親からアパートを相続することになり、「相続税はいったいいくら?」と不安を感じていませんか。
「アパートを建てると相続税対策になると聞いたものの、具体的にどのくらい税金が安くなるのか知りたい」とお考えの方も多いのではないでしょうか。
相続税は、現金で納める必要があるため、事前に適正な評価額を把握しておかないと、納税資金の準備で慌てることになりかねません。
この記事では、アパートの相続税評価額の具体的な計算方法について、土地と建物に分けてわかりやすく解説します。
記事を読むことで、ご自身のアパートの大まかな評価額をイメージできるようになり、小規模宅地等の特例などの節税制度を適用できるかどうかの判断基準も明確になります。
令和8年度税制改正大綱(令和7年12月26日閣議決定)において、アパートなどの貸付用不動産を活用した相続税対策に大きな影響を及ぼす評価方法の見直しが示されました。
これまでは、相続直前であってもアパートを取得・建築すれば、路線価(時価の約80%)や固定資産税評価額(建築費の50~70%)をベースに評価した上で、貸家建付地・貸家としての減額も適用され、現金で保有する場合と比べて大幅に評価額を圧縮できました。
しかし、今回の改正では、被相続人等が課税時期前5年以内に対価を伴う取引により取得又は新築をした一定の貸付用不動産については、従来の路線価方式・固定資産税評価額方式ではなく、「課税時期における通常の取引価額に相当する金額」(原則として取得価額を基に地価の変動等を考慮して計算した価額の80%に相当する金額) で評価する見直しが予定されており、改正通達が発出された時点で、詳細が明らかとなります。
適用時期は、令和9年1月1日以後の相続等により取得する財産からとされていますが、対象となる貸付用不動産の具体的な範囲など、改正通達の詳細は本記事執筆時点(2026年3月)では確定していません。
なお、被相続人等が当該改正通達に定める日の5年前から所有していた土地に、改正通達の定める日までに新築をした家屋(同日において建築中のものを含みます。)については、本改正の対象外となる経過措置も設けられています。
言い換えれば、駆け込みで現行制度の節税を狙って、今から土地を購入して5年以内に相続発生した場合には、令和9年の改正通達に定める日にアパート建築に着手していても、現行制度の評価方法は使えないということです。
アパートによる相続税対策を検討する際は、現行制度だけでなく、この改正予定の内容と適用時期を踏まえた上で判断することが重要です。
もくじ
なぜアパートは相続税対策になると言われるのか?
アパート経営が相続税対策として有効だと言われるのには、明確な理由があります。
理由は、不動産の評価額が現金よりも低く算定される仕組みがあるためです。
特に、賃貸物件として所有している場合は、評価額が更に下がる仕組みがあります。
ここでは、アパートが節税につながる3つの主要な理由について、順を追って解説します。
| 項目 | 概要 | 節税効果の目安 |
|---|---|---|
| 財産の種類 | 現金から不動産へ換える | 市場価格の約80%(土地)、建築費の50~70%(建物) |
| 権利の状態 | 自分で使う土地から他人に貸す土地へ | 更に約20%減額(貸家建付地)※ |
| 債務の扱い | 借入金(アパートローン)がある場合 | 相続財産総額から残債を控除できる |
※ 貸家建付地(かしやたてつけち)とは、所有する土地に賃貸用の建物(アパート、マンション、一戸建て)を建て、他人に貸し出している場合の敷地のことです。
現金より不動産の方が評価額は低い
相続税を計算する際、現金や預貯金はその金額そのものが評価額となります。
つまり、1億円の現金は1億円として評価され、そのまま課税対象になります。
一方で、不動産の場合は、市場で売買される価格(時価)よりも低い基準で評価されることが一般的です。
土地は国税庁が定める「路線価」を基準に評価されますが、これは公示価格の80%程度を目安に設定されています。
このため、現金を不動産に換えておくだけで、実質的な資産価値を維持しながら、相続税の計算上の評価額について、市場価格より低く抑えることが可能になります。
一般的に、土地は時価の約80%程度で評価され、さらに賃貸用不動産であれば、評価額が一層下がる可能性があります。
