土地収用前に事業の方向性検討を
土地利用の制限が発生 補正率を基に相続税減額
道路や公園など都市施設の整備や市街地の開発を目的として、行政は都市計画を定めます。このとき、「この地域に新たな道路(都市計画道路)を通そう」ということで、自己所有地の一部もしくはすべてが、その開発対象地となることがあります。
都市計画道路予定地の区域内にある土地は、いずれは道路用地として収用されることから、建物の建築に制限が加えられ、「2階建て以下で地階を有しないこと」「主要な構造が木造・鉄骨造・コンクリートブロック造等で容易に移転・除去ができること」といった基準を満たす建物以外、原則として建築が許可されません。
また、都市計画は一般に長期にわたることが多く、計画決定から事業決定、収用されるまで相当の期間を要することから、この間、土地の利用に制限が生じることを考慮し、「その土地が属する地区区分」「その土地の容積率」「道路予定地となる土地の割合」をもとに定められた補正率により、相続税土地評価でも減価を行うこととされています。
なお、相続開始時点で都市計画道路がすでに整備済みである場合には、建築制限が生じないため、評価減は行いません。また、この取扱いは、道路以外の都市計画施設(公園や河川など)でも同様です。
事業着手後は建築不可 補償料は支給される
事業の着手が決まると、対象地には新たに建物を建築することはできません。制限の少ない計画決定段階のうちに、その後の住まいや事業の方向性についても検討しておきましょう。
事業決定後、対象地は事業主体によって収用され、持ち主には補償料が支払われます。補償料は事業主体によって様々ですが、建物が古く通常売買ではほとんど値がつかないような場合でも再建築費用として補償が高額になる場合もあり、この点ではメリットを感じられるでしょう。
『家主と地主』2021年12月号掲載
この記事を書いた人
不動産鑑定士
藤宮 浩(ふじみや・ひろし)
フジ総合グループ 代表
株式会社フジ総合鑑定 代表取締役
フジ総合グループの代表を務め、年間950件以上の相続関連案件の土地評価に携わる。相続税還付業務の第一人者として各地での講演を多数行うほか、各種媒体への出演、寄稿多数。