不動産相続のよくあるトラブル事例9選!解決方法についても解説

不動産相続のよくあるトラブル9事例

不動産の相続手続きは複雑かつ幅広い専門知識を要するため、相続人自身で手続きを進めようとすると思わぬトラブルに見舞われる可能性があります。
特に、相続税をめぐるトラブルは当人同士が感情的になったり、相続人本人だけでなく、配偶者や叔父・叔母などの親族が関わってくることもあるため、ストレスや疲労を感じやすくなります。

この記事では、不動産相続でよくあるトラブル事例と、各種トラブルの解決方法について解説します。
不動産の相続トラブルを避けるには、不動産を適正に評価したうえで、現物分割、換価分割などの遺産分割方法の中から、相続人全員が納得できる相続方法を選びましょう。

もくじ

不動産相続トラブル事例と解決方法1:遺産分割協議がまとまらない、不動産の分割方法で揉める

不動産相続トラブル事例と解決方法1:遺産分割協議がまとまらない、不動産の分割で揉める

相続手続きは、法定相続人の確定から始まります。
具体的には、被相続人(亡くなった人)の出生から死亡までの戸籍を念入りに確認し、相続人となる人を特定します。

遺言書がない場合、相続手続きは相続人の確定後、相続財産を確認し、評価額の算出を行います。
その後、相続人全員で遺産分割協議を行い、相続方法を確定させます。
もし新たな法定相続人が判明したら、原則として遺産分割協議をやり直す必要があるため、相続人を確定する前に遺産分割協議を行うことは避けましょう。

相続財産に不動産が含まれる場合、選択した遺産分割方法次第では、遺産分割後の不動産の価値や活用方法、相続税の納税トラブルが起こり得るため注意が必要です。
ここでは、遺産分割方法に焦点を当て、具体的なトラブル事例と解決方法について解説します。

4つの不動産分割方法(現物分割・代償分割・共有分割・換価分割)

相続した不動産の分割方法は、主に「現物分割」「代償分割」「共有分割」「換価分割」の4つです。

現物分割とは、不動産をそのままの形で相続人の1人または複数人で相続する方法を指します。
例えば、1筆(100㎡)の土地を50㎡ずつ2筆に分筆し、被相続人の配偶者とその子ども(1人)が1筆ずつ相続するといった方法があげられます。

代償分割とは、特定の相続人が不動産を取得する代わりに、他の相続人の相続分に相当する金銭を各相続人へ支払う分割方法です。

共有分割とは、不動産を分割したり、または1人の相続人のみに相続させたりせず、共有状態で相続する方法です。

最後に、換価分割とは、不動産を売却して得た金銭を相続分に応じて分配する方法です。

以下の表で、各分割方法のメリット・デメリットを簡単に解説します。

メリットデメリット
現物分割相続分に応じて財産をそのままの形で分割。不公平感を軽減しやすい。分割後の土地の価値に差が生じる場合に協議が難航する。
代償分割特定の相続人が相続財産を取得するため、将来的な管理・処分の問題が生じにくい。不動産を取得する相続人に、代償金を払えるだけの十分な資力がないと難しい。
共有分割遺産分割協議が成立しない場合でも、法定相続割合に応じた相続登記申請が可能なので、相続登記申請義務を果たすことができる。将来的な管理・処分の問題が生じやすい。
換価分割金銭での公平な分配が可能。不動産売却が困難なケース、希望価格で売却できないケースがある。

各分割方法についてはこちらの記事でも詳しく解説していますので、併せてご覧ください。

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【トラブル事例と解決策①】遺産分割協議で合意できず、相続不動産を換価分割

概要

長男と母が住んでいた土地と建物以外、相続財産がほとんどなく、母の死後、誰がどのように不動産を相続するかをめぐって長男と次男が対立。
遺産分割協議が合意できずに相続手続きが進まない。

解決方法

住居を失いたくない長男が現物分割や代償分割を試みるも断念。
結局、土地と家を売却して換価分割した。

遺言書がない場合、相続登記(被相続人の財産を特定の相続人の名義に変更)するためには、原則として遺産分割協議書が必要です。
しかし、分割方法について意見が対立してしまうと、相続人全員の合意を得ることが難しくなり、遺産分割協議が進まないケースがあります。

