地主様・不動産オーナー様のための 相続税土地評価コラム

個別性の強い土地の評価について、
評価方法や注意点をイラストを使用して
わかりやすく解説します。

文化財建造物の建物評価と土地評価方法を詳しく解説!

文化財建造物に指定されている建物や、文化財建造物の敷地として利用している土地は、個別に評価方法が定められています。

文化財建造物の種類によっても評価方法は異なりますので、本記事で文化財建造物である家屋および、その敷地として利用されている宅地の評価方法をご確認ください。

目次

文化財建造物とは

文化財建造物は、日本の歴史・芸術・学術上価値の高いものを総称した「有形文化財」の中で、建造物に該当する財産です。

文化財にも種類があり、たとえば有形文化財の中で重要なものは「重要文化財」に指定され、世界文化の見地から特に価値の高い財産については「国宝」に指定してされています。

相続税評価額を計算する際に用いる財産評価基本通達では、「重要文化財」・「登録有形文化財」・「伝統的建造物」に関する評価方法が明記されており、都道府県などが指定している建造物やその敷地についても個別に評価方法が示されています。

重要文化財の評価のしかた

「重要文化財」は、文化財保護法第27条の規定により指定された財産です。

 

重要文化財の建物評価方法

重要文化財の建物評価は、建物が重要文化財でないとした場合の価額から70%減額した金額です。

重要文化財の建物に固定資産税評価額が付されている場合は、固定資産税評価額が「重要文化財でないものとした場合の価額」です。

一方、固定資産税評価額が付されていない建物については、重要文化財の再建築価額から、経過年数に応ずる減価の額(減価償却費)を控除した価額の70%に相当する金額を、「重要文化財でないものとした場合の価額」とします。

「再建築価額」は、課税時期において評価対象財産を新たに建築する際に要する費用の合計金額をいい、減価償却費は次の計算式より算出します。

経過年数に応ずる減価の額の計算式

再建築価額×0.9×経過年数=減価償却費
※1年未満の端数がある場合については、端数を1年とします。

 

重要文化財建造物である家屋の敷地の用に供されている宅地の評価方法

所有権を有している不動産は、通常所有者が自由に使用・処分できます。

しかし重要文化財建造物およびその敷地は、所有権を有していても文化財保護法による強い規制がかかっており、現状のままでしか使うことはできません。

また将来的にも限定的な利用しかできないことから、重要文化財建造物の敷地は減額補正の対象となります。

重要文化財建造物の敷地の計算式

A−(A×70%)=重要文化財建造物の敷地の評価額
A:重要文化財建造物の敷地でないものとした場合の価額

登録有形文化財の評価のしかた

「登録有形文化財」は、文化財保護法第58条の対象となった財産をいいます。

 

登録有形文化財の建物評価方法

登録有形文化財の建物評価は、建物が登録有形文化財でないとした場合の価額から30%減額した金額です。

登録有形文化財の建物に固定資産税評価額が付されている場合、固定資産税評価額が「登録有形文化財でないものとした場合の価額」です。

一方、固定資産税評価額が付されていない建物については、登録有形文化財の再建築価額から、経過年数に応ずる減価の額(減価償却費)を控除した価額の70%に相当する金額を、「登録有形文化財でないものとした場合の価額」とします。

「再建築価額」は、課税時期において評価対象財産を新たに建築する際に要する費用の合計金額をいい、減価償却費は次の計算式により算出します。

経過年数に応ずる減価の額の計算式

再建築価額×0.9×経過年数=減価償却費
※1年未満の端数がある場合については、端数を1年とします。

 

登録有形文化財である家屋の敷地の用に供されている宅地の評価方法

登録有形文化財の現状変更を行う場合、現状を変更する日の30日前までに文化庁長官へ届出が必要となるなど、土地・建物の利用用途に制限がかかっています。

(登録当時の現状の通常望見できる外観を損なう範囲が、4分の1以下である場合には届出は不要です。)