参考:財産評価基準書|国税庁
参考:【相続税の申告要否判定コーナー】-固定資産税評価額
第三者への賃貸で更に評価額が下がる
不動産を単に所有しているだけでなく、アパートとして第三者に貸し出している場合は、更に評価額が下がります。
これは、土地や建物の持ち主であっても、入居者がいる限りは自由に使ったり売却したりすることが制限されるためです。
この不自由さを考慮して、税制上、評価額の減額が認められています。
土地については「貸家建付地」として、建物については「貸家」として評価されます。
入居者の権利である借家権などを考慮して、評価額が割り引かれます。
貸家建付地は、自分で所有して使用している「自用地」と比較して、20%程度の評価減が期待できます。
これがアパート経営において、相続税対策として強力である大きな理由です。
貸家建付地に該当すれば、相続税評価額を減額できるため、節税につながります。貸家建付地としての評価を適用するための条件や、計算の注意点を解説します。
ローンの残債は相続財産から控除できる
アパートを建築する際に銀行などから融資を受けている場合、被相続人の借入金の残債(債務)を相続財産から控除することができます。
これを「債務控除」と呼びます(相続税法13条)。
アパートの評価額は、一般的に建築費よりも低く評価されます。
そのため、借入金額との差額によって、他の財産(現預金など)にかかる相続税の負担が軽減される場合があります。
ただし、相続税の節税目的であったとしても、借金であることには変わりなく、不動産賃貸業者としての所得税申告において、不動産所得計算上、建物に係る利息のみが経費計上できるだけで、土地に係る利息は経費とはなりません。
金利の市場動向や将来の家賃の低下及び空室率の増加等を視野に入れ、無理のない返済計画とし、決して不動産賃貸経営を圧迫しないような事業計画を立てることが重要です。
アパートの「土地」の評価額はどう計算する?
アパートの相続税評価額を計算する際、まずは「土地」と「建物」を分けて考える必要があります。
土地の評価額は、その土地が面している道路の価額(路線価)を基準に計算しますが、アパートが建っている土地は「貸家建付地」という特別な評価方法を用います。
まずは、土地の評価額を算出する具体的な手順を見ていきましょう。
| 手順 | 計算内容 | 必要な情報 |
|---|---|---|
| 1.基本評価 | 路線価 × 土地の面積(地積) | 路線価図(国税庁HP)、地積測量図 |
| 2.権利調整 | 自用地評価額 × (1 – 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合) | 借地権割合(路線価図)、各戸の入居状況 |
| 3.特例適用 | 貸付事業用宅地等として50%減額(200㎡まで) | 小規模宅地等の特例の要件確認 |
路線価方式で基本的な土地の価値を算出
土地の評価額を計算する基本は「路線価方式」です。
路線価とは、道路に面した標準的な宅地の1平方メートルあたりの価格のことで、国税庁のホームページ「財産評価基準書(路線価図)」で誰でも確認できます。※
まずは、対象となる土地の路線価を調べ、それに土地の面積を掛け合わせることで、更地としての評価額(自用地評価額)を算出します。
もし、土地の形状がいびつであったり、道路に面している距離が短かったりする場合は、補正率を使って評価額を調整します。
逆に角地や、正面と裏面の両方が道路に接している土地などは、利便性が高いため評価額が加算される仕組みです。
多くの市街地ではこの方式が採用されますが、路線価が設定されていない地域の場合は、固定資産税評価額に一定の評価倍率を乗じる「倍率方式」にて評価を行います。
※毎年7月1日(土日の場合は翌月曜日)に、その年の1月1日時点の土地評価額が公表されます。
参考:財産評価基準書|国税庁
貸家建付地として評価額を約20%減額
アパートの敷地は、オーナー自身の土地であっても、アパートには入居者が住む権利(借家権)が付着し、その敷地の使用権(借地権)を有しているため、オーナーが自ら自由に使用したり売却したりすることができません。
この土地利用上の制限を考慮し、相続税評価では自用地としての評価額(更地評価額)から一定額を控除することが認められています。
これを「貸家建付地評価」と呼びます。