本ケースのように、住居を残したい長男の希望に沿う形で相続するのであれば、土地を分筆し現物分割する方法があります。
ただし、土地の中心に家が立っている場合や、土地が一道路にしか面しておらず、いびつな形で分筆しなくてはならない場合は、次男の同意を得にくいでしょう。
また、長男に代償金を支払う資力がなく、相続財産にも預貯金がほとんどない場合は、代償分割を選択することも難しくなります。
そのため、本ケースでは換価分割を行い、その売却益を兄弟で分け合う解決方法を選択しました。

【トラブル事例と解決策②】 共有分割のトラブルを不動産の単独相続で回避

概要

不動産を共有分割で相続したが、その後、共有者である兄妹間の関係性が悪化し、共有不動産の処分や活用方法をめぐり意見が対立。
不動産の売却も活用もできず、何年経っても放置した状況が続いてしまった。

解決方法

兄が妹に金銭を支払い、単独名義に変更した。

相続不動産において、4つの分割方法のなかで一番トラブルが発生しやすいのが共有分割です。
共有の不動産を適切に管理し処分するには、共有者同士が協力しあい、良好な関係を維持できるかどうかがポイントです。
なぜなら、共有不動産の売却や賃貸は単独で自由に決められないからです。
原則として、共有不動産の売却は共有者全員の、賃貸は持分割合の半分以上の合意が必要です。

そのため、本ケースのように共有者同士が対立している場合では、売却・活用の手続きは大変困難になります。

共有状態のまま、1人の共有持分のみを売却することは法律上可能ですが、買い手が付きにくいうえに価値が下がるため、現実的ではありません。

本ケースのように相続不動産は共有せず、金銭を支払うなどして、なるべく早めに相続人のうちの1人が単独所有することが、最も有効なトラブル回避策となります。

不動産相続トラブル事例と解決方法2:土地の分筆ラインの決め方で意見が対立する

前述のとおり、土地を現物分割する際は相続分に応じて土地を分筆し、土地の所有権をそれぞれが取得します。
一見、公平にみえ、トラブルなどなさそうですが、土地の現物分割には思わぬ落とし穴が潜んでいます。

土地の現物分割をする場合は、まず、メリットとデメリットを洗い出し、分筆後の各土地の活用方法や価値について十分検討したうえ、実行に移すのがおすすめです。

分筆による現物分割のメリットとデメリット

分筆とは1筆の土地に境界線を設けることで、2筆以上に分ける手続きのことをいいます。
物理的に線を引く、フェンスを設けるなどの行為は分筆とはみなされません。
分筆に法的な効力を持たせるためには、当該土地を管轄する法務局へ分筆登記を申請する必要があります。

分筆による現物分割には、次のようなメリット・デメリットがあります。

分筆による現物分割のメリット

・不動産の評価方法などで揉めることが少ないため、公平感がある。
・金銭の分配計算などを行わなくて済むため、手続きがシンプル
・正しく分筆すれば、1筆の土地を複数人で共有するより活用しやすい。

分筆による現物分割のデメリット

・公平な分筆が難しい。
・条例で禁止されているなど、エリアによっては分筆できないケースもある。
・分筆により土地の価値が下がるケースもある。

【トラブル事例と解決策③】面積ではなく土地の価値を考慮して分筆の境界線を決定した現物分割

概要

以下条件のもと、100㎡の土地1筆(評価額は1,000万円)を相続人2人で現物分割。
・相続分は2分の1ずつ
・公平に現物分割をして50㎡の土地を1筆ずつ相続
しかし、遺産分割協議開始後に「分筆後の土地に著しい価値の差が生じる可能性がある」ことが判明したため、話し合いが難航。

解決方法

面積で均等に半分ずつ分けるのではなく、土地の評価額や分筆後の価値を踏まえて分筆の境界線を決定した。

土地の価値は、形、周辺環境、接道義務を満たしているかどうかなど、さまざまな要素によって左右されます。
分筆後の面積が同一であったとしても価値が同じとは限らないため、話し合いがまとまらずトラブルに発展することもあるでしょう。

