立地適正化計画を踏まえた相続対策の考え方【事例】

立地適正化計画を踏まえた相続対策の考え方

立地適正化計画とは、将来の人口減を見越し、都市計画区域を有する自治体が、都市機能の集約を目指して定める都市のグランドデザインをいいます。
その地域で定められている立地適正化計画を参考にすることで、相続対策として遊休土地に建物を建てた方がよいのかどうかの判断材料となります。
どのような場所の土地に注意が必要なのでしょうか。
今回は、立地適正化計画を考慮して相続対策を行った事例をご紹介します。

遊休土地を複数お持ちの地主様から相続対策シミュレーションのご依頼が

埼玉県T市にお住まいの桃井様(仮名)は、遊休土地を複数お持ちの地主様です。
ご自身の年齢とご家族のことを考え、いざ相続が発生した場合に、相続税はいくらかかるのか、また事前にできる対策はあるのかと疑問を抱き、当グループに相続対策シミュレーションのご依頼をいただきました。

遊休土地について桃井様にお聞きすると、「そこにアパートを建てて活用したいと思っている」とのことでした。
土地活用を検討するなら、地域の将来展望を考慮する必要があります。その参考になるのが、立地適正化計画です。
そしてまさに桃井様がお持ちの土地の多くが、立地適正化計画を打ち出している自治体にありました。

立地適正化計画
立地適正化のイメージ

将来の人口減を見越して、積極的に住宅や店舗を建設する地域である都市計画区域を有する自治体が、都市機能の集約を目指した計画のこと。 2014年に改正された都市再生特別措置法に基づき、都市計画区域を有する自治体によって定められた。 2022年4月時点で、626都市が立地適正化計画に対する具体的取り組みを行っており、そのうち448都市が計画を作成、公表している。
参照:立地適正化計画作成の取組状況|国土交通省

立地適正化計画の落とし穴

ここで私たちが注意しなければならないのは、立地適正化計画の区域の中で人口の集中が予想される居住誘導区域都市機能誘導区域の地価は維持または上昇となるものの、そこから外れた地域の地価は下落する可能性が高いという点です。
人口と地価には相関関係があり、人口集中の起こる地域の地価は上がり、過疎が進む地域では地価が下がる傾向が見られます。
前述の居住誘導地域と都市機能誘導地域から外れた地域というのは、今後、人口の流出が予想されますから、地価下落が起きる確率が高いと考えられるのです。

居住誘導地域

人々の居住地を集中させ、人口密度を維持する区域。

都市機能誘導地域

居住誘導区域の中に行政サービスなど都市機能上重要な建物の立地を優先させる区域。

地価下落が見込まれる土地を売却し、納税資金対策

私たちが役所調査を行ったところ、その土地のほとんどが居住誘導区域や都市機能誘導区域から外れた場所にあることが明らかとなりました。
この調査結果に基づき、桃井様には相続が発生した場合にかかる相続税額のご報告とともに、次の提案をさせていただきました。

「このままアパートを建築したとしても、今後、人口流出が予想される地域に立地することになり、経営には多大なリスクが生じると考えられる。遊休土地に愛着がないのであれば、地価下落がひどくなる前に売却し、需要のある都市部のマンションを購入するなど、資産組み替えをしていくことをお勧めする。購入したマンションは、賃貸すれば賃料収入が発生し、それをお子様に生前贈与していくことで、相続税の納税資金対策にもなる」

これについて、桃井様ご家族からは、「その提案をぜひ実行してもらいたい」との承諾をいただけたため、土地の売却と、その売却資金を元手として東京都市部のマンション購入の仲介をさせていただきました。

今回の事例のポイント

各自治体が続々と打ち出している立地適正化計画。
同計画が公表されている自治体に不動産を保有する方は、どの区域に存しているのか調べた上で、不動産の活用方法を検討しよう。

まとめ

立地適正化計画は、今後の都市のあり方に大きな影響を及ぼす政策です。
公表時点でその効力が対象となる都市計画区域に及ぶことになり、中長期的には、それに基づき、町が大きく変貌していくことになります。
地主さん、家主さんは、市況の変化や税制改正といったタイミングを考え、またそこに対して機敏に対応していく必要があります
不動産という複雑な資産を有する地主様等は特に、大切な資産を守るために時間をかけて相続対策に取り組んでいただきたいと思います。
当グループではこうしたご相談も承っておりますので、気になる方はぜひ一度、お問い合わせください

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髙原 誠(相続専門の税理士)
フジ総合グループ副代表 髙原 誠(たかはら まこと)税理士 ‖ フジ総合グループの副代表を務め、不動産に強い相続専門事務所の代表税理士として、年間約990件の相続税申告・減額・還付案件に携わる。多くの経験とノウハウを活かした相続実務に定評があり、プレジデントや週刊女性など各種媒体への寄稿・取材協力も多数行う。