減額される割合は、その地域ごとの「借地権割合」※と、全国一律の「借家権割合(30%)」を乗じたものとなります。
例えば、借地権割合60%の地域では、自用地評価額から18%(0.6 × 0.3)が減額されることになります。
この評価減は、アパート経営を行っている土地ならではの大きなメリットです。
※借地権割合は、借地事情が似ている地域ごとに定められており、路線価図や評価倍率表にA(90%)、B(80%)、C(70%)、D(60%)、E(50%)、F(40%)及びG(30%)の7段階で表示されています。
参考:No.4611 借地権の評価|国税庁
参考:【確定申告書等作成コーナー】-借家権割合
貸家建付地の評価額の計算式を理解する
貸家建付地の評価額を求める具体的な計算式は以下のとおりです。
貸家建付地の評価額 = 自用地評価額 × ( 1 - 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合 )
ここで重要になるのが「賃貸割合」です。
賃貸割合とは、アパートの全床面積のうち、課税時期(亡くなった日)に入居者がいて実際に貸し出されている床面積の割合を指します。
満室であれば賃貸割合は100%(1.0)となり、最大限の評価減を受けることができますが、空室が多いと賃貸割合が下がり、その分だけ評価額が高くなってしまいます。
計算式からもわかるように、入居率を高く維持することが、相続税対策としても非常に重要です。
ただし、継続的に賃貸されてきたもので、課税時期において、一時的に賃貸されていなかったと認められる場合、賃貸割合に加算してもよいという緩和措置も存在します。
詳細については「一時的な空室は賃貸割合に含めてよい」の段落で解説します。
参考:No.4614 貸家建付地の評価|国税庁
参考:民法(相続法)改正に伴う 相続税・贈与税の課税関係の考察
小規模宅地等の特例で最大50%減額
貸家建付地としての評価減に加え、更に大きな節税効果をもたらすのが「小規模宅地等の特例(租税特別措置法69条の4)」の「貸付事業用宅地等」の適用です。
この特例は、亡くなった人がアパート経営などの貸付事業を行っていた土地について、一定の要件を満たすことで、200平方メートルまでの部分の評価額を50%減額できるという制度です。
例えば、評価額が5,000万円の土地であれば、この特例を使うことで2,500万円まで評価が下がる可能性があります。
ただし、適用を受けるためには、「相続税の申告期限まで事業を継続すること」や「土地を保有し続けること」などの要件があります。
また、相続開始前3年以内に新たに貸付事業を始めた土地については、原則として適用対象外となる規定(3年縛り)があるため、直前の対策には注意が必要です。
なお、使用貸借(無償での貸し借り)による貸付は本特例及び貸家建付地評価の対象外となる点に留意してください。
引用元:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁
アパートの「建物」の評価額はどう計算する?
土地に続いて、アパートの「建物」部分の評価額の計算方法を解説します。
建物は土地と異なり、時価や建築費ではなく、市町村等が定める「固定資産税評価額」をベースに算定します。
借家としての権利を考慮した減額計算は土地と同様の考え方を用いますが、計算式はよりシンプルです。
| 評価のステップ | 計算式・基準 | 備考 |
|---|---|---|
| 1.基準額の確認 | 固定資産税評価額 | 建築費の50~70%が目安 |
| 2.借家権の控除 | 固定資産税評価額 × (1 – 借家権割合 × 賃貸割合) | 借家権割合は一律30% |
| 3.最終評価額 | 固定資産税評価額の約70%(満室時) | 最終的に建築費の30%~50%程度になるケースが多い |
固定資産税評価額が計算の基礎になる
建物の相続税評価額を計算する際のスタート地点は、「固定資産税評価額」です。
これは毎年春ごろに市町村から送られてくる「固定資産税納税通知書」に同封されている「課税明細書」で確認できます。
「価格」や「評価額」と記載されている欄の数字を使います。
新築のアパートの場合、家屋の固定資産税評価額(地方税法341条)は建築代金の約50%〜70%に設定されるのが通例です。