不動産相続の遺産分割で現物分割をする際は、面積だけでなく分筆後の価値も考慮したうえで分筆の境界線(分筆ライン)を決めることが重要です。
例えば、相続した土地にアパート建築を希望する場合、どのような土地であれば収益物件となる可能性が高いのかなどを事前にシミュレーションしておくとよいでしょう。
また、分筆後の価値や活用方法、税金面など総合的にアドバイスしてくれる専門家に相談することで、遺産分割協議をスムーズに進めることができます。

不動産相続トラブル事例と解決方法3:不動産評価が不適正で相続税の納め過ぎが起こる

不動産相続トラブル事例と解決方法3:不動産評価が不適正で相続税の納め過ぎが起こる

相続税法では、相続や遺贈または贈与により取得した財産の価額は、原則として財産取得時の時価によると定められています(※)。
ただ、相続税法では財産ごとの具体的な評価方法が定められていないため、別途財産評価基本通達で財産ごとの適正な評価方法を確認することが重要です。

「財産評価基本通達」とは、国税庁が相続・贈与で取得した財産評価方法について示したマニュアルのようなものです。
この通達によって相続や贈与に関する計算を行いますが、各種法令法規や権利関係、環境要因などを把握している専門家でなければ適切に利用するのは難しいでしょう。
専門知識がないまま財産評価基本通達にのっとって不動産を評価すると、減額要素を見逃してしまい、相続税の納め過ぎが起こります。
不動産はわずかな評価額の違いによって納める相続税額が大きく変わる可能性があるため、少しでも疑問があれば、不動産と相続税の双方に詳しい税理士へ相談するのがおすすめです。

※参照:e-Gov.「相続税法 第二十二条」.https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC0000000073 ,(2024-07-17)

相続した不動産の評価方法

土地の相続税評価方法は大きく分けて2種類(路線価方式・倍率方式)あり、どちらの方法で評価するかは、エリアごとに定められています。
各方式の相続税評価額を算出する方法は、下記の記事にて細かく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

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不動産にかかる相続税の計算方法や減額要素について分かりやすく解説しています。

また、路線価方式や倍率方式で算出した相続税評価額が時価と乖離している場合は、不動産鑑定士に査定を依頼する方法もあります。
下記のような不動産評価に影響する個別的な減額要因を調査することで、不動産鑑定評価額に反映させることが可能です。

・極端な不整形地
・間口が2m未満の土地
・全体が傾斜している土地
・道路面からの高低差が著しい土地 など

ただし、路線価方式等による評価額ではなく、不動産鑑定評価額を適用するには、税務署が納得する合理的な根拠が必要なため、その根拠が曖昧な場合は、不動産鑑定評価額が否認されるリスクがあります。

そのため、不動産鑑定評価額を適用する際は、路線価評価等で時価を反映することは明らかに困難であり、不動産鑑定評価(一般に数十万円)に見合う費用対効果が見込める場合にのみ使用すべきです。

もし不動産鑑定評価額の方が路線価評価による評価額より大幅に時価が低く、不動産鑑定評価額の適用を検討したい場合は、相続税の土地評価に強い事務所にその費用と効果を確認することをお勧めします。

また、家屋の相続税評価額は、被相続人が実際にその家屋に居住していたのか、それとも貸家にしていたのか、その使用方法によって異なるのが基本です。
実際に被相続人が居住していた場合は、固定資産課税評価額がそのまま相続税評価額になります。

【トラブル事例と解決策④】土地が適正に評価されておらず、高額な相続税を専門家に相談し回避

概要

相続人が自身で土地の評価額を算出。
土地が不整形地(L字、三角形など使いにくい土地)であったため評価を下げることが可能だったが、見逃してしまい高額な相続税が発生した。

解決方法

相続税に精通した税理士に相談し、適正な相続税評価額で相続税を申告。
相続税の納め過ぎを回避した。

財産評価基本通達を参考に、相続人自身が相続税の評価額を計算することも可能ですが、適正な不動産評価には、財産評価基本通達の内容を理解するだけの知識と経験が必要です。
また、前述した土地の個別性や借地権・地上権などの権利、都市計画法や農地法などの法令法規の影響で、相続税評価額と時価が大きく乖離している可能性があることを念頭に置いておきましょう。

