相続に関する問題が起きた場合、相談先として挙げられるのは弁護士、税理士、司法書士、行政書士などです。
ただし専門とする分野がそれぞれ異なるため、内容によって適した相談先を選ぶ必要があります。
相続に関する疑問や悩みを解決するため、ぜひ参考にしてください。
もくじ
相続とは
相続とは配偶者や父母、祖父母などが亡くなった際に故人の財産を遺族が引き継ぐことです。
相続では亡くなった人を被相続人、財産を受け取る人を相続人と呼びます。
相続の対象となる財産を相続財産と呼び、プラスの財産だけでなく借金やローンなどのマイナスの財産も含まれます。
なお、代表的なプラスの相続財産は以下のとおりです。
代表的なプラスの財産
不動産 |
土地、借家、借地、家屋、店舗など |
不動産上の権利 |
借家権、借地権、賃借権など |
金融資産 |
現金、預貯金、株式・出資金、株式以外の国債や投資信託などの証券、売掛金、保険金など |
動産 |
家財、自動車、貴金属、美術品、骨董品など |
その他 |
特許権、著作権、貸付金など |
例えば運転免許証や士業の免許、親権など、お金に換算できないものは相続財産には含まれません。
相続に関する相談先と内容
ご自身が相続人となったとき、まず悩みの種になるのは「誰に相談すればよいか」ということです。
ここからは、相続問題に関する相談先ごとに適した問い合わせ内容を解説します。
専門家とはいえ対応できる業務や相談内容はそれぞれ異なるので、ご自身が解決したい悩みに合わせて相談先を選びましょう。
公的機関
公的機関では、基本的な手続きや制度の詳細などを相談できます。
公的機関として挙げられるのは、市役所、区役所、国税局、税務署などです。
ただし、一般的な情報を知りたいのか、金銭の計算を含む申告をしたいのかなどで窓口が異なるので、相談内容に応じて公的機関を選ぶ必要があります。
そこで市役所・区役所と国税局・税務署に分けて、それぞれ相談できる内容や相談する際の注意点を解説します。
市役所・区役所
市役所・区役所の窓口で相談できるのは、相続の手続き全般に関する内容です。
以下のような内容を知りたい方は市役所・区役所に相談するとよいでしょう。
・相続についての概要
・相続に関する手続きの相談先
市役所・区役所で実際に行えることは、相続に必要な戸籍謄本や住民票、印鑑証明書などの書類の収集です。
市役所・区役所は公的機関のため相談料はかからないものの、個々のケースに対応した相談や書類の作成・チェック、相続に関する具体的な手続きはできません。
また、一部の市役所・区役所では専門家による無料相談会を開催しているケースもあります。
無料相談会を利用するには基本的に予約が必要ですが、弁護士や司法書士など国家資格を持つ専門家からアドバイスをもらえます。
相続手続きに関する質問や相続税に関する相談などをしたい場合は、利用してみましょう。
ただし相談回数に制限があったり、相談時間や内容が決められていたりすることがあるため、確認が必要です。
国税局・税務署
国税局・税務署では、主に相続税の申告・手続き(計算方法含む)に関する相談ができます。
以下のように相続税に関する基本情報を知りたい場合や、実際に手続きを行う際は国税局・税務署を利用しましょう。
・相続税の申告書類を手に入れたい
・相続税の申告・納付・届出などをしたい
国税局・税務署は、税金のことであれば気軽に相談できます。
相談は無料でできるものの、事前予約制としているケースがほとんどです。
税務署によっては税務申告書類を見せながらアドバイスをもらえる場合もあります。
ただし、相続人同士のトラブルなど個別の事案に対する相談はできません。
また、国税局や税務署でも定期的に相続税に関する無料相談を行っています。
国税局電話相談センターにて一般的な税金の電話相談を随時受け付けており、税務申告や各種税金特例に関する相談も可能です。
銀行
銀行では相続人の相談はもちろん、被相続人の財産に関する相談ができます。
例えば、下記のような相続財産対策のサポートを受けることが可能です。
・遺言書の作成サポート
