相続における行政書士の役割とは?税理士との違い、相続後の主な手続き11項目を解説

相続で行政書士に依頼できることは?税理士との違いや役割を解説

フジ相続税理士法人の髙原です。
今回は、相続の現場で行政書士が担う役割についてお話しします。

相続人様からよく聞く言葉

普段、税理士としてお客様と接していて、相続税申告のためにご準備いただく書類を説明すると、多くの方が「こんなにたくさんの書類が必要なの?」と驚かれます。

そして、それと同じくらいよく耳にするのが、「何から手を付ければいいかわからない」という言葉です。
その背景には、単にどんな手続きが必要なのかわからないというだけでなく、家族関係が複雑であったり、感情面での整理がつかなかったりといった、さまざまな心理的負担が重なっているのだろうと思います。

ご家族の事情そのものを解決することは容易ではありませんが、慣れない手続きの情報収集や書類集めを手助けしてくれる存在がいるだけでも、ストレスや日常生活への影響は軽減されます。
そのような相続手続きを円滑に進めるお手伝いをするのが、行政書士という存在です。

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税理士の役割は?

相続にはさまざまな専門家が関わります。
税理士の本分はやはり相続税申告です。
そのため、依頼内容にもよりますが、戸籍収集や預貯金の解約といった相続手続きについて、税理士がどこまでフォローするかは事務所によってまちまちです。
影響が軽ければまだいいのですが、相続税の納税資金準備などに重大な影響が出る場合もあります。

少々極端な事例ですが、私どもに相続税の見直し(更正の請求*)をご依頼くださったお客様の経験談をご紹介します(個人が特定されない程度に一部脚色しています)。
この方は、相続発生当時、相続税申告を含む相続手続き全般をある税理士事務所に依頼されていました。

*相続税の更正の請求:納めすぎた相続税の還付を求める手続き。

相続税の申告期限が翌週火曜日に迫った頃。
ようやく金曜日の夕方になって、できあがった相続税申告書とともに、申告内容の説明を受けました。
計算された相続税額は3,000万円。
納付期限は翌火曜日。
つまり、期限まであと4日という状況で、3,000万円を用意する必要があることが初めて伝えられたのです。
手元にはどう頑張っても2,000万円しかない。

どうしたらいいか慌てて税理士に尋ねると、「亡くなられたお父様の預金を解約して納めればよいでしょう。その手続きは終わっていますよね?」との回答。
しかし、お客様は預金の解約についても税理士から何かしらの案内があるものと思っていて、手続きを進めていませんでした。
「あのときは青ざめた」と当時を振り返っていらっしゃいました。

このケースでは、相続人様は相続手続き全般を依頼したという認識でしたが、実際には税務を中心とした対応にとどまっていました。

確かに、相続税申告やそれに伴う財産評価、節税アドバイス等が税理士の専門領域であり、役割の違いといえばそれまでですが、いろいろな相続人様の声を聞いていると、税理士の目が相続全体にまで行き届いていないという不満は残念ながら多いようです。
少なくとも、契約時に、依頼する業務範囲や他の専門家との連携体制を確認しておくことは必要でしょう。

相続人様の負担を軽減 行政書士の役割

相続手続きの過程では、相続人様が戸惑いや負担を感じやすい場面が数多くあります。
「改製原戸籍」「除籍謄本」など聞き慣れない名前の書類。
書類の必要部数や有効期限の違い。
金融機関ごとに異なる書式や手続き方法。
窓口の対応時間。
委任状の準備……これらみな、相続人様のストレス発生源です。

手続きによって関係機関が異なるため、何か疑問があってもひとつの窓口で解決というわけにいきません。
また、会社勤めの方であれば、「平日しか窓口が開かないから有給休暇を取るしかない。でも職場に迷惑をかけないように最小限で……」と、仕事や日常生活との両立に苦労されている方も珍しくありません。

行政書士は、主に遺産整理に関して、相続人様が抱え込みがちな多岐に渡る手続きを担うことができます。
代表的なものとして、相続人調査(戸籍収集)や遺産分割協議書作成、預貯金の解約、証券口座の移管手続きなどが挙げられます。
このような煩雑な手続きを任せることで、相続人様は遺産分割の話し合いなど、ご自身でしかできないことに集中できます。
悲しみの大きい時期に、心理的・時間的な負担を軽減できることは大きなメリットでしょう。