相続財産に不動産が含まれている場合は、適正な相続税を納めるためにも不動産や相続に強い税理士に相談して、手続きを進めるのがおすすめです。
もし税理士と協働している不動産鑑定士が見つかれば、不動産鑑定の依頼を検討するのもよいでしょう。

不動産相続トラブル事例と解決方法4:現金が手元になく相続税の納付ができない

相続税の納付は、原則として現金一括納付と定められています。
そのため、不動産や美術品などすぐに現金化できない相続財産が多い場合は、事前の対策を行わないとトラブルに発展しやすくなります。

文化勲章を受けた日本画家である故奥村土牛氏の遺族の著書『相続税が払えない』の中に、無数の美術遺産の相続税が数億円にものぼり、かといって即座に現金化もできず、遺族が対応に追われて四苦八苦するようすが生々しく書かれています。
こうした莫大な価値ある遺産を相続したにもかかわらず、相続税を納めるために生活が苦しくなる状況は、一見無関係のように思えます。
しかし、実は私たちの身近にも起こりうるトラブルでもあるのです。

相続してから「相続税が払えない!」と頭を抱える事態にならないように、もし相続財産に不動産が多い場合は、あらかじめ対策を講じておきましょう。
不動産の相続税を納められない場合の対処法について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご参照ください。

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納税資金を準備していなかったときの5つの対処法

不動産や絵画など即座に現金化しにくい相続財産が多い場合、事前に納税資金を準備しておく必要があります。
万が一、納税資金の準備が間に合わなかった場合、条件を満たせば延納や物納などの方法が認められる可能性があります。

対処法概要
相続税の延納・相続税額が10万円以上
・延納申請書の提出
・現金一括払いが困難である事情があること
などの要件を満たせば相続税の分割納付が認められる。
ただし、相続税額が100万円超の場合は担保提供が必要。
また、利子税がかかる。
相続税の物納相続税の延納によっても納付が困難な場合に認められる。
優先して物納するべき順位に沿う必要がある。
日本国内にある不動産・船舶・有価証券・動産などが対象。
売却による資金調達不動産の売却益で相続税を納付する方法
ローン・借入による資金調達金融機関からの借入金で相続税を納付する方法。
通常、不動産に担保権が設定される。
相続放棄相続放棄をすることで相続税の納付義務を免れる方法。
ただし、文字どおり一切の相続財産の相続権を放棄することになる。

【トラブル事例と解決方法⑤】相続財産に現金が少なく相続税の納付が困難なため、不動産を売却して資金を調達

概要

相続財産を確認したところ、複数ある不動産の中に市場価値の高い土地がある一方で、現金は葬儀代程度しか遺されていなかった。
相続人の財産だけでは、相続税の現金一括納付が困難である。

解決方法

相続専門の税理士に相談し、相続財産の9割を占める土地をすべて売却。
売却益で相続税を納付し、駅の近くにマンションを購入。
資産の組み換えを行った。

相続税の納付期限は、被相続人が亡くなった翌日から10か月以内です。
そのため相続財産に現金が少なく相続税の納付に不安を感じる場合は、早急に相続税と不動産に強い税理士へ相談するのがおすすめです。

本ケースの場合は、相続が発生してから不動産を売却しようとしたところ、無事に買い手が見つかり、納税資金を確保することができました。
さらに、広大な土地の管理からも解放され、利便性の高い新しいマンションへの住み替えを行うことができました。
しかし、隣地境界確定が行われていない、擁壁が古く修繕が必要、老朽化した空き家が建っている、敷地の一部に近所の人が通行する通路がある、借地権の及ぶ面積が不明瞭であるなどといった、いわゆる市場流動性に劣る不動産の場合、売却までに想定以上の時間がかかることもあり、相続税申告期限に間に合わない可能性があります。
仮に申告期限までに売れたとしても、かなりの安値で手放すことになる恐れがありますので、相続が発生した後の買い手探しは得策とはいえません。

