地主様・不動産オーナー様のための 相続税土地評価コラム

個別性の強い土地の評価について、
評価方法や注意点をイラストを使用して
わかりやすく解説します。

貸家建付地の相続税土地評価。計算方法と間違えやすいポイント

この記事で分かること
・貸家建付地とは(貸家建付地の基本)
・貸家建付地を相続税評価する際に注意すべきポイント
・空室があるときの評価方法
・貸家建付地の相続税評価額の計算例4つ
・貸家建付地を申告する際に必要な書類や確認事項

賃貸アパートや賃貸マンションの敷地として利用している土地は、貸家建付地評価の対象です。
貸家建付地に該当すれば、相続税評価額を減額できるため、相続税を節税することが可能です。
しかし賃貸建物の敷地として利用している土地すべてが、貸家建付地として評価できるわけではありませんので、評価方法と計算する際の注意点について解説します。

目次

貸家建付地とは

貸家建付地は、自身が所有する賃貸物件の敷地として利用している土地をいいます。

土地を他人へ貸している場合には「貸宅地」に該当しますが、土地建物を所有している人が建物を貸付アパートや貸付マンションとして貸し付けている場合には、「貸家建付地」に該当します。

貸宅地と貸家建付地では、土地の評価額の計算方法が異なりますのでご注意ください。

貸宅地は土地自体を貸し付けるため、土地所有者は土地を自由に使用することが困難になることから、借地権相当額を相続税評価額から減額することができます。

貸家建付地も貸し付けることにより土地の利用が制限されますが、貸宅地よりも制限される範囲が狭いため、減額される割合は小さくなります。

貸宅地と貸家建付地は混同しやすく、評価誤りにより税務署から指摘を受けやすいので、相続税評価額を計算する際は、必ず土地の利用用途を確認してください。

貸家建付地として相続税評価を行うための要件は下記になります。

 

「貸家建付地」として評価するための要件①土地の上に建物があること

前提として、土地の上に賃貸アパート等の建物が建っている必要があります。厳密に言うと、亡くなった方が所有していた土地及び建物があり、その建物を人に貸している状態の土地のことを「貸家建付地」といいます。

 

「貸家建付地」として評価するための要件②貸し付けている賃料が世間相場並みであること

被相続人が所有するマンションの一室に子を住まわせている場合など、賃料を一般的な額よりも少額に設定したり、無償で貸し付けている場合などは貸家建付地としてみなされません。

貸家建付地として評価するには、賃料を世間一般の相場並みにしておく必要があります。

貸家建付地の相続税評価額の計算方法

貸家建付地の評価方法は、次の計算式により算出します。

貸家建付地評価額の計算式

自用地評価額-(自用地評価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合)=貸家建付地評価額

 

自用地評価額とは

評価対象地が更地だった場合における評価額のことです。貸家建付地の土地を評価する際の基本となる価額であり、自用地評価額を算出しないと、貸家建付地評価額は計算できません。

 

借地権割合とは

30%~90%の間で設定されています。割合は地域によって異なりますが、60~70%の地域が多くなっています。

路線価図(路線価横のA~Gのアルファベット)や評価倍率表で確認することができます。

たとえば路線価図であれば、路線価の末尾のアルファベットが借地権割合を示しており、下図の道路に設定されている路線価「260D」は、1㎡26万円、借地権割合60%を意味します。

借家権割合(しゃくやけんわりあい)とは

割合は全国一律30%に設定されています。

 

賃貸割合とは

賃貸物件のうち実際に他人に貸し付けている割合をいい、賃貸割合は部屋数ではなく床面積で判断します。

満室であれば100%、すべて空室であれば0%になります。

貸付物件に空室がある場合、空室部分の面積は貸家建付地評価をすることができませんので、相続開始時点の入居割合も相続税評価額に影響します。

 

貸家建付地の相続税評価の計算例

自用地評価額-(自用地評価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合)=貸家建付地評価額
※借家権割合は全国一律30%

例1)
・自用地評価額 3000万円
・借地権割合  30%
・入居率    50%

3000万円-(3000万円×0.3×0.3×0.5)=2865万円

例2)
・自用地評価額 3000万円
・借地権割合  60%
・入居率    100%

3000万円-(3000万円×0.6×0.3×1)=2460万円

貸家建付地を評価する際に注意すべきポイント

貸付物件の敷地として利用していても、貸付状況によっては貸家建付地として評価できないケースもあります。

 

