介護から考える相続対策、トラブルを防ぐ視点

介護から考える相続対策、トラブルを防ぐ視点

相続対策を考えるうえで、「介護」は非常に重要な要素です。
なぜならば、相続人が担う介護負担を考えていなかったために親族間にトラブルを抱えたまま相続が開始し、結果として遺産分割がまとまらず、納税資金として予定していた親御さんの預貯金も使用できなかった……そのようなケースを何度も見てきたためです。
なぜ介護が相続トラブルの火種となりやすいのでしょうか。

相続発生前に重なる介護の期間

「介護負担に応じて相続分を調整すべき」という理想と、「介護負担に関係なく法定相続分が優先される」という現実(民法)との間には、ギャップが存在します。

「介護の貢献度」と「遺産分割の割合」の理想と現実

多くの場合、介護は同居の親族が担い、将来的に老人ホーム等を利用する場合でも、その手続きや調整は特定の相続人が行うことが一般的です。
そのような、終わりの見えない介護生活の後に待っているのが「相続」です。
介護を一手に引き受けた相続人がいる場合、不平や不満が出るのは仕方のないことでしょう。

また、事前に相続について話をしようにも、自分の死後の財産分配のことを考えている親と、介護という目の前の現実を見ている子の間には意識のズレがあるうえに、「相続の話=お金の話」として家族内でもタブー視されがちです。
そして話し合いが後回しとなった結果、介護の開始とともに相続トラブル発生リスクの高い状況に陥ります。

そのような事態にならないために、親も子も、まずは介護の話から始めましょう。
早い段階から介護の希望や方針、財産管理について親子で話し合っておくこと。
これが実は、有意義な相続対策のための基盤となります。

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介護方針の検討と家族の役割分担

介護方針の検討では、「自宅介護(家族が介護を担う)」か、「施設介護(他者に介護を委ねる)」かの判断が大きな分かれ道となります。
いずれの場合も、親族内での役割分担を明確にすることがポイントです。 

また、施設と一口にいっても種類は多岐にわたります。
運営主体(自治体等の公的機関か民間企業か)、入居条件、サービス内容、契約方式、利用料等、さまざまな違いがありますので、まず全体像を把握してから施設の情報収集を始めましょう。
主に民間企業が運営する代表的な3タイプの施設の特徴を比較しました。

高齢期の住まい 3タイプの比較
※一般的な例であり、実際は施設により異なります。

施設の種類(通称)主な対象者介護サービス契約方式特徴
介護付き有料老人ホーム要介護者(施設により自立者も可)施設内で介護サービスを提供利用権方式介護保険制度上の「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた高齢者向け居住施設。
介護に加え、食事や清掃等の生活支援サービスを包括的に提供。
要介護度が高めでも受け入れられやすい。原則として終身利用可能。
住宅型有料老人ホーム自立~要介護者外部の事業者との契約が必要利用権方式食事や清掃等の生活支援サービスが付帯した高齢者向け居住施設。
介護は外部サービスを利用するが、訪問介護事業所等が併設されているところも。
要介護度が低い場合は費用を抑えられる。原則として終身利用可能。
サービス付き高齢者向け住宅(一般型)自立~軽度の要介護者外部の事業者との契約が必要賃貸借契約安否確認・生活相談サービスが付帯した高齢者向け賃貸住宅。一般の賃貸住宅に近く、生活の自由度が高い。
介護や生活支援は外部サービスを利用。
要介護度が上がると住み替えが必要となることも。

ご本人の健康状態や必要なサポート内容、希望する暮らし方等を整理したうえで、施設見学や必要に応じてケアマネジャー等への相談も実施して、納得のいく施設を選択しましょう。
話し合いはできればご親族皆さんが参加し、資金計画や費用分担なども共通の認識を持っておくのが理想的です。

相続専門税理士が考えるホーム見学でチェックしたいポイント

ご家族の中には〝親を施設に入れる〟ことに抵抗を感じる方もいるかもしれません。
しかし、「健康寿命」と「平均寿命」との間には男性で約9年、女性で約12年の差があります。
これが、日常生活を送るうえでサポートが必要な期間といえます。

この短くない期間を家族だけで背負うのではなく、プロである第三者の力を借りることで、親御さんの生活の質をより高く保てると捉えることもできるのではないでしょうか。
また、介護の物理的な負担が特定の人に偏らないこと、介護費用が明確になりやすいことから、親族間の衝突を軽減する効果も期待できます。

「介護」を踏まえて有意義な相続対策を

繰り返しになりますが、介護と相続は連続したプロセスです。
介護費用はご本人の財産から支払われることが多いため、介護プランが漠然としていては将来の相続財産が明瞭になりません。
加えて、ご親族の物理的・金銭的な介護分担が曖昧では適切な相続配分が設計できません。
これでは、せっかく相続税の試算をしても数字に現実味がないでしょう。

また、認知症リスクに備える遺言や任意後見、家族信託等は、相続前の期間を構想する中で生じる相続対策です。
これらのことから、介護を十分考慮することが効果的な相続対策につながるといえます。

相続対策の鍵は「3つの目」で「4本の柱」を見ること
ポイント

財産の内容や特徴を把握する必要があるのは、親ではなく、相続人です。
親御さんは、きちんと次世代に伝えられるように整理しておきましょう。
不動産であれば、所有物件の「法的規制」「物理的条件」「権利関係」の3要素。
これらはいずれも不動産評価額・活用に直結する事項です。

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髙原 誠(相続専門の税理士)

この記事の監修者

フジ総合グループ副代表 髙原 誠(たかはら まこと)|税理士
フジ総合グループの副代表を務め、不動産に強い相続専門事務所の代表税理士として、年間約1,100件の相続税申告・減額・還付案件に携わる。
多くの経験とノウハウを活かした相続実務に定評があり、プレジデントや週刊女性など各種媒体への寄稿・取材協力も多数行う。

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