相続税の納税資金確保のために不動産売却をしなければならないことが明らかな場合は、手元に残す不動産と売却する不動産に分け、売却する不動産の市場価値を先に把握しておくなど、不動産を高値で売るための事前準備をしておきましょう。
不動産に強い経験豊富な税理士であれば、次の代の相続や売却にかかる税金など、多面的な視点で提案やアドバイスをしてもらえるため、相談先としておすすめです。

不動産相続トラブル事例と解決方法5:長い間、名義変更がされておらず、相続人の人数が膨れ上がる

不動産相続トラブル事例と解決方法5:長い間、名義変更がされておらず、相続人の人数が膨れ上がる

2024年4月から、相続登記が義務化されました。
相続人は、相続により不動産を取得したことを知った日から(遺産分割協議を行った場合は、協議日から)3年以内に相続登記を申請しなければなりません。

正当な理由なく相続登記を怠たると原則として過料に処されるため、注意が必要です。
なお、2024年4月よりも前に発生した相続に関しては、2027年3月31日または相続により不動産を取得したことを知った日から3年が経過する日のいずれか遅い日までに、相続登記を申請する必要があります。

相続登記がされないまま放置されている不動産はトラブルの火種になりやすいため、相続登記の義務化後は、放置された不動産を巡って専門家への相談が急増しています。

土地の名義を先祖代々変更していない問題点

不動産の相続登記は、放置される期間が長くなるほど困難になります。
なぜなら、遺産分割協議や法定相続分による相続登記が行われず放置された間に不動産の相続人が亡くなり、さらにその相続人も亡くなる、いわゆる「数次相続」が発生するためです。
相続人の特定作業には膨大な時間と労力を要し、その結果、関係する相続人が数十人以上にのぼるケースもあります。
遺産分割協議には全員の合意を要するため、面識のない相続人へ連絡を取って意見の調整をし、合意まで取り付けるのは大変手間のかかる作業です。

相続人が多数いる不動産の活用や処分は困難になることを踏まえて、数次相続が発生する前に相続登記をしておきましょう。

【トラブル事例と解決策⑥】 長い間、名義変更されていない不動産の手続きを専門家へ依頼

概要

曾祖父母の名義のまま放置された不動産について、相続登記をしようと戸籍を調査。
その結果、相続人の中に絶縁状態の親族や海外に移住した親族などが含まれていることが判明。
連絡が困難なため、相続手続きが止まってしまった。

解決方法

専門家に相談し、不動産の調査や法務局への対応を依頼した。

相続登記による名義変更がされないまま放置された不動産がある場合は、早急に専門家へ相談しましょう。
放置する期間が長くなればなるほど、トラブルの発生率も高くなります。
相談だけに留まらず、相続手続きそのものを専門家に委任することで、止まっていた相続手続きを前に進めることができます。

不動産相続トラブル事例と解決方法6:不動産の権利関係が原因で金銭トラブルが起こる

不動産の相続では、不動産にまつわる権利関係がトラブルの原因になるケースも少なくありません。
特に、抵当権・借地権など第三者が関係する権利が相続不動産に付着している場合や、配偶者居住権など特殊な権利関係が生じる可能性のある場合などは注意が必要です。

さまざまな権利関係のある相続不動産(抵当権・借地権・配偶者居住権)

抵当権・借地権・配偶者居住権の概要と、それらの権利が設定されている不動産を相続する場合の留意点は、次のとおりです。

権利概要留意点
抵当権金銭債権などを担保するために、債権者が不動産に対して設定する権利抵当権で担保された債務(借金)も相続人が引き継ぐ
借地権建物所有のために有償で土地を借りる権利登記されない借地権も多く、契約の実態を把握しにくい
配偶者居住権建物所有者の配偶者が死亡したあと、残された配偶者が、一定期間またはその者が死亡するまで無償でその不動産に居住できる権利配偶者居住権が設定された不動産を売却することは困難

相続財産の権利関係について知りたい場合は、法務局で不動産登記簿謄本(登記事項証明書)を取得して内容を確認しましょう。

抵当権や借地権、その他の権利が設定されている場合は、内容を踏まえたうえで、司法書士や弁護士への相談をおすすめします。

【トラブル事例と解決策⑦】 抵当権設定のある不動産について残債務を支払い、抵当権を解消

概要

相続する予定の不動産を調査した結果、抵当権が設定されており、担保された金銭債権が消滅していないことが判明。
どのように手続きを進めたらよいか分からない。

解決方法

残債務を支払って、抵当権を解消した。

金融機関から住宅ローンを借りて家を買う(建てる)場合には、通常、抵当権が設定されます。
金融機関は住宅ローンの支払いが滞ると抵当権を実行して不動産を競売にかけ、売却金から住宅ローンの残債を回収します。

