自宅やアパートの敷地として利用している土地は「宅地」ですが、建物以外の構築物の敷地として利用している土地は「雑種地」に分類されます。
貸し付けている雑種地は減額補正を適用することができ、貸付状況によって補正計算の仕方は異なりますので、本記事で貸付用雑種地の評価方法をご確認ください。
もくじ
雑種地とは
土地の相続税評価額を計算する場合、最初に評価対象地の地目を確認する必要があります。
土地の地目は相続開始時点の状況で判断する
土地の地目は9種類に分類され、雑種地は地目区分の一つです。
登記上の地目と相続開始時点の土地の状況が違う場合、現況の土地にあった地目に基づいて評価することになります。
相続税評価額を計算する際の土地の地目は雑種地を含めて9種類存在し、どの地目にも該当しなかった土地が雑種地に分類されます。
<土地の地目の種類>
地目 | 対象となる土地の状況 |
宅地 | 建物の敷地として利用する土地 |
田 | 農耕地で用水を利用して耕作する土地 |
畑 | 農耕地で用水を利用せずに耕作する土地 |
山林 | 耕作の方法によらないで竹木の生育する土地 |
原野 | 耕作の方法によらないで雑草、かん木類の生育する土地 |
牧場 | 家畜を放牧する土地 |
池沼 | かんがい用水でない水の貯留池 |
鉱泉地 | 鉱泉の湧出口及びその維持に必要な土地 |
雑種地 | 以上のいずれにも該当しない土地 |
雑種地に区分される土地の種類と評価する際の特徴
雑種地に該当する具体的な土地の種類としては、宅地に該当しない駐車場や、ゴルフ場、遊園地、運動場、鉄軌道等の用地などがあります。
雑種地の評価は、一団の雑種地を一括りにして評価し、2筆以上に分かれている土地であっても、一体として利用している場合には原則まとめて評価することになります。
雑種地以外の地目については、基本的な評価額の計算方法は地目ごとで変わりありません。
しかし雑種地は他の地目に該当しなかった土地が対象となっている地目なので、雑種地の中でも評価方法は土地ごとに違うこともあります。
貸付用雑種地として評価する土地の種類
貸付用の雑種地とは、所有者が賃料を対価として貸し付けている土地をいいます。
賃料を得ずに無償で貸し付けていたり、賃料が固定資産税相当と少額の場合には、貸付用の雑種地には該当せず、自用地として雑種地の評価額を計算することになります。
貸付用雑種地に該当するのは、次の用途で使用している土地です。
<貸付用雑種地に該当する主な土地>
- 資材置き場
- 貸付駐車場
- ゴルフ場(練習場含む)
- 学校の校庭
- 公園
- 自動車教習所
- 中古車展示場
雑種地の評価方法
貸付用の雑種地評価額を計算するためには、自用地の雑種地評価額と賃借権等の評価額を算出する必要があります。
自用地として使用している雑種地の評価方法
雑種地の相続税評価額は、評価対象地と状況が類似する付近の土地の1㎡当たりの評価額をベースとして計算します。
周囲の土地が住宅地であれば、宅地を基準として雑種地評価額を計算することになりますし、山林が近くにあれば山林の評価額を基に計算しなければなりません。
路線価が設定されている地域であれば、路線価の金額から雑種地との位置、形状等の補正計算を行い、雑種地の面積を乗じて評価額を算出します。
一方、路線価が設定されていない地域の場合、雑種地に類似する土地の固定資産税評価額をベースに計算するため、固定資産税評価額を調べなければなりません。
雑種地が類似する土地が宅地であれば、近傍宅地の固定資産税評価額を確認する必要があり、地目によって1㎡あたりの固定資産税評価額は大きく異なるため、類似する地目の判断は重要です。
なお倍率地域にある土地は、通常固定資産税評価額に評価倍率を乗じるだけで算出できるようになっていますが、雑種地については補正計算が必要になりますのでご注意ください。
貸し付けられている雑種地の評価方法
貸し付けている雑種地は、自用地の雑種地評価額から賃借権等の金額を控除して算出します。
賃借権等の金額は、賃借権や地上権など貸し付けられている状況によって評価方法が異なりますので、貸付用雑種地を評価する際は、雑種地に設定されている賃借権等の種類を確認して評価額を算出してください。
賃借権および賃借権の目的となっている雑種地の評価額の計算方法
賃借権自体の評価額の算出方法と、賃借権の目的となっている雑種地の評価方法は異なる点があります。
賃借権の評価方法
賃借権の評価額は、賃貸借契約の内容や利用状況などから評定した価額を評価額とするのが原則です。
しかし次の区分により計算した価額を、賃借権の評価額とすることも可能です。
自用地評価額×A=地上権に準ずる賃借権の評価額
A:「法定地上権割合」と「借地権割合」のいずれか低い割合
地上権に準ずる権利として評価することが相当と認められる賃借権の価額は、雑種地の自用地評価額に法定地上権割合と借地権割合のいずれか低い割合を乗じた金額です。
「地上権に準ずる権利として評価することが相当と認められる賃借権」には、賃借権の登記がされているものや、設定の対価として権利金その他の一時金の授受のあるもの、堅固な構築物の所有を目的とするものなどが該当します。
法定地上権割合は、契約の残存期間で判断します。
<法定地上権割合>