したがって、アパートを建てた時点で、現金の額面(建築費)から評価額が大きく下がることになります。
なお、固定資産税評価額は3年に一度見直され、経年劣化によって徐々に下がっていく性質があります。
参考:総務省|地方税制度|固定資産税の令和3年度評価替えへの対応
不動産の相続税評価では、「固定資産税評価額」と「相続税評価額」という2つの異なる評価額が登場します。相続における両者の違いや、調べ方について解説します。
貸家として評価額を一律30%減額
自分が住むための家屋であれば、固定資産税評価額がそのまま相続税評価額になりますが、人に貸しているアパート(貸家)の場合は、入居者の権利を考慮して評価額を減額することができます。
この減額幅は、全国一律で「借家権割合」として30%と定められています。
つまり、他人に貸している建物というだけで、固定資産税評価額から更に30%引きで評価されるということです。
この仕組みにより、アパートの建物部分は、現金のまま持っている場合と比較して、最終的に建築費の30%~50%程度の評価額まで圧縮されるケースも少なくありません。
これが「アパートを建てると相続税が安くなる」と言われる建物評価の基本的な考え方です。
貸家の評価額の具体的な計算式
貸家(アパートの建物)の評価額を算出する計算式は以下のとおりです。
貸家の評価額 = 固定資産税評価額 × ( 1 - 借家権割合 × 賃貸割合 )
借家権割合は30%(0.3)で固定ですので、満室(賃貸割合100%)の場合の計算は以下のようになります。
固定資産税評価額 × ( 1 - 0.3 ) = 固定資産税評価額 × 0.7
つまり、満室のアパートであれば、固定資産税評価額の7割が相続税評価額になります。
土地の評価と同様に、ここでも「賃貸割合」が計算式に含まれている点に注意してください。
空室があると、その部屋の床面積分については30%の控除が受けられず、評価額が上がってしまいます。
【具体例】アパートの相続税評価額シミュレーション
ここでは、具体的な数字を使ってアパートの相続税評価額をシミュレーションしてみましょう。
計算の流れを追うことで、ご自身の所有物件についてもイメージが湧きやすくなるはずです。
- 土地面積:200㎡
- 路線価:30万円/㎡(借地権割合60%:アルファベットD)
- 建物の固定資産税評価額:4,000万円
- 入居状況:満室(賃貸割合100%)
| 対象 | 計算式 | 評価額 |
|---|---|---|
| 土地(自用地) | 30万円 × 200㎡ | 6,000万円 |
| 土地(貸家建付地) | 6,000万円 × (1 – 0.6 × 0.3 × 1.0) | 4,920万円 |
| 土地(特例適用後) | 4,920万円 × 50%減額 | 2,460万円 |
| 建物(貸家) | 4,000万円 × (1 – 0.3 × 1.0) | 2,800万円 |
| 合計 | 2,460万円 + 2,800万円 | 5,260万円 |
路線価を市場価格の80%とすれば、土地の市場価格は7,500万円
建物の固定資産税評価額が建築費の64%とすれば、建物建築代金は6,250万円
このアパートの新築時の市場価格は、これらの合計13,750万円であり、相続税評価額5,260万円は、市場価格の約38%となります。
土地の評価額を計算する
まず、土地の自用地としての評価額を計算します。
路線価30万円 × 200㎡ = 6,000万円
これが、更地だった場合の評価額です。
次に、アパートが建っていることによる「貸家建付地」の評価減を反映させます。
借地権割合は60%(0.6)、借家権割合は30%(0.3)、満室なので賃貸割合は100%(1.0)です。
6,000万円 × ( 1 - 0.6 × 0.3 × 1.0 )
= 6,000万円 × ( 1 - 0.18 )
= 6,000万円 × 0.82
= 4,920万円
さらに、小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)の要件を満たすと仮定すると、200㎡までの評価額が50%減額されます。
4,920万円 × 0.5 = 2,460万円
これが最終的な土地の評価額になります。
建物の評価額を計算する
続いて建物の評価額を計算します。
前提条件として、固定資産税評価額を4,000万円とします。