抵当権が設定された不動産の所有者が死亡すると、担保された金銭債権などがすでに消滅している場合や所有者が団体信用生命保険に加入している場合を除き、相続人が残債も引き継ぐことが原則です。
引き継いだ残債を放置していると、返済の遅滞を理由に不動産を競売によって手放す恐れがあります。
相続した不動産に抵当権が設定されている場合は、早急に金融機関に連絡し、残債の金額や返済方法を確認しましょう。
返済が完了すれば、抵当権を抹消できます。

【トラブル事例と解決策⑧】:借地上にある不動産相続のトラブルについて、専門家に相談し対処

概要

相続する不動産を調べたところ、借地上に被相続人名義の家屋があることが判明。
地主から名義変更手数料や地代の値上げを要求された。

解決方法

専門家に手数料や値上げへの対処法を相談。
応じる必要があるケースとそうでないケースが判明した。

借地権の中には、かなり前に契約してから一度も契約が更新されていないものや、内容が登記されていないものが多いため、借地権の更新や賃料の正当性をめぐって相続トラブルが起こるリスクがあります。
例えば、借地権の相続に際して立ち退きを要求される、または地代の値上げを求められるなどのケースです。

借地権が付いた不動産を相続した場合は、早急に契約内容を確認し、必要に応じて専門家に相談しましょう。

早い段階でリスクを把握できれば、今後のトラブルを想定し、相手方との交渉準備を進めることができます。
また、相続税の評価額の算出方法は借地権の種類によって異なるため、相続税を納めすぎないためには専門的な知識が必要です。

借地権の相続税評価額の計算方法については、下記の記事も併せてご覧ください。

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借地権の種類によって相続税評価額の計算方法は異なります。権利別の計算方法を分かりやすく解説します。

不動産相続トラブル事例と解決方法7:相続不動産の売却時に税の納め過ぎが起こる

不動産を売却すると、譲渡所得税・住民税・復興特別所得税が課されます。
不動産の売却益は大きな金額であることが多いため、特別控除などが設けられていることを把握しないまま不動産を売却すると、税金の納め過ぎに繋がる可能性があるため、注意しましょう。

不動産売却時に発生する税金の種類(譲渡所得税・住民税・復興特別所得税)

不動産の売却時にかかる主な税金の種類と計算方法は、次のとおりです。

税金の種類計算方法
譲渡所得税不動産売却益-(取得費+譲渡費用)-特別控除=課税譲渡所得金額
短期譲渡所得:税率30%が適用
長期譲渡所得:税率15%が適用
住民税不動産売却益-(取得費+譲渡費用)-特別控除=課税譲渡所得金額
短期譲渡所得:税率9%
長期譲渡所得:税率5%が適用
復興特別所得税基準所得税額×2.1%
※期間は2037年まで

不動産の売却時に利用できる特別控除や特例

不動産を売却した際に必要な税金の計算や書類の作成は、非常に複雑です。
正しい知識がないまま手続きを進めると、以下のようなトラブルが発生する恐れがあります。

正しい知識がないまま不動産を売却した場合に発生するトラブル

・申告漏れ
・譲渡所得の過少申告

トラブルを回避したい場合や少しでも不安がある場合は、専門家のサポートを受けましょう。
また、不動産売却時にはさまざまな控除や特例を活用して、税の負担を抑えることも可能です。
ご自身が適用できるケースがあるかどうか、確認してみてください。

特例・特別控除の種類内容
マイホームを売ったときの特例居住用不動産の売却時、一定の条件を満たせば譲渡所得から3,000万円を控除できる
買い替え特例居住用不動産を売却して新たな居住用不動産を購入する際、一定の条件を満たせば課税を将来に繰り延べできる
所有期間が10年超のマイホームを売ったときの軽減税率の特例所有期間が10年を超えるマイホームを売却する際、要件に当てはまれば、税率を軽減できる
取得加算の特例条件を満たしたうえで、相続などにより取得した財産を一定期間内に売却すると、相続税額の一定額を取得費に加算することができる