残存期間 | 法定地上権割合 |
10年以下 | 5% |
10年超~15年以下 | 10% |
15年超~20年以下 | 20% |
20年超~25年以下 | 30% |
25年超~30年以下および、地上権で存続期間の定めのないもの | 40% |
30年超~35年以下 | 50% |
35年超~40年以下 | 60% |
40年超~45年以下 | 70% |
45年超~50年以下 | 80% |
50年超~ | 90% |
借地権割合は、路線価地域であれば路線価に借地権割合が設定されていますので、評価対象地に接している土地の借地権割合を用いてください。
また評価対象地が倍率地域の場合には、評価倍率表に借地権割合が記載されています。
自用地評価額×法定地上権割合×1/2=地上権に準ずる賃借権以外の賃借権の評価額
地上権に準ずる賃借権以外の賃借権は、地上権に準ずる賃借権に比べると権利は弱いです。
そのため雑種地の自用地評価額に、賃借権の残存期間に応じた法定地上権割合の2分の1を乗じたものを評価額とします。
地上権に準ずる賃借権の目的となっている雑種地の評価方法
地上権に準ずる賃借権の目的となっている雑種地は、次のいずれか低い方の価額が評価額となります。
〇自用地価額×(1-A)
A:「法定地上権割合」と「借地権割合」のいずれか低い割合
〇自用地価額×(1-「賃借権の残存期間に応じた割合」)
「賃借権の残存期間に応じた割合」と「法定地上権割合」は別物であり、残存期間に対しての割合は違いますのでご注意ください。
<賃借権の残存期間に応じた割合>
残存期間 | 残存期間に応じた割合 |
5年以下 | 5% |
5年超~10年以下 | 10% |
10年超~15年以下 | 15% |
15年超 | 20% |
地上権に準ずる賃借権以外の目的となっている雑種地は、次のいずれか低い方の価額が評価額となります。
・自用地価額×(1-法定地上権割合×1/2)
・自用地価額×(1-賃借権の残存期間に応じた割合×1/2)
区分地上権の目的となっている雑種地の評価方法
区分地上権とは、工作物の所有を目的に地下または空間に上下の範囲を定めて設定される地上権であり、地下に鉄道を通す、トンネルを所有する等で設定されます。
区分地上権がある場合、土地所有者には建物を建築する際に階数制限などの制約がかかります。
そのため相続税評価額の計算においては、利用制限される状況に応じて減額補正を行うことになり、区分地上権の目的となっている雑種地の評価方法は次のとおりです。
自用地評価額×「土地利用制限率」=区分地上権の目的となっている雑種地の評価額
※この場合において、地下鉄等のトンネルの所有を目的として設定した区分地上権を評価するときにおける区分地上権の割合は30%とすることができます。
※「土地利用制限率」とは、土地の利用が制限されている程度によって定められている割合で、「公共用地の取得に伴う損失補償基準細則」の別記2<土地利用制限率算定要領>に定められています。
区分地上権に準ずる地役権の目的となっている雑種地の評価方法
区分地上権に準ずる地役権は、特別高圧架空電線の架線等を目的として、地下や空間の上下に範囲を定めて設定されている地役権です。
区分地上権に準ずる地役権の目的となっている雑種地は、評価対象地のうち地役権が設定されている場所(承役地)の利用制限の状況で減額割合が異なります。
〇家屋の建築がまったくできない場合
自用地評価額×(1-A)=区分地上権に準ずる地役権の目的となっている雑種地の評価額
A:「50%」と「区分地上権に準ずる地役権が借地権であるとした場合の承役地に適用される借地権割合」のいずれか高い割合
〇家屋の構造、用途等に制限を受ける場合
自用地評価額×(1-30%)=区分地上権に準ずる地役権の目的となっている雑種地の評価額
都市公園等として貸し付けられている雑種地の評価方法
都市公園の用地として貸し付けられている土地の価額は、一定要件を満たすことで40%の減額補正を適用できます。
・貸付けの期間が20年以上
・正当な事由がない限り貸付けは更新する
・正当な事由がなく貸付け期間の中途に土地の返還を求めない
・相続税の申告期限までに土地の所有者となった相続人全員が、公園用地として引き続き貸付けることに同意する旨の申出書を提出すること
権利が競合する雑種地の評価方法
土地の上に存する権利が競合する場合の雑種地は、競合する権利の種類に応じて次の算式により評価額を計算します。
雑種地の自用地評価額-(A+B)=雑種地評価額
A:借地権または地上権の価額
B:区分地上権の価額
雑種地の自用地評価額-(B+C)=雑種地評価額
B:区分地上権の価額
C:区分地上権に準ずる地役権の価額
雑種地の自用地評価額-(A+C)=雑種地評価額
A:借地権または地上権の価額
C:区分地上権に準ずる地役権の価額
まとめ
雑種地は雑種地以外の地目のいずれにも該当しなった土地が対象となる、いわゆる「その他」に分類される土地です。
そのため雑種地に区分されたとしても、土地の状況や利用方法によって評価方法は異なることもあります。
貸付用雑種地の評価方法は、基本的には宅地を貸付けている場合と同じ計算方法ですが、乗じる割合や雑種地特有の補正計算も存在しますので、評価する際は注意が必要です。