借家権割合は30%(0.3)、賃貸割合は100%(1.0)です。
4,000万円 × ( 1 - 0.3 × 1.0 )
= 4,000万円 × 0.7
= 2,800万円
これが建物の相続税評価額です。
固定資産税評価額の7割になっていることがわかります。
土地と建物の評価額を合計する
最後に、土地と建物の評価額を合計して、アパート全体の相続税評価額を算出します。
土地(2,460万円) + 建物(2,800万円) = 5,260万円
もし、この資産を現金1億3,750万円(土地購入費6,000万円+建築費6,250万円と仮定)のまま持っていたとしたら、評価額は1億3,750万円です。
アパートとして保有することで、評価額が約38%の5,260万円まで圧縮されたことになります。
この差額が、相続税の計算において大きな節税効果を生み出します。
借地権には種類があり、それぞれで評価方法が異なります。それぞれの評価方法について、ケース別に詳しく解説します。
注意!空室が多いと相続税が高くなる
ここまでの計算式で何度も出てきた「賃貸割合」という言葉。
これはアパートの相続税評価額を左右する非常に重要な要素です。
空室が増えると、この賃貸割合が下がり、結果として相続税評価額が上がってしまいます。
つまり、アパート経営の不振は、収益の悪化だけでなく、相続税の増税というダブルパンチになりかねないのです。
| 入居状況 | 賃貸割合 | 評価額への影響 | 対策 |
|---|---|---|---|
| 満室 | 100% | 最大限の減額適用 | 現状維持・管理継続 |
| 一部空室 | 床面積で計算 | 空室分だけ減額なし | 入居者募集の強化 |
| 全室空室 | 0%とみなされる可能性 | 大幅な増額リスク | リフォーム・条件見直し |
賃貸割合が評価額に影響する
土地の「貸家建付地評価」も、建物の「貸家評価」も、計算式の最後に「×賃貸割合」を乗じる仕組みになっています。
これは、実際に入居者がいて貸し出されている部分にのみ、評価減の恩恵を与えるという考え方に基づいています。
例えば、全10室(各部屋の床面積は同じ)のアパートで、相続発生時に5室が空室だった場合、賃貸割合は50%になります。
満室時なら借家権割合30%分の控除を受けられますが、賃貸割合が50%なら実質的な控除率は15%に半減してしまいます。
土地についても同様に控除幅が小さくなるため、空室の数だけ評価額が上昇し、納めるべき相続税が増えてしまいます。
満室経営が節税の鍵になる
相続税対策としてアパートを建てたのであれば、建てて終わりではなく、満室経営を維持することが節税効果を最大化するために重要です。
管理会社と連携して空室対策を行ったり、物件のメンテナンスを適切に行ったりすることは、賃料収入を得るためだけでなく、将来の相続税を抑えるための活動でもあります。
特に、相続が発生しそうな時期が近づいている場合は、リフォームを行ったり、家賃設定を見直したりしてでも、入居率を高めておくことが推奨されます。
相続税の評価は「亡くなったその日(課税時期)」の状況で判断されるため、そのタイミングで満室に近い状態にしておきましょう。
※なお、サブリース契約(一括借上)を結んでいる場合は、実際の空室状況にかかわらず賃貸割合を100%として計算可能です。
一時的な空室は賃貸割合に含めてよい
では、たまたま相続が発生した日に、退去したばかりで空室になっていた部屋があった場合はどうなるのでしょうか。
これについては、国税庁の通達により救済措置があります。
下記項目などにより総合的に判断した結果、「一時的な空室」であると認められれば、その部屋も賃貸されていたものとして、賃貸割合に含めて計算することが可能です。
- 相続前に継続的に賃貸されていたか
- 退去後、速やかに新たな募集を行っていたか
- 空室期間中に、所有者が他の用途(物置など)で使っていないか
- 空室期間が相続前後の1か月程度など、一時的なものか
- 相続後の賃貸が、一時的なものではないか
単に、借り手がつかずに長期間放置されているような空室は対象外となりますので、不動産会社と媒介契約を結んで募集活動を行っている証拠を残しておくことが大切です。
アパート相続で失敗しないための注意点