・生前贈与に対する相談
・生命保険活用の提案
一方、相続人は金融機関の相続手続きや、遺言の執行、故人の財産調査などの遺産整理を銀行で行うことが可能です。
以下のようなケースでは銀行を利用するとよいでしょう。
・被相続人の口座手続き全般(凍結・名義変更など)
・相続した財産の資産運用の相談
・被相続人の資産を把握
・資産運用に関する専門家の紹介を依頼
基本的には、相談内容に応じた専門家を紹介してもらえるケースが多いでしょう。
基本的に被相続人が亡くなった後は、預金の引き出しができないため銀行に連絡して口座を凍結してもらう必要があります。
その場合は、無料で相談や手続きが可能ですが、遺言信託などの遺産整理業務を依頼する場合はまとまった金額が必要です。
また、銀行では相続財産に関するあらゆる相談ができますが、全ての相続手続きを完結させることはできません。
最終的には、弁護士や司法書士など専門家への相談が発生することを念頭においておきましょう。
専門家
相続に関する内容を相談できる専門家として、行政書士、司法書士、弁護士、税理士、不動産鑑定士などが挙げられます。
いずれの専門家もそれぞれ得意とする業務が異なるため、相続人は相談内容に応じて適切な専門家を選びましょう。
以下は専門家と相談内容をまとめた一覧表です。
〇は対応可能、△は対応できない場合がある、×は対応不可であることを表しています。
【一覧】相続に関する相談ができる専門家
相談内容 |
行政書士 |
司法書士 |
弁護士 |
税理士 |
不動産鑑定士 |
金融機関での相続手続き |
〇 |
〇 |
〇 |
△ |
✕ |
遺産分割協議書作成 |
〇 |
〇 |
〇 |
△ |
✕ |
遺言書作成 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
✕ |
相続税申告 |
✕ |
✕ |
✕ |
〇 |
✕ |
相続に関する紛争解決 |
✕ |
✕ |
〇 |
✕ |
✕ |
相続放棄 |
✕ |
〇 |
〇 |
✕ |
✕ |
相続人調査 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
✕ |
不動産名義変更 (相続登記) |
✕ |
〇 |
✕ |
✕ |
✕ |
不動産鑑定評価 |
✕ |
✕ |
✕ |
✕ |
〇 |
※職権で対応できる業務は解釈や実際に生じる実務の範囲によっても異なるため、個別案件については都度ご相談ください。
ここからは、行政書士、司法書士、弁護士、税理士、不動産鑑定士の順にそれぞれ得意とする分野や相談できる内容を詳しく解説します。
ご自身が抱えている相続問題を解決するための相談先が分からない場合は、ぜひ参考にしてください。
行政書士
行政書士は行政との橋渡しとなる業種であり、書類作成の専門家です。
主に、官公庁(省庁、都道府県庁、市町村など)へ提出する書類の作成を行います。
また、権利義務や事実証明に関する書類の申請を代行する許認可申請の代理なども業務としています。
相続に関する内容で行政書士に依頼できるのは、以下の手続きです。
・相続人調査
・相続財産調査
・遺産分割協議書の作成
・銀行など預貯金の解約
・相続した株式の名義変更
・相続した自動車の名義変更
・遺言書の作成
相続人調査や相続財産調査は、相続人や相続財産を確定する重要な調査です。
後日、遺産の分割方法を決める遺産分割協議の際に必要な情報なので早めに依頼しましょう。
遺産分割協議書とは、遺産分割協議の内容を書面にまとめたものです。
財産の名義変更や預貯金の払い戻しなどに使用する他、後日の紛争を予防するのに役立ちます。
遺産分割協議書は税務署や法務局、銀行などに提出する書類です。
必要な情報を集めるのも難しいため、短時間で正確に作成するなら行政書士に作成しましょう。
遺言書作成は行政書士に依頼できますが、相続登記や裁判所に提出する書類(相続放棄申述書など)の作成はできません。
司法書士
司法書士は、登記や供託手続きなどの法律上業務を専門とする職種です。
主に法務局