地主様・不動産オーナー様のための 相続税土地評価コラム

個別性の強い土地の評価について、
評価方法や注意点をイラストを使用して
わかりやすく解説します。

地積規模の大きな宅地の評価。相続税土地評価のポイントを解説!

面積が一定以上の宅地では、「地積規模の大きな宅地の評価」を適用することで、相続税評価額を減額することが可能です。

適用にあたっては面積などの要件があり、以前存在した「広大地評価」とは扱いが異なりますのでご注意ください。

本記事では地積規模の大きな宅地の評価について、設例を交えて解説いたします。

目次

地積規模の大きな宅地の評価とは

「地積規模の大きな宅地の評価」とは、平成30年1月1日以後の相続・贈与によって取得した大規模な土地について適用が認められている評価方法です。

この評価方法では、大規模な土地を戸建住宅用地として開発分譲する場合に主に面積が大きいことにより発生する価値の低下を反映した「規模格差補正率」を使用して評価額を求めることになっています。

地積規模の大きな宅地の評価と広大地評価の違い

「地積規模の大きな宅地の評価」は、平成30年1月1日以後に相続・贈与により取得した宅地を対象としており、それ以前に取得した広大な土地については「広大地評価」の適用判定を行うことになります。

広大地評価とは、500㎡以上の土地で一定の要件を満たした場合に土地の評価額を最大65%減額できるというとても減額幅の大きい制度だったのですが、要件が非常に複雑かつ曖昧であったため国税当局と納税者の意見がたびたび分かれることが問題になっていました。

そのため平成30年以降の相続・贈与からは、広大地評価に代わり「地積規模の大きな宅地の評価」が新設され、広大地評価は廃止となりました。

地積規模の大きな宅地の評価と広大地評価の適用要件は異なりますので、広大地評価を適用できなかった土地でも、地積規模の大きな宅地の評価を用いて評価額を計算できる可能性があります。

地積規模の大きな宅地の評価の対象となる土地

適用要件

「地積規模の大きな宅地の評価」は、次の要件に該当する場合に適用できます。

<地積規模の大きな宅地の評価の適用要件>
  • 評価対象地が三大都市圏(※)に所在する場合、面積が500㎡以上あること
  • 評価対象地が三大都市圏以外に所在する場合、面積が1,000㎡以上あること
  • 評価対象地が路線価地域にある場合、普通商業・併用住宅地区および普通住宅地区のいずれかに所在すること
  • 評価対象地が倍率地域に所在する場合、大規模工場用地に該当しないこと
  • 市街化調整区域以外の地域に所在すること
  • 都市計画法上の用途地域が「工業専用地域」以外の場所に所在すること
  • 評価対象地が東京都の特別区(23区)の場合、建築基準法第52条第1項に規定する指定容積率が300%未満の地域に所在すること
  • 評価対象地が東京都の特別区以外の場合、建築基準法第52条第1項に規定する指定容積率が400%未満の地域に所在すること

※三大都市圏とは、東京圏・大阪圏・名古屋圏に該当する地域をいいます。

三大都市圏 対象エリア
東京圏 首都圏整備法第2条第3項に規定する既成市街地または、同条第4項に規定する近郊整備地帯
大阪圏 近畿圏整備法第2条第3項に規定する既成都市区域または、同条第4項に規定する近郊整備区域
名古屋圏 中部圏開発整備法第2条第3項に規定する都市整備区域

 

地積規模の判定のしかた

地積規模の要件は、利用の単位となっている1画地の宅地(評価単位)ごとに判定します。

1筆の土地であっても、複数の用途に供している場合は利用単位ごとに面積判定を行うことになります。

また贈与・遺産分割等で宅地を分割した際は、分割後の画地を1画地の宅地として判定しなければなりません。

なお宅地の分割が親族間等で行われた場合、分割後の画地が宅地として通常の用途に供することができないなど、その分割が著しく不合理であると認められるときは、その分割前の画地を「1画地の宅地」として評価することになります。

 