無償貸付は貸家建付地評価の対象外

賃貸物件の貸付方法には、有償・無償の2パターンあります。

有償は貸した相手から賃料をもらう一般的なケースで、民法では有償で貸すことを「賃貸借」といいます。

賃貸アパートなどの敷地として使用している土地は、原則、貸家建付地評価の対象です。

一方、賃料をもらわず無償で貸し付けることを「使用貸借」といいます。、この場合は、貸付用の敷地として利用していても、貸家建付地の評価は認められず、自用地として評価しなければなりません。

また貸付物件の一室を所有者の自宅として利用していれば、その部分の面積は賃貸割合から除いて、貸家建付地評価をすることになります。

 

空室部分が存在する貸家の評価方法

貸家建付地の評価には空室の有無が大きく関わってきます。建物全体を賃貸物件として利用していても、相続開始時点で空室があれば、空室部分は貸家建付地の対象外となります。空室が少ないほど評価額が下がるため、節税を考えるのであれば、可能な限り満室状態を維持することに努めましょう。

しかし空室がある場合でも、貸付業を継続的に行い、相続開始時点の空室が一時的なものであると認められる場合には、空室部分も貸家建付地として評価することが可能です。

賃貸事業を継続的に行い、相続開始時点で一時的に賃貸されていなかったと認められるケースについては、次の事実関係を総合的に勘案して判断します。

<空室部分を貸家建付地評価するための判断要素>
・課税時期前から継続的に賃貸していた
・賃借人の退去した後、すぐに新たな賃借人の募集をしている
・空室の期間中に、他の用途として使用していない
・空室期間が相続開始前後1か月など、一時的なものだった
・課税時期後の賃貸が一時的なものではない

 

相続開始時点で空室であっても、空室となった直後から不動産業者を通じて新規の入居者を募集し、いつでも入居可能なように空室を管理している状態で相続が発生した場合には、空室部分も貸家建付地として評価できる可能性があります。

しかし入居者募集をしていても、空室期間が1年以上の長期間であったり、貸家建付地評価をするために一時的に賃貸物件として利用していたとみなされた場合、貸家建付地として評価するのは難しくなります。

 

親族に低額で貸し付けている場合

親族を賃貸物件に住まわせている場合、他の入居者よりも賃料を低く設定していることがあります。被相続人が所有するマンションの一室を子に低額で賃貸しているケースなどはよくみられます。

親族に貸し付けている場合でも、他の人と同等の家賃を受け取っていれば問題ないのですが、

賃料が周辺地域の相場よりも低い場合には、貸家建付地としての評価が認められない場合もあります。

 

貸付物件に付随する貸付駐車場の評価方法

土地を評価する場合は、利用区分ごとに分けて評価します。

土地を賃貸アパートと貸付駐車場の敷地として利用している場合は、土地全体ではなく、賃貸アパートと貸付駐車場に区分して評価するのが原則です。

しかし貸付物件の敷地内にある駐車場で入居者が駐車代を支払って使用している場合、建物の駐車場の貸付状況が一体であると認められるときは、利用単位を同一として敷地全体を貸家建付地として評価することが可能です。

賃貸マンションと貸駐車場をひとつの土地と考えて、全体を「貸家建付地」として評価した事例をご紹介

【事例】駐車場とマンションを一体に。「貸家建付地」として評価減

 

貸付物件を建築途中に相続が開始した場合

土地の利用区分は、相続開始時点の状況で判断します。

貸付物件を建築している途中で相続が発生した場合、相続開始時点で建物は貸付用として利用していません。

そのため土地は貸家建付地ではなく、自用地として計算することになります。

ただし次のような場合には貸家建付地評価を行うことが認められる場合があります。

・建て替え建築中の場合、建て替え前の賃借人が建て替え後の建物に入居することになっている
・立ち退き料などの支払いはしていない
・敷金等の支払いがあり、賃貸借契約が成立している

貸付物件が住居用の場合にはあまり該当しないかもしれませんが、ご検討ください。

貸家建付地の相続税評価額の計算例

貸家建付地の相続税評価額の計算方法を、設例を交えて解説いたします。

 

設例1:貸付アパートの敷地として使用しているケース

<計算式>
〇自用地評価額の計算
100,000円×0.97(※1)=97,000円
97,000円×375㎡=36,375,000円
※1 奥行価格補正率
〇貸家建付地評価額の計算
36,375,000円×(1-0.6×0.3×100%(※2))=29,827,500円
※2 1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合

