地主様・不動産オーナー様のための 円満相続コラム

フジ総合グループの代表者5名による
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平成31年度税制改正とインボイス制度

今回は毎年おなじみの税制改正について。平成31年度税制改正等 相続に関わる主な改正項目(抜粋)をまとめました。
節税封じという意味では教育資金贈与が厳しい改正といえます。「相続前3年以内の贈与であっても相続税の課税対象に持ち戻しされない」という点がこの制度の節税対策としての要だったのですが、今後は相続時点の残額が持ち戻しの対象となるケースが出てきます。 また資金の使い道にも制限が加わりました。特に社会人となっている子や孫に贈与する場合は注意です。

教育資金の一括贈与非課税措置の見直し

  • 適用期限を2年延長(2021年3月31日まで)
  • 贈与があった年の前年の合計所得が1,000万円(給与収入のみなら収入金額が1,220万円)を超える受贈者を適用対象から除外(2019年4月1日以後の贈与に適用)
  • 23歳以上の受贈者について、趣味の習い事等の費用を非課税の対象から除外(2019年7月1日以後の支払いに適用)
  • 贈与者の死亡前3年以内に行われた贈与について、死亡日における残高を相続税の課税対象とする。ただし、受贈者が①23歳未満である、②学校等に在学している、③教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講している場合は除く(2019年4月1日以後の相続から適用。ただし同日前に特例を適用したものは除外)
  • 受贈者が30歳に達しても、学校等に在学している場合等には残高に贈与税を課税せず、在学等の期間がなくなった年の年末(40歳に達した場合はその時点)に課税(2019年7月1日以後に30歳に達する場合に適用)

節税封じという意味では教育資金贈与が厳しい改正といえます。「相続前3年以内の贈与であっても相続税の課税対象に持ち戻しされない」という点がこの制度の節税対策としての要だったのですが、今後は相続時点の残額が持ち戻しの対象となるケースが出てきます。
また資金の使い道にも制限が加わりました。特に社会人となっている子や孫に贈与する場合は注意です。

特定事業用宅地等に係る小規模宅地等の特例の見直し

適用時期:2019年4月1日以後の相続等(ただし、同日前から事業の用に供されている宅地等は除外)
相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地等を特例の対象から除外。ただしこのうち、当該宅地等の上で事業に供されている減価償却資産の価額が当該宅地等の相続時の価額の15%以上である場合は特例の対象となる

空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除の拡充

適用時期:2019年4月1日~2023年12月31日の譲渡

  • 適用期限を4年延長
  • 被相続人が老人ホーム等に入所していた場合も、下記の要件を満たす場合は適用対象とする

①被相続人が介護保険法規定の要介護認定等を受け、相続開始直前まで老人ホーム等に入所していたこと
②被相続人の居住用家屋について、被相続人が老人ホーム等に入所した時から相続開始直前まで、被相続人による一定の使用がなされており、事業用・貸付用・被相続人以外の者の居住用に供されたことがないこと

成年年齢引き下げに伴う年齢要件の見直し

適用時期:2022年4月1日以後の相続・贈与等

成年年齢が20歳から18歳に引き下げられたことに伴い、税法上の制度の年齢要件を引き下げる

制度 年齢要件
相続税の未成年者控除 20歳以上 → 18歳未満
相続時精算課税制度直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税の税率の特例非上場株式等に係る贈与税の納税猶予制度 20歳以上 → 18歳以上

 

個人事業者の事業用資産に係る納税猶予制度の創設

適用時期 2019年1月1日~2028年12月31日の相続・贈与等

認定相続人・受贈者が、青色申告の承認を受けていた個人事業者から相続・贈与等により特定事業用資産を取得し、事業を継続していく場合には、担保の提供を条件に、納付すべき税額のうち、その特定事業用資産の課税価格に対応する相続税・贈与税の納税を猶予する

土砂災害特別警戒区域内にある宅地の評価の新設

適用時期 2019年1月1日以後の相続・贈与等

土砂災害防止法により指定された特別警戒区域内(いわゆるレッドゾーン)となる部分を有する宅地について、評価額を減額する規定を新設。その宅地の総地積に対する特別警戒区域内となる部分の地積の割合に応じて、「特別警戒区域補正率」を乗じて評価する

 

 

空き家の譲渡特例まさかの落とし穴

「空き家の譲渡所得の特別控除」は、相続した空き家を売却したときに、譲渡所得から最高3000万円を控除できる特例です。相続開始直前に故人がその家に居住していたことが要件のひとつですが、老人ホームに入所していたケースも多く、これが適用の障害となっていました。今回の改正で、老人ホーム等に入所していた場合でも適用可能となり、より現実に則した形になりました。

