ずる賃借権が設定されている雑種地の相続税評価額について、実際の数値を用いた計算例を紹介します。

前提条件
  • 地積:200㎡
  • 路線価:1㎡あたり150,000円
  • 補正率:1.0
  • 賃借権の目的:「堅固な構築物の所有」
  • 残存期間:30年
  • 借地権割合:50%(50E)

① 自用地としての評価額を算出します。
150,000円/㎡ × 1.0 × 200㎡ = 30,000,000円

② 賃借権の価額を、以下の2通りで計算します。
●法定地上権割合に基づく場合:
 30,000,000円 × 40% = 12,000,000円

●借地権割合に基づく場合:
 30,000,000円 × 50% = 15,000,000円

③ 上記2つを比較し、小さい金額(12,000,000円)をいったん控除額とします。

④ 次に、通達86に基づく「調整賃借権割合」による価額を算出します。
●調整割合:20%と仮定
 30,000,000円 × 20% = 6,000,000円

⑤ ③と④の結果を比較し、より高い価額(15,000,000円)を最終的な控除額とします。

⑥ 相続税評価額は、以下のとおりです。
30,000,000円 − 15,000,000円 = 15,000,000円

このように、通達で定められた複数の方法による算出結果を比較し、正しい控除額を採用する必要があります。

(4)その他、地上権の目的となっている雑種地の評価方法

雑種地に地上権が設定されている場合、その利用目的によって、相続税評価額の算定方法が異なる場合があります。
地上権の典型的な設定例としては、都市公園やゴルフ場などの大規模施設があげられます。
こうした施設では、利用対象の土地が広範囲に及ぶため、評価にあたっては、複数の路線価を参照しなければならないケースも少なくありません。
基本的な評価方法は、路線価地域であれば「宅地比準方式」を用い、倍率地域では「近傍宅地単価× 評価倍率」で算出します。

ただし、地形の特殊性や利用制限なども考慮が必要であり、補正率の適用や造成費の控除が重要な要素になります。
さらに、「区分地上権」のように上下で利用空間が異なる特殊な地上権が設定されている場合、その評価はより複雑化します。

たとえば、地下道や立体交差の一部用地に設定されるようなケースでは、地上部分と地下部分の価値を個別に把握しなければならないため、一般的な評価手法では対応できません。
こうした複雑な評価が必要なケースは、相続税に精通した税理士など専門家に相談するとよいでしょう。

詳しくは、こちらの記事もご参照ください。

あわせて読みたい
貸付用雑種地の相続税評価。 計算方法を徹底解説!

貸し付けている雑種地は評価を下げることができますが、貸付状況によって補正計算の仕方が異なります。 評価方法をパターン別に解説します。

雑種地に小規模宅地等の特例を適用するケース

雑種地でも、一定の条件を満たせば「小規模宅地等の特例」が適用され、相続税の評価額を大幅に減額できる可能性があります。
ここでは、その適用条件や注意点について詳しく解説します。

小規模宅地等の特例について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

あわせて読みたい
小規模宅地等の特例とは?土地評価額減額の適用要件と相続税申告手続き

小規模宅地等の特例を利用することで、土地の相続税評価額を最大で8割も下げられる可能性があります。 具体的な適用要件や適用する際の注意点を解説します。

(1)小規模宅地等の特例とは?

「小規模宅地等の特例」とは、被相続人が生前に使用していた土地のうち、一定の要件を満たすものについて、相続税評価額を大幅に軽減できる制度です。

この制度を活用することで、評価額の最大80%を減額できる可能性があります。
軽減される割合は、土地の現況利用の種類によって異なります。
たとえば、居住用の土地(被相続人が住んでいた住宅の敷地)は最大80%、事業用の土地においても最大80%、貸付事業用地については、最大50%の評価減が認められます。
雑種地であっても、利用状況や構造物の有無など一定の要件を満たせば、この特例が適用されるケースがあります。