貸家建付地を評価する場合、最初に自用地評価額を計算します。

自用地評価額は路線価に面積を乗じて算出しますが、土地の形状によって補正計算が必要です。

設例1の場合、奥行距離が25mありますので、路線価に奥行価格補正率0.97を乗じて自用地評価額を計算します。

算出した自用地評価額から、借地権割合と借家権割合を乗じた分の権利割合を控除した金額が貸家建付地評価となります。

 

設例2:貸付アパートの一部に空室があるケース

<計算式>
〇自用地評価額の計算
100,000円×0.97(※1)=97,000円
97,000円×375㎡=36,375,000円
※1 奥行価格補正率
〇貸家建付地評価額の計算
36,375,000円×(1-0.6×0.3×100%(※2))=31,791,750円
※2 1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合

基本的な計算の流れは設例1と同じですが、設例2は賃貸割合が70%です。

貸家建付地評価は実際に貸し付けている部分のみが対象となりますので、30%の空室部分は自用地として評価しなければなりません。

したがって設例1と自用地評価額が同じであっても、相続税評価額は設例2の方が高くなります。

 

設例3:貸付アパートに貸付駐車場が付属しているケース

<計算式>
〇自用地評価額の計算
100,000円×0.97(※1)=97,000円
97,000円×375㎡=36,375,000円
※1 奥行価格補正率
〇貸家建付地評価額の計算
36,375,000円×(1-0.6×0.3×1.0(※2))=29,827,500円
※2 1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合

相続税で土地を評価する場合、土地の利用区分ごとに分けて計算するのが原則です。

貸付アパートと貸付駐車場が隣接している場合、通常は個々に評価することになりますが、設例3の貸付駐車場は貸付アパートの住民が利用する駐車場として利用しているため、土地全体を一体として評価します。

そのため貸付駐車場として利用している部分も、貸家建付地として評価額を計算します。

 

設例4:土地所有者と建物所有者の持分が異なるケース

<計算式>
〇自用地評価額の計算
100,000円×0.97(※1)=97,000円
97,000円×375㎡=36,375,000円
※1 奥行価格補正率
〇貸家建付地評価額の計算
・被相続人の建物に対応する部分
36,375,000円×60%=21,825,000円
21,825,000円×(1-0.6×0.3×100%(※2))=17,896,500円
・子の建物に対応する部分
36,375,000円×40%=14,550,000円
14,550,000円×(1-0.6×0.3×100%(※2))=11,931,000円
・土地全体の評価額
17,896,000円+11,931,000円=29,827,000円
※2 1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合

貸家建付地評価は、土地所有者が所有している建物を他人に貸している際に適用される評価方法です。

設例4では建物を被相続人と子が持分保有しており、子は被相続人から土地を無償で借りています。

使用貸借の場合、土地は自用地評価となりますので、被相続人が保有している建物部分は貸家建付地、子が保有している土地は自用地として評価額を計算します。

貸家建付地を申告する際の必要書類・確認事項

貸付状況が確認できる書類を申告書に添付すること

貸家建付地評価を行う場合には、土地を貸付物件の敷地として利用していることがわかる書類を相続税の申告書に添付してください。

貸家建付地評価は特例制度と異なり、関連書類の添付義務はありません。

しかし貸付事実が確認できない場合、税務署は貸家建付地評価が適正であるかどうかを確認するために、税務調査を実施することもあります。

そのため関係書類として、賃貸借契約書や所得税の青色決算書(収支内訳書)などを申告書に添付するのが一般的です。

 

一時的な空室は物的証拠を提示して証明すること

貸家建付地評価を行える空室の具体的な期間の定めはありませんので、空室が数か月間継続していても貸家建付地評価が認められる場合もあります。

ただし、口頭での説明では否認される可能性があるため、物的証拠を提示できるようにしてください。

たとえば空室になる前の貸付時期がわかる賃貸契約書や、入居者募集を広告している不動産業者のチラシやホームページなどの資料が物的証拠となります。

なお相続開始後に貸付事業を廃業したり、募集広告を行っていないなど事業継続の意思が認められない場合には、空室期間が短くても貸家建付地評価が否認されることもあるのでご注意ください。

 

小規模宅地等の特例は単価の高い土地から適用すること

小規模宅地等の特例とは、「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例」のことです。対象となるのは、特定事業用宅地等、特定同族会社事業用宅地等、特定居住用宅地等および貸付事業用宅地等のいずれかに該当するものであるとされており、貸家建付地評価の対象となった土地の相続税評価でもこの特例を適用することができます。

小規模宅地等については、相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上、次の表に掲げる区分ごとに一定の割合を減額します。