【トラブル事例と解決策⑨】高額な相続税の税金軽減対策として不動産売却を専門家に相談

概要

不動産を数多く所有していた父親が亡くなり相続が発生。
相続人は同居していた母親と子一人。
相続税が高額なため、自宅敷地を含めて不動産の売却を検討しており、税の軽減措置や特例が適用されるのかを知りたい。

解決方法

相続に強い税理士に相談したところ、小規模宅地等の特例(「特定居住用宅地等」に該当)を適用し、330㎡までの宅地に関しては相続税の課税価格を80%減額することが可能と判明。
譲渡所得税については自宅敷地の取得費が不明なため、概算取得費(売却した金額の5パーセント相当額)になってしまったが、マイホームを売った際の特例と、所有期間が10年超のマイホームを売った際の軽減税率の特例を併用し、さらに取得費加算の特例も適用。
これにより、相続税と譲渡所得税を大幅に軽減することができた。

相続した不動産を売却する際は、特別控除や特例の適用により税負担に大きな差が生じます。
ただし、適用の条件が分かりにくく、併用ができるケースをご自身で判断するのは困難なため、売却を検討し始めた場合は、専門家に相談しましょう。

不動産相続のトラブルを回避するには相続に特化した専門家のサポートも方法の一つ

不動産相続におけるトラブルや相続発生後の税金トラブルを回避したい人は、相続や不動産に強い税理士にできるだけ早く相続税対策のためのシミュレーションを依頼することがおすすめです。
税理士によるコンサルティングを受けるメリットの一例は、下記のとおりです。

税理士によるコンサルティングを受けるメリットの例

・相続税負担を大幅に軽減できる可能性が高くなる。
・相続税の節税対策を行う前に、遺産分割対策や納税資金対策、認知症対策や介護対策を行うことで、残された家族間のトラブルを避けることができる。
・相続税における土地の評価額をできるだけ詳細に提示してもらうことで、不動産に内在するリスクが表面化し、不無駄のない相続対策が可能になる。
・最新の法律・法令法規に対応した対策を講じることができる。
・弁護士・司法書士・行政書士・土地家屋調査士・一級建築士・宅建士等と連携しているため、リーガルサービスをワンストップで受けることができる。

不動産所有者の相続対策は、適正な土地評価を基にしたコンサルティングによってほとんど解決できるといっても過言ではありません。
コンサルティングには通常、費用が発生します。
一方で、無料で相続税のシミュレーションを行うところもあるため、費用を支払ってまで専門家に依頼するべきか迷う方も多いと思います。

長年に渡ってさまざまな相続の現場を見てきたうえでお伝えできるのは、信頼できる専門家と出会い、早い段階で相続税対策のシミュレーションを行うことで、結果的に大切な財産を多く残しているケースが多いということです。
税理士事務所の情報を収集したうえで、ご自身の希望に合う無料相談があれば、一度相談してみることをおすすめします。

まとめ

不動産相続のトラブルは、ケースによってさまざまです。
特に、相続人が多数である、または相続不動産の数が多い場合は、トラブルが発生する可能性を念頭に置きながら、慎重に相続手続きを進める必要があります。
本記事を参考に起こり得るトラブルについて対策を講じたり、実際に起きてしまったトラブルへの対処方法を検討したりしてみてください。
不動産の相続手続きや相続税評価に不安が生じた場合は、まず税理士などの専門家に相談してみましょう。

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藤宮 浩(不動産鑑定士)・髙原 誠(相続専門の税理士)
【左】フジ総合グループ代表 藤宮 浩(ふじみや ひろし)不動産鑑定士/相続税還付業務の第一人者として、テレビ、雑誌、新聞など、各種媒体への出演、寄稿を行う。【右】フジ総合グループ副代表 髙原 誠(たかはら まこと)税理士/不動産に強い相続専門事務所の代表税理士として、年間約990件の相続税申告・減額・還付案件に携わる。

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