そのため、対象になるかどうかの判断には、土地の使用実態をしっかり確認する必要があります。

(2)小規模宅地等の特例が適用可能な雑種地の条件

雑種地であっても、一定の利用状況や構造の要件を満たしていれば、「小規模宅地等の特例」が適用される可能性があります。
以下の条件に該当するかどうか確認することが重要です。

小規模宅地等の特例を雑種地で適用するために、特に確認したいこと
  • 雑種地の上に、建物やその他の構築物が存在していること(更地は対象外となる場合があります)
  • その土地が、駐車場業などの「貸付事業用宅地等」として実際に使われていたこと
  • 被相続人自身がその雑種地を事業に使用していたこと(例:自営業の用地として)
  • 相続人が、配偶者または一定の要件を満たす親族であること
  • 配偶者以外の相続人の場合は、相続税申告期限までその土地の利用を継続していること

また、事業用地として適用する場合は、相続後も継続して事業が営まれている必要があります。

面積についても上限があり、居住用地は最大330㎡、事業用地は最大400㎡、貸付用地は200㎡までが特例の対象です。

(3)雑種地に小規模宅地等の特例が適用する場合の注意点

小規模宅地等の特例を雑種地に適用するには、形式的な条件だけでなく、実際の利用状況が明確であることが求められます。
たとえば、相続税の申告期限までに土地を保有していない場合や、事業・貸付行為を継続していない場合は、特例が認められません。

この特例の根拠には、「土地が実質的に事業または居住等の目的に使われていること」があるため、形式的な契約があるだけでは要件として満たされないのです。
また、青空駐車場のように構築物がないケースや、利用実態があいまいな場合も、特例の適用対象から外れる可能性があります。

とくに、「事業用地」としての特例を受けるには、事業の継続性や客観的な使用の証拠(契約書・賃料の受け渡し実績など)が重要となります。
さらに、相続開始前3年以内に新たに貸付事業用地として使用を開始した場合、原則として特例の対象にはなりません。

これは、節税目的で意図的に賃貸として転用されるケースを排除するための制度設計です。
また、親族や知人などに相場より著しく安い賃料で貸している場合には、「相応の対価を得ている」とは認められず、特例の対象外となる場合があります。
最後に、特例の適用面積にも上限があります。
限度面積を超える部分については、減額の対象とはなりませんので、面積の確認も重要です。

まとめ|税理士に相談するメリットと無料相談の活用法

雑種地の相続税評価は、さまざまな要素を考慮しながら行う必要があるため、非常に複雑です。

現況の地目判定や地域区分、評価方式の選定、さらには賃借権や地上権が絡む場合の計算など、専門的な判断が求められる場面は数多く存在します。
適切でない評価によって相続税額が過大となり、必要以上に税負担が増してしまう場合もあります。

一方、過少申告となれば、のちに追徴課税を受けるリスクも生じます。

多雑種地の評価について不安のある方は、専門家への相談をおすすめします。

藤宮 浩(不動産鑑定士)

この記事の監修者

フジ総合グループ代表 藤宮 浩(ふじみや ひろし)|不動産鑑定士
フジ総合グループの代表を務め、年間1,100件以上の相続関連案件の土地評価に携わる。
相続税還付業務の第一人者として各地での講演を多数行うほか、テレビ、雑誌、新聞など、各種媒体への出演、寄稿も行う。
髙原 誠(相続専門の税理士)

この記事の監修者

フジ総合グループ副代表 髙原 誠(たかはら まこと)|税理士
フジ総合グループの副代表を務め、不動産に強い相続専門事務所の代表税理士として、年間約1,100件の相続税申告・減額・還付案件に携わる。
多くの経験とノウハウを活かした相続実務に定評があり、プレジデントや週刊女性など各種媒体への寄稿・取材協力も多数行う。

【無料面談受付中】相続でお悩みの方は

電話アイコン

電話
お問い合わせ

本部・東京事務所《平日9:00-18:00》

0120-95-4834

名古屋事務所《平日9:00-18:00》

0120-94-6121

大阪事務所《平日9:00-18:00》

0120-39-3704