登録有形文化財に関する利用制限は、「区分地上権に準ずる地役権の評価」(財産評価基本通達27-5)における、家屋の構造・用途等に制限を受ける場合と類似しているため、同通達の内容に従って評価額を算出します。

登録有形文化財の敷地の計算式

B−(B×30%)=登録有形文化財の敷地の評価額
B:登録有形文化財の敷地でないものとした場合の価額

伝統的建物の評価のしかた

「伝統的建造物」は、文化財保護法第143条の対象となった構造物をいいます。

 

伝統的建物の建物評価方法

伝統的建物の建物評価は、建物が伝統的建物でないとした場合の価額から30%減額した金額です。

伝統的建物の建物に固定資産税評価額が付されている場合は、固定資産税評価額が「伝統的建物でないものとした場合の価額」です。

一方、固定資産税評価額が付されていない建物については、伝統的建物の再建築価額から、経過年数に応ずる減価の額(減価償却費)を控除した価額の70%に相当する金額を、「伝統的建物でないものとした場合の価額」とします。

「再建築価額」は、課税時期において評価対象財産を新たに建築する際に要する費用の合計金額をいい、減価償却費は次の計算式で算出します。

経過年数に応ずる減価の額の計算式

再建築価額×0.9×経過年数に応ずる減価=減価償却費
※1年未満の端数がある場合については、端数を1年とします。

 

伝統的建造物群保存地区内にある家屋の敷地の用に供されている宅地の評価方法

「伝統的建造物群保存地区制度」は、伝統的建造物群の外観上に認められる位置・規模・形態・意匠・色彩等の特性を、その周囲の環境と併せて保存することを目的とした制度です。

国は市町村からの申出を受け、日本に価値が高いと判断した建物等を「重要伝統的建造物群保存地区」に選定します。

対象地域内の建物を改修する場合、外観上の変更が主な改修の対象となっています。

(建物内部のように道路から見えない部分の変更については、許可を受ける必要がないとされています。)

登録有形文化財と同様、利用用途等の制限を受けていますので、相続税評価においては減額補正の対象です。

伝統的建造物の敷地の計算式

C−(C×30%)=伝統的建造物の敷地の評価額
C:伝統的建造物でないものとした場合の価額

風景地保護協定が存在する土地の評価のしかた

風景地保護協定制度とは

風景地保護協定制度は、土地所有者等との間で風景地の保護のための管理に関する協定を締結し、土地所有者等に代わり風景地の管理を行う制度です。

保護対象となるのは、国立・国定公園内の自然の風景地について土地所有者等による管理が不十分であると認められるケース等で、環境大臣・地方公共団体または自然公園法第49条の規定に基づく公園管理団体が管理を行うことになります。

また都道府県立自然公園においても、自然公園法第74条により風景地保護協定を締結することができる旨を、条例で定めることが可能とされています。

 

風景地保護協定が締結されている土地の評価

風景地保護協定が締結されている土地は、風景地保護協定区域内の土地でないものとして財産評価基本通達の定めにより評価した価額から、20%減額した金額を評価額とします。

補正計算を適用できるのは、以下の要件をすべて満たし、相続税の申告書を提出する際に一定の書類を添付した場合に限られます。

<適用要件>
  • 自然公園法第43条第1項に規定する風景地保護協定区域内の土地であること
  • 風景地保護協定に次の事項が定められていること
    • 貸付けの期間が20年
    • 正当な事由がない限り貸付けは更新する
    • 土地所有者は貸付けの期間の中途において正当な事由がない限り、土地の返還を求めることはできない

景観重要建造物である家屋および敷地の評価のしかた

景観重要建造物とは

景観重要建造物は、地域の自然・歴史・文化等からみて、建造物の外観が景観上の特徴を有し、地域の景観形成に重要なものを景観法第19条の規定に基づき指定している建物です。