共有地の場合における地積規模の判定方法

評価対象地が複数人の共有となっている場合、共有者の持分に応じて按分する前の共有地全体の面積によって、地積規模の判定および評価額の計算を行います。

たとえば三大都市圏に所在する800㎡の土地を持分2分の1ずつ保有している場合、その持分に応じた面積は各400㎡です。

しかし按分前の共有地全体の面積は800㎡であるため、その土地は地積規模の要件を満たす土地に該当します。

 

正面路線が2以上の地区にわたる場合の取扱い

評価対象地が接する正面路線が2以上の地区にわたる場合、評価対象地の過半の属する地区を土地全体が所在する地区と判定します。

 

市街地農地等に対する適用の可否

評価対象地が市街地農地、市街地山林、市街地原野および市街地周辺農地に該当する場合でも、「地積規模の大きな宅地の評価」の適用要件を満たす場合には、補正計算を適用することができます。

市街地農地等に地積規模の大きな宅地の評価を行う際は、形状補正に加え、宅地造成費を差し引くことが可能です。

なお市街地農地等が路線価地域にあるときは、宅地の場合と同様、適用できるのは普通商業・併用住宅地区および、普通住宅地区に所在するものに限られます。

また市街地農地等が以下のケースに該当する場合、戸建住宅用地としての分割分譲が想定されませんので、「地積規模の大きな宅地の評価」は適用できません。

  • 宅地転用に多額の造成費を要するため、経済合理性の観点から宅地への転用が見込めない場合
  • 急傾斜地などのように物理的に不可能であるため、宅地への転用が見込めない場合

地積規模の大きな宅地の評価の計算方法

地積規模の大きな宅地の評価は「規模格差補正率」を用いて計算することになり、評価対象地が路線価地域と倍率地域のどちらに所在するかで評価方法が異なります。

 

規模格差補正率の計算

規模格差補正率は、次の算式により計算します。

評価対象地が三大都市圏と三大都市圏以外のどちらに所在するかで、適用する数値が異なります。

 

規模格差補正率の計算式

(A×B+C)÷A×0.8=規模格差補正率
※小数点以下第2位未満は切捨て

Aは、評価対象地の地積です。

BおよびCは、地積規模の大きな宅地が所在する地域に応じて、それぞれ次に掲げる表の数値を用います。

 

〇評価対象地が三大都市圏に所在する場合
面積 B C
500㎡以上 1,000㎡未満 0.95 25
1,000㎡以上 3,000㎡未満 0.90 75
3,000㎡以上 5,000㎡未満 0.85 225
5,000㎡以上 0.80 475

※普通商業・併用住宅地区、普通住宅地区に所在する土地が対象です。

〇評価対象地が三大都市圏以外の地域に所在する場合
面積 B C
1,000㎡以上 3,000㎡未満 0.90 100
3,000㎡以上 5,000㎡未満 0.85 250
5,000㎡以上 0.80 500

※普通商業・併用住宅地区、普通住宅地区に所在する土地が対象です。

 

路線価地域に所在する場合の評価方法

評価対象地が路線価地域にある場合、正面路線価を基に形状補正を行い、「規模格差補正率」を乗じて計算した価額に評価対象地の面積を乗じて評価します。

形状補正の計算方法は一般的な土地と同様で、奥行距離が長大な場合や、歪な形状をしている土地については補正を行います。

<対象となる補正の種類>
  • 奥行価格補正
  • 側方路線影響加算
  • 二方路線影響加算(三方・四方路線影響加算)
  • 不整形地補正

 

倍率地域に所在する場合の評価方法

評価対象地が倍率地域にある場合、次のうちいずれか低い方の価額により評価します。

  • その宅地の固定資産税評価額に倍率を乗じて計算した価額
  • その宅地が標準的な間口距離および奥行距離を有する宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額に、普通住宅地区の奥行価格補正率や不整形地補正率などの各種画地補正率のほか、規模格差補正率を乗じて求めた価額に、その宅地の地積を乗じて計算した価額

 

「その宅地が標準的な間口距離および奥行距離を有する宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額」は、評価対象となる宅地の近傍の固定資産税評価額にかかる、標準宅地の1㎡当たりの価額を基にして計算します。