アパートの相続は、評価額の計算や節税メリットだけでなく、経営を引き継ぐという側面や、納税資金の確保、遺産分割の難しさなど、多くの課題を含んでいます。
相続対策には「遺産分割」「納税資金」「節税」という三本柱がありますが、節税の優先順位は3番目であることを忘れてはいけません。
節税にばかり目を奪われていると、思わぬ落とし穴にはまってしまうこともあります。
ここでは、アパート相続で後悔しないために押さえておくべき注意点を解説します。
| 注意点 | 内容 | 対策 |
|---|---|---|
| 経営リスク | 赤字物件は「負動産」になる | 収益性のシビアな確認 |
| 納税期限 | 相続後10か月以内に現金納付 | 現金の準備・生命保険の活用 |
| 遺産分割 | 不動産は分けにくい | 遺言書の作成・代償分割や換価分割の検討 |
相続税の節税と経営の収支は別問題
「相続税が安くなるから」という理由だけで、立地条件の悪い場所にアパートを建てたり、収益性の低い物件を保有し続けたりするのは危険です。
不動産賃貸も事業ですので、空室対策や賃貸建物の維持管理やキャッシュフロー管理等を考慮する必要があります。
相続時には、確かに評価額は下がりますが、赤字経営になれば、資産を減らすことになってしまいます。
さらに、将来的に売却しようとした際、買い手がつかずに安値で手放すことになれば、節税できた金額以上の損失を被る可能性もあります。
アパート相続においては、「節税効果」と「不動産経営としての収益性」を切り離して考え、事業として成り立つかどうかを冷静に判断する必要があります。
相続税の申告と納税は10か月以内
相続税には厳しい期限があります。
被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に、税務署へ申告を行い、税金を納めなければなりません。
アパートの評価額計算や遺産分割協議に時間がかかってしまい、期限ギリギリになって慌てるケースは珍しくありません。
もし期限を過ぎてしまうと、小規模宅地等の特例などの有利な制度が使えなくなるだけでなく、延滞税や無申告加算税といった余計な税金が課されることもあります。
アパートを含む相続手続は複雑になりやすいため、早めに着手し、スケジュールに余裕を持って進めることが重要です。
納税資金をあらかじめ準備しておく
アパートなどの不動産は一般的には評価額が高く、すぐに現金化することが難しい資産です。
相続税は、原則として現金で一括納付しなければなりません。
「資産はアパートしかないけれど、手元に現金がない」という状態(納税資金不足)になると、相続したアパートを売却せざるを得なくなったり、銀行から納税資金を借りたりすることになります。
相続税の納付には、延納や物納といった制度がありますが、年賦延納には、税務署が1番抵当権者とする担保不動産等を提供する必要があったり、物納が認められるためには、延納を用いても納付が困難であることや物納財産に担保権の付着がないなど管理処分が適当な財産である必要があり、これら制度を利用するためのハードルは、かなり高いものとなっています。
ですから、生前から納税額を試算し、アパート経営で得た家賃収入を納税資金としてプールしておくことや生命保険を活用して現金を確保するなど現金化が容易な資産を準備しておくことも有効な対策の一つです。
参考:相続税の納付|国税庁
土地に関する相続税の納付が困難な場合の対処法について、状況別に解決策をご紹介します。
共有名義での相続はトラブルの元
アパートを複数の相続人(例えば兄弟2人)で「共有名義」にして相続することは、将来のトラブルの原因になりやすいため避けるべきです。
共有状態になると、大規模な修繕や建替え、売却をする際に、共有者全員の同意が必要になるからです。
もし、意見が対立すれば、物件の管理が滞り、資産価値を損なうことになります。
また、次の世代(孫の代)に相続が進むと、事実上の「争いの火種」となるリスクが高まります。
この問題を回避するには、相続人の一人がアパートを引き継ぐ代わりに、他の相続人へ現金を渡す「代償分割」が有効です。
代償金の支払に備えて、生前から生命保険などを活用し、資金を準備しておくことも検討しましょう。
専門家への相談も検討しよう
アパートの相続税評価は、ここまで解説してきたように、借地権割合や賃貸割合の確認、特例の適用要件の判断など、非常に専門的な知識を要します。
