【事例】傾斜のある市街地農地で400万の減額|相続税土地評価

傾斜のある市街地農地で400万の減額

相続税は、相続開始時点の現預金、株式、家屋、土地といった相続財産の評価額を算定し、その総額が基礎控除(3,000万円+600万円×相続人の数)を超える場合、原則、相続開始後10か月以内に、税務署に申告を行う必要があります。

相続財産の中で、一番のウェイトを占めるのが「土地」です。土地は、評価がとくに難しいために、判断が分かれることも少なくありません。そのため、土地の評価額を適正に算定できるかが、適正申告のカギとなります。

急傾斜がある土地を相続

神奈川県S市在住の川口様(仮名)は3か月前にお父様を亡くされ、300㎡の畑などを相続されました。

相続された300㎡の畑を川口様に案内していただくと、土地の傾きは、道路から見て前面部分は緩やかであるものの、奥は急傾斜となっていました。

傾斜度については、原則として、評価する土地に最も近い道路面の高さを起点とし、その土地の最奥部の点となす角度をもって測定されます。

土地家屋調査士による現地測量を行ったところ、評価対象地が接する道路と土地の最奥部のなす角度は約12度と判定されました。ちなみに、道路と緩やかな部分のなす角度は約4度でした。

市街地農地の評価

今回の事例でカギとなったのは、「市街地農地の評価」です。財産評価基本通達によれば、農地は、農地法などにより宅地への転用が制限されており、また、都市計画などにより地価事情が宅地の場合と異なることから、その価額は「純農地」「中間農地」「市街地周辺農地」「市街地農地」の4種類に区分して評価するものとされています。

「純農地」「中間農地」の評価は、その農地の固定資産税評価額に、国税局長が定める一定の倍率を乗じる「倍率方式」で行われ、また「市街地周辺農地」「市街地農地」の場合は、「倍率方式」のほか、「宅地比準方式」がとられます。

「宅地比準方式」とは、その農地が宅地であるとした場合の1㎡あたりの価額から、その農地を宅地に転用する場合にかかる1㎡あたりの造成費(宅地造成費)を控除し、それに農地の面積をかけて評価する方法をいいます。造成費は、整地、土砂の積み上げ、擁壁の構築等に要する費用の額がおおむね同一と認められる地域ごとに国税局長が定めます。

平たん地と傾斜地では、造成費の計算方法が異なり、また傾斜地では、その傾斜度が大きいほど、造成費の金額が大きくなります。

高低差のある土地

適切な宅地造成費を控除して相続税を減額!

上記の調査結果を踏まえて土地の評価額を求め、現預金や株式などの評価も行って申告書を作成し、税務署に提出しました。

今回の申告作業をご自身でされた場合、道路と緩やかな部分のなす角度の約4度をその農地の傾斜度として申告してしまったかもしれません。その場合、市街地農地の評価額は、当グループによる評価額より約400万円上がり、約160万円も余計に相続税を支払っていた可能性があります。

適切な宅地造成を控除して相続税を減額

今回のポイント

市街地農地が「宅地比準方式」で評価されている場合、傾斜度に応じた適切な宅地造成費が控除されているかどうかなどを、一度、確認してみよう。

相続税申告を税理士に相談したくなったら

土地は、一般に高額で、個別性が強いため、評価のやり方しだいで納税額に大きな差が生じます。
また分けることが難しく遺産分割に時間がかかってしまうなど、現金や株式にはない特徴もあります。
地主様・不動産オーナー様が相続税を申告される際は、相続に強いというだけでなく、不動産に強いという点にも着目して、税理士事務所を選ぶことが重要です。
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藤宮 浩(不動産鑑定士)
フジ総合グループ代表 藤宮 浩(ふじみや ひろし)不動産鑑定士 ‖ フジ総合グループの代表を務め、年間990件以上の相続関連案件の土地評価に携わる。相続税還付業務の第一人者として各地での講演を多数行うほか、テレビ、雑誌、新聞など、各種媒体への出演、寄稿も行う。