〈小規模宅地等の特例の要件・減額割合・限度面積〉

相続開始の直前における宅地等の利用区分 要件 限度面積 減額される割合
被相続人等の事業の用に供されていた宅地等 貸付事業以外の事業用の宅地等 特定事業用宅地等に該当する宅地等 400平方メートル 80%
貸付事業用の宅地等 一定の法人に貸し付けられ、その法人の事業(貸付事業を除きます。)用の宅地等 特定同族会社事業用宅地等に該当する宅地等 400平方メートル 80%
貸付事業用宅地等に該当する宅地等 200平方メートル 50%
一定の法人に貸し付けられ、その法人の貸付事業用の宅地等 貸付事業用宅地等に該当する宅地等 200平方メートル 50%
被相続人等の貸付事業用の宅地等 貸付事業用宅地等に該当する宅地等 200平方メートル 50%
被相続人等の居住の用に供されていた宅地等 特定居住用宅地等に該当する宅地等 330平方メートル 80%

特例の適用を選択する宅地等が以下のいずれに該当するかに応じて、限度面積を判定します。

特例の適用を選択する宅地等 限度面積
特定事業用等宅地等(①または②)および特定居住用等宅地等(⑥)
(貸付事業用宅地等がない場合)
(①+②)≦400㎡
⑥≦330㎡
両方を選択する場合は、合計730㎡
貸付事業用宅地等(③、④または⑤)およびそれ以外の宅地等(①、②または⑥)
(貸付事業用宅地等がある場合)
(①+②)×200/400+⑥×200/330 +(③+④+⑤)≦200㎡

特例の適用を選択する宅地等が以下のいずれに該当するかに応じて、限度面積を判定します。

参考:相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)┃国税庁

 

上記の表の通り、「貸付事業用宅地等」として面積200㎡まで、評価額を50%減額することができます。

小規模宅地等の特例は、要件を満たしていれば複数の土地に対して適用できますが、限度面積があるため、複数の土地が特例要件を満たす際は、適用する土地の優先順位を付けなければなりません。

小規模宅地等の特例は、1㎡当たりの単価が高い土地に適用した方が節税効果を見込めますので、貸付不動産を複数有している場合には評価額を比較してください。

「貸家建付地の評価」で相続税を減額した事例

事例1:駐車場とマンションを一体に。「貸家建付地」として評価減┃相続税申告

評価対象地は、貸駐車場が賃貸マンションと接続しており、駐車場の利用者が賃貸マンションの利用者のみで構成されていました。通常、月極駐車場など、貸駐車場の用に供されている土地は、「自用地」として評価することが原則ですが、駐車場の貸し付け状況は、賃貸不動産の賃貸借と事実上、一体のものであると考えられるため、賃貸不動産の敷地と駐車場をひとつの土地と考えて、全体を「貸家建付地」として評価。評価額が下がり、相続税を減額した事例です。

「貸家建付地の評価」で相続税を減額した事例

 

事例2:隣接する土地を一体評価し「貸家建付地」の補正を適用。740万円が還付に┃相続税還付

評価対象地は複数の店舗が長屋式に入っている貸家の敷地A。隣接する土地Bは店舗のお客様専用駐車場として利用されていました。この場合には2つの土地を一体評価した上で、B土地には「貸家建付地」としての補正を、A土地には「貸家建付借地権」としての補正を面積按分してそれぞれに行います。駐車場部分には建物は建っていませんが、「貸家」の敷地であることには変わりないことから「貸家建付地」としての評価が認められた事例です。

「貸家建付地の評価」で相続税を減額した事例

まとめ

貸家建付地は自用地よりも評価額が下がりますが、貸付物件に空室があったり、無償で親族へ貸し付けているなどの場合には、貸家建付地評価ができないケースもあります。

土地は相続財産の中で占める割合が高く、土地の評価一つで相続税の納税額が数十万円、数百万円増減することもめずらしくありません。

申告誤りを指摘されれば、多額の追徴課税を支払うことにもなりかねませんので、貸付物件を保有している際は、土地評価に精通している税理士に相談して適切な評価額を算出してください。

この記事を書いた人

藤宮浩

フジ総合グループ 代表
不動産鑑定士
藤宮 浩(ふじみや・ひろし)

株式会社フジ総合鑑定 代表取締役
フジ総合グループの代表を務め、年間950件以上の相続関連案件の土地評価に携わる。相続税還付業務の第一人者として各地での講演を多数行うほか、各種媒体への出演、寄稿多数。