自分一人で計算しようとすると、評価額を高く見積もり税金を納めすぎたり、逆に税務調査で評価額が低いと指摘されたりするリスクがあります。
そのため、相続と不動産の双方に精通した専門家の視点が欠かせません。
最後に、アパートの相続税評価について相談できる専門家の代表例として、税理士を紹介します。
| 相談先 | メリット | こんな人におすすめ |
|---|---|---|
| 税理士 | 適正な税額計算・申告代行 | 申告が必要な人・特例を使いたい人 |
| 不動産鑑定士 | 特殊な土地の適正評価 | 土地の形状が複雑・広大な人 |
| 司法書士 | 名義変更(登記)の手続 | 遺産分割協議が終わった人 |
複雑な計算や特例適用は税理士に任せる
特に「小規模宅地等の特例」や「地積規模の大きな宅地の評価」などは、適用できるかどうかの判断が難しく、計算ミスによる影響額も大きくなります。
また、土地の形状がいびつな場合の補正計算などは、経験豊富な専門家でないと適正な評価が難しい分野です。
無理に自分で申告しようとせず、相続税に詳しい税理士に依頼することで、適正な評価額を算出し、最大限の節税メリットを享受できる可能性が高まります。
税理士報酬を支払ってでも、結果的に手元に残る資産が多くなるケースは珍しくありません。
相続に強い税理士の選び方
税理士なら誰でも相続税に詳しいわけではありません。
法人税や所得税をメインに扱っている税理士も多いため、「相続税の申告実績が豊富か」「不動産評価に強いか」「現地調査・役所調査まで実施してくれるか」「税法だけでなく不動産関連法令にも強いか」などの視点で選ぶことが大切です。
ホームページで過去の相談実績や解決事例を確認したり、初回面談でアパートの評価方法について具体的な質問をしてみたりするとよいでしょう。
また、他の専門家(司法書士や不動産鑑定士)とのネットワークを持っている事務所であれば、相続手続をワンストップでサポートしてもらえるため便利です。
土地の相続税評価において現地調査と役所調査が必要な理由と、各調査で確認すべき事項を解説します。
無料相談を活用して疑問を解消する
多くの税理士事務所では、初回の無料相談を行っています。
まずは手元にある固定資産税の課税明細書や土地の資料などを持参し、概算の評価額や適用できそうな特例についてアドバイスを求めてみましょう。
正式に依頼するかどうかは、相談後に判断すれば問題ありません。
漠然とした不安を抱えたまま過ごすよりも、専門家の意見を聞くことで現状を整理し、次にやるべきことを明確にすることができます。
アパートの相続税評価なら、不動産鑑定士と連携している「フジ相続税理士法人へ」
フジ相続税理士法人は、相続専門の税理士と不動産鑑定士が一つになった全国でも稀な協働事務所です。
グループ全体で年間約850件もの実務を手掛けており、蓄積された豊富なノウハウに基づいた質の高いサポートを実現します。
評価の対象となる土地について、現地調査と役所調査を実施し、緻密な調査を行うことが当法人の特徴です。
まずは、無料相談をしてみませんか?アパートの入居状況や土地の形状によって、評価額は大きく変わります。
現状の申告内容に不安がある方や、これから相続を控えている方は、専門家による「相続税評価のセカンドオピニオン」をぜひご活用ください。
今のお悩みを、相続と不動産の専門家に相談してみませんか?初回のご相談は無料です。オンライン相談にも対応していますので、家にいながら、専門家にご相談いただけます。
まとめ
アパートの相続税評価額の計算は複雑に見えますが、基本的な仕組みを理解すれば、おおよその税額を把握し、対策を立てることが可能です。
最後に、本記事の要点を振り返ります。
- アパートは「貸家建付地」や「貸家」としての評価減に加え、「小規模宅地等の特例」を使えば大幅な節税が可能です。
- 評価額を下げるには、満室経営を維持して「賃貸割合」を100%に保つことが極めて重要です。
- ただし、節税効果とアパート経営が上手くいくかは切り分けて考える必要があります。
- 節税だけでなく、納税資金の確保や遺産分割の対策も同時に進め、不安な点は早めに専門家へ相談しましょう。
アパートという大切な資産を次世代へ円満に引き継ぐために、まずは現状の評価額を知ることから始め、計画的な相続対策を一歩ずつ進めていきましょう。