地積規模の大きな宅地の評価の計算例

地積規模の大きな宅地の評価の計算方法を、3つの設例を用いて解説します。

 

設例1:路線価地域に所在する宅地

路線価地域にある宅地については、規模格差補正率を乗じる前に、形状補正の有無を確認してください。

評価対象地の面積が大きいため、奥行価格補正を適用できるケースが多いです。

〇前提条件
・評価対象地の面積:750㎡
・三大都市圏に所在
・路線価:100,000円
・地区区分:普通住宅地区
・奥行価格補正率:0.95
※地積規模の大きな宅地の評価における要件は満たしている
〇規模格差補正率の計算
(750㎡×0.95+25)÷750㎡×0.8=0.78
※小数点以下第2位未満切捨て
〇地積規模の大きな宅地の評価額
100,000円×0.95(奥行価格補正率)×0.78×750㎡=55,575,000円(相続税評価額)

 

設例2:倍率地域に所在する宅地

倍率地域に所在する宅地は、近傍宅地の固定資産税評価額をベースに評価額を計算します。

なお算出された評価額が倍率方式により計算した評価額よりも高額な場合、倍率方式を採用して評価することになるのでご注意ください。

〇前提条件
・評価対象地の面積:3,000㎡
・三大都市圏以外の地域に所在
・宅地の固定資産税評価額:105,000,000円
・近傍の固定資産税評価に係る標準宅地の1㎡当たりの価額:50,000円
・評価倍率:1.1倍
・奥行価格補正率:0.86
※地積規模の大きな宅地の評価における要件は満たしている
〇標準的な1㎡当たりの価額の計算
50,000円×1.1=55,000円
〇規模格差補正率の計算
(3,000㎡×0.85+250)÷3,000㎡×0.8=0.74
※小数点以下第2位未満切捨て
〇地積規模の大きな宅地の評価額
55,000円×0.86(奥行価格補正率)×0.74×3,000㎡=105,006,000円
〇倍率方式との評価額の比較
105,000,000円×1.1=115,500,000円(倍率方式による評価額)
105,006,000円<115,500,000円
倍率方式による評価額よりも低いため、105,006,000円を相続税評価額とします。

 

設例3:市街地農地への適用

市街地農地に該当する土地についても、地積規模の大きな宅地の評価を適用することが可能です。

形状補正のほかに、宅地造成費等を差し引くこともできます。

〇前提条件
・評価対象地の面積:1,500㎡
・三大都市圏に所在
・地目:畑
・路線価:100,000円
・宅地造成費:700円(1㎡当たり)
・奥行価格補正率:0.89
※地積規模の大きな宅地の評価における要件は満たしている
〇規模格差補正率の計算
(1,500㎡×0.90+75)÷1,500㎡×0.8=0.76
※小数点以下第2位未満切捨て
〇地積規模の大きな宅地の評価額
100,000円×0.89(奥行価格補正率)×0.76×1,500㎡=101,460,000円
101,460,000円÷1,500㎡=67,640円
(67,640円−700円(宅地造成費))×1,500㎡=100,410,000円(相続税評価額)

まとめ

「地積規模の大きな宅地の評価」を適用すれば、相続税評価額を大きく減額することが可能です。

ただ評価対象地の所在する場所によって面積要件や規模格差補正率が異なりますし、形状補正の有無も確認しなければなりません。

広大地の評価制度から改正してわかりやすくなったとはいえ、検討すべきポイントが多く、実際の評価は複雑なものです。

同じような土地をお持ちの方、評価に関わる判断が難しい場合には相続専門の税理士に相談することをおすすめします。

この記事を書いた人

藤宮浩

フジ総合グループ 代表
不動産鑑定士
藤宮 浩(ふじみや・ひろし)

株式会社フジ総合鑑定 代表取締役
フジ総合グループの代表を務め、年間950件以上の相続関連案件の土地評価に携わる。相続税還付業務の第一人者として各地での講演を多数行うほか、各種媒体への出演、寄稿多数。