事例に学ぶ相続税申告

稲荷や地蔵尊(庭内神し)がある土地の評価は?

相続税は、相続開始時点の現預金、株式、家屋、土地といった相続財産の評価額を算定し、その総額が基礎控除(3,000万円+600万円×相続人の数)を超える場合、原則、相続開始後10か月以内に、税務署に申告を行う必要があります。

相続財産の中で、一番のウェイトを占めるのが「土地」です。土地は、評価がとくに難しいために、判断が分かれることも少なくありません。そのため、土地の評価額を適正に算定できるかが、適正申告のカギとなります。

都内S区在住の吉井様(仮名)は7か月前にお父様を亡くされ、自宅と駐車場を相続されました。自分で申告することを検討していましたが、土地評価でつまづき、インターネットのコラム記事で当グループを知って申告業務をお任せいただくことになりました。

庭内神し(ていないしんし)の土地評価は?

相続税の減額対象になったのは、自宅近くにある駐車場で、減額のポイントは「庭内神し」です。「庭内神し」とは一般に、屋敷内にある神の社(やしろ)や祠(ほこら)などといったご神体を祀(まつ)り日常礼拝の用に供しているものをいいます。ご神体とは不動尊(ふどうそん)、地蔵尊(じぞうそん)、道祖神(どうそしん)、庚申塔(こうしんとう)、稲荷(いなり)などで特定の者または地域住民などの信仰の対象とされているものをいいます。

庭内神しやその敷地は、相続税法第12条により相続税のかからない財産(非課税財産)とされています。ただし、庭内神しの敷地については無条件で非課税になるのではなく、「設備が敷地へ定着していること」「過去に移設されたものではないこと」「日常礼拝の形跡があること」などの要件を満たした場合に限り、非課税財産の対象となります。

ご近所さんが礼拝する信仰の対象も非課税財産

吉井様のご自宅に伺いお話をする中で、自宅と一緒に相続したはす向かいの駐車場にお地蔵様があることを教えていただきました。

吉井様によると、「お地蔵様は5代前のご先祖様のころからあるもので、昔からご近所さんもお参りしてくれている」とのこと。特定の個人や家族が礼拝しているものだけでなく地域住民の信仰の対象となっているものも庭内神しに含まれますので、相続した駐車場の敷地内にお地蔵様が建っているならば、その部分の敷地は非課税になる可能性があります。私たちはお地蔵様の建立時期や建立の経緯、日常礼拝の態様などを吉井様に確認したうえで、その敷地が非課税財産の対象になると判断しました。

駐車場のお地蔵様も非課税財産に

現地調査を行った結果、お地蔵様が設置されている敷地の面積が8㎡であることが確認されました。これらのことから、その部分を差し引いて土地の評価額を求め、現預金や株式などの評価も行って申告書を作成し、税務署に提出しました。

今回の申告作業をご自身でされた場合、庭内神しの存在を認識せずに的確な評価減を行わないまま申告してしまったかもしれません。その場合、駐車場の評価額は、当グループによる評価額より約280万円上がり、約140万円も余計に相続税を支払っていた可能性があります。

当グループでは相続専門税理士と相続に強い不動産鑑定士との協働により、適正申告を実現することが可能です。

今回のポイント

「庭内神し」は、特定の個人や家族の信仰の対象となっているものだけでなく、地域住民が信仰対象として日常的に礼拝しているものについても非課税財産の対象になる。気になる土地をお持ちの方は、一度、専門家に意見を聞いてみよう。