ここでは、実務上の落とし穴というべき注意点を紹介します。特例の適用を受けるには、相続開始直前に故人が住んでいたこと、相続の時から譲渡の時まで事業用・貸付用・居住用に使われていたことがないこと等を証明する「被相続人居住用家屋等確認書」の交付を受ける必要があります。そのためには、故人の除票住民票や相続人の住民票、電気やガスの閉栓証明書等を役所に提出しなければなりません。

また、古い家屋を取り壊してから売却するケースでは、取り壊しの時から譲渡の時までの敷地の使用状況がわかる写真も必要となります。
しかし、確定申告を税理士に依頼するのは譲渡の後が多いものです。例えば4月に売却し12月に申告を依頼した場合、税理士が特例の適用を判断する時点ですでに土地が譲渡されており、写真が揃えられない可能性があります。あるいは相続後すぐ依頼していたとしても、更地の写真が必要なことに思い至らず、気がついたときには遅いということも…。そんなことのないよう、注意してください。

本当は怖い(?)インボイス制度の導入

この原稿を書いている時点では流動的ですが、消費税率の引き上げも目前です。需要変動への対応策として、住宅ローン控除の拡充や自動車減税なども盛り込まれています。
今年の改正項目ではありませんが、消費税の軽減税率の実施に伴い、インボイス制度(適格請求書等保存方式)が導入されます(2023年10月より本格導入)。これには事業用の貸付で賃料収入を得ている地主さん家主さん(毎年の消費税を申告している方)も注意が必要です。

消費税の課税事業者が納付すべき消費税額は、売上として預かった消費税額から、仕入れや経費のために自らが支払った消費税額(仕入控除税額)を差し引いた額になります。
従来は、一定の帳簿や請求書等を保存しておけば、税率が明記されていなくても支払った消費税を控除することができました(請求書等保存方式)。いわば性善説に立っていたわけです。ところが軽減税率が導入されると税率が8%の場合と10%の場合が出てきます。そうなると性善説では立ち行かないと思ったのか、どちらかといえば性悪説に立つインボイス制度の導入となりました。

この制度の下では、買い手は「適格請求書(インボイス)」を保存しておかなければ仕入税額控除が認められません。適格請求書とは、売り手が買い手に対して正確な適用税率や税額を伝えるための一定の事項が記載された請求書等の書類です。問題は、それを発行できるのが「登録された課税事業者(適格請求書発行事業者)だけ」という点です。
消費税を納める義務のない事業者(免税事業者)は適格請求書を発行できません。つまり、免税事業者に支払った消費税は仕入税額控除ができないことになります※。賃貸経営者であれば、例えばリフォーム工事を発注する際、依頼先が発行事業者なのかどうかを気にする必要が出てきます。金額に差がなければ発行事業者との取引が優先されるでしょうから、請け負う側の免税事業者にとっては死活問題です。あえて課税事業者になり登録を受けるという選択肢もありえるでしょう。

小規模の資産管理会社(同族会社)を作って個人資産の管理をしている方も影響を受けそうです。会社に支払う管理費にかかる消費税を控除しようとすれば、会社を発行事業者にする必要があるからです。
なお、19年10月から23年9月までは経過措置として「区分記載請求書等保存方式」が導入されます。いずれインボイス制度に移行するにあたり、システム改修や業務フローの見直しに時間がかかることが予想されますので、心構えと着実な準備をしておいた方がよさそうです。

この記事を書いた人

税理士
髙原 誠(たかはら・まこと)

フジ相続税理士法人 代表社員

東京都出身。平成17年 税理士登録、平成18年 フジ相続税理士法人設立。
相続に特化した専門事務所の代表税理士として、不動産評価部門の株式会社フジ総合鑑定とともに、年間約800件の相続税申告・減額・還付案件に携わる。
不動産・保険等への造詣を生かした相続実務に定評があり、プレジデントや週刊女性など各種媒体への寄稿・取材協力も多数行う。
平成26年1月に藤宮浩(株式会社フジ総合鑑定 代表)との共著となる初の単行本『あなたの相続税は戻ってきます』(現代書林)を出版。
平成27年7月に第2弾となる『日本一前向きな相続対策の本』(現代書林)を出版。
平成30年4月に第3弾となる「相続税を納め過ぎないための土地評価の本」(現代書林)を出版。