景観重要建造物の指定を受けた建造物は、原則として景観行政団体の長の許可を受けなければ増築・改築・移転・除却はできず、外観を変更することとなる修繕や模様替え、色彩の変更もできません。

そのため相続税評価額の計算において、景観重要建造物である家屋と敷地には減額補正を行います。

 

景観重要建造物の建物評価方法

景観重要建造物は、伝統的建造物と同程度の法的規制、利用制限を受けることとなりますので、景観重要建造物でないとした場合の価額から、30%を減額した金額を評価額とします。

 

景観重要建造物の敷地の用に供されている宅地の評価方法

景観重要建造物の敷地については、伝統的建造物群保存地区内である家屋の敷地と同程度の法的規制、利用制限を受けることとなります。

したがって景観重要建造物の敷地の評価額でないとした場合の価額から、30%を減額した金額が相続税評価額です。

歴史的風致形成建造物である家屋および敷地の評価方法

歴史的風致形成建造物とは

歴史的風致形成建造物は、認定歴史的風致維持向上計画に記載された重点区域内の歴史上価値の高い重要無形文化財または、重要無形民俗文化財の用に供されることによりそれらの価値の形成に寄与している建造物、その他の地域の歴史的な建造物をいいます。

現に認定重点区域における歴史的風致を形成し、その歴史的風致の維持および向上のために、その保全を図る必要があると認められるものが歴史的風致形成建造物の対象です。

指定を受けた建造物については、増築・改築・移転・除却する際、原則として増築等に着手する日の30日前までに市町村長へ届出が必要です。

 

歴史的風致形成建造物の建物評価方法

歴史的風致形成建造物の修繕等を行う際は事前届け出が必要であるなど、登録有形文化財と同程度の法的規制、利用制限を受けることとなります。

そのため歴史的風致形成建造物の相続税評価額は、歴史的風致形成建造物でないとした場合の価額から、30%減額した金額を評価額とします。

 

歴史的風致形成建造物の敷地の用に供されている宅地の評価方法

歴史的風致形成建造物の敷地についても、登録有形文化財の敷地と同程度の法的規制、利用制限を受けることとなります。

そのため歴史的風致形成建造物の敷地の評価額でないとした場合の価額から、30%減額した金額が相続税評価額です。

文化財建造物と一体利用している土地の評価方法

文化財建造物である家屋の敷地とともに、文化財建造物である家屋と一体をなして価値を形成している土地がある場合、文化財建造物の種類に応じた方法により評価します。

たとえば重要文化財に指定されているのが本殿のみであっても、本殿と参道が一体となって価値を形成している場合には、参道も重要文化財建造物である家屋の敷地の用に供されている宅地として、70%の減額補正の対象です。

また文化財建造物である家屋と一体をなして価値を形成しているのが山林の場合には、山林評価額を算出後に文化財建造物の種類に応じた補正計算を行います。

まとめ

相続財産に文化財建造物の家屋や敷地がある場合、重要文化財など指定されている種類によって評価額の補正内容が異なります。

税務署は相続税を過少申告した際は指摘しますが、過大に納めた場合には教えてはくれません。

また文化財建造物に固定資産税評価額が付されてない場合には、文化財建造物の再建築価額から金額を算出しなければならず、土地の計算に際しては専門知識が必要です。

これらの補正計算等を相続人の方々だけで行うのは困難ですので、相続税の計算や節税方法についてお困りの際は、相続税専門の税理士へご相談ください。

この記事を書いた人

藤宮浩

フジ総合グループ 代表
不動産鑑定士
藤宮 浩(ふじみや・ひろし)

株式会社フジ総合鑑定 代表取締役
フジ総合グループの代表を務め、年間950件以上の相続関連案件の土地評価に携わる。相続税還付業務の第一人者として各地での講演を多数行うほか、各種媒体への出演、寄稿多数。