もちろん、行政書士に依頼する場合でも、生前から財産整理や家族内の情報共有をしていれば、手続きはよりスムーズに進みます。
介護や事業承継への備えも含め、早めの相続対策がやはり大切といえます。

知っておきたい!相続後の主な手続き

この表で相続発生後をイメージして、今から財産整理や家族間の情報共有を進めておくと、いざというときの負担が軽くなります。

手続き名代表的な相談先行うことポイント
戸籍収集・法定相続情報一覧図の作成行政書士/司法書士等出生から死亡までの戸籍一式を集め、一覧図を作成して法務局で認証を受ける一覧図があれば多くの相続手続きで戸籍原本の提出が不要となり、手続きが効率化できます。
借金の調査弁護士/行政書士等信用情報機関への開示請求や通帳等から、借入金や未払金などの債務を確認する債務超過の可能性があるなら、相続放棄の期限(相続開始から3か月)に間に合うよう早めに着手を。
生命保険・証券会社調査等行政書士等保険は契約先を洗い出し請求または契約者変更を、証券は保有先を調査する被相続人が契約者・別人が被保険者の保険契約は見落とされやすいので注意しましょう。
遺産分割協議書の作成行政書士/司法書士/弁護士等※相続人全員の合意内容を文書化し、実印での押印と印鑑証明を揃える各手続きで提出を求められるため、複数部数を原本で用意しておくといいでしょう。
預貯金口座の解約・名義変更行政書士/司法書士等各金融機関で残高証明を取得し、預貯金の解約・払戻または名義変更を行う金融機関ごとに必要書類が異なるため、事前に窓口で確認しておきましょう。
証券口座の移管手続き証券会社/行政書士等証券会社等で残高証明を取得し、相続人名義の口座へ移管手続きを行う相続人に同社の口座があればそこへ、なければ新規開設して移管します。
不動産の相続登記司法書士土地・建物について、法務局で相続による所有権移転登記を行う令和6年から相続登記が義務化され、原則3年以内の申請が必要です。
賃貸不動産の管理引継ぎ不動産管理会社/税理士等管理会社・入居者へ貸主変更を通知し、家賃振込先等の変更手続きを行う手続きが遅れると入金遅延の原因に。新たな振込先は相続人間の合意のもとで決めましょう。
未収家賃・未払費用の精算税理士/不動産管理会社等相続開始前後の家賃や管理費・修繕費の未収未払を精算する被相続人と相続人の負担範囲を明確にしておくと、後の管理や税務がスムーズです。
空き家・共有不動産の活用検討不動産会社/不動産鑑定士/税理士等売却・賃貸・自己利用等の選択肢を比較し方針を相続人間で話し合う放置すると特定空家指定や、共有者増加で権利関係が複雑になるリスクがあります。
二次相続・次世代への承継準備税理士/不動産鑑定士/不動産会社等次の相続も見据え、分割方針や納税資金、不動産経営の引き継ぎ方を検討する二次相続の税負担だけでなく、不動産経営を引き継ぐ体制も考えておきましょう。

※相続人間で争いがある場合、交渉を含む遺産分割協議書の作成は弁護士のみが対応できます。

専門家の連携で相続を新たなスタートに

私たちフジ総合グループは、税理士と不動産鑑定士が中心となり、相続税申告や土地評価の面で相続をサポートしています。
そこに行政書士が加わることで、相続手続き全般に、より幅広く対応できる体制が整います。

税理士は、相続税申告はもちろん、二次相続や事業承継といった、将来を見据えた視点に強みがあります。
不動産鑑定士は適正な土地評価という専門性を持ち、行政書士は戸籍収集から名義変更まで、日々の煩雑な手続きに寄り添います。
それぞれの専門家が見ているポイントは異なりますが、だからこそ連携することで、お互いの視点を補い合い、相続全体の質を高めることができると考えています。

相続人様にとって、相続は終わりではなく、新たなスタートです。
今後も専門家同士の連携を大切に、皆様の相続に伴走してまいります。

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髙原 誠(相続専門の税理士)

この記事の監修者

フジ総合グループ副代表 髙原 誠(たかはら まこと)|税理士
フジ総合グループの副代表を務め、不動産に強い相続専門事務所の代表税理士として、年間約1,100件の相続税申告・減額・還付案件に携わる。
多くの経験とノウハウを活かした相続実務に定評があり、プレジデントや週刊女性など各種媒体への寄稿・取材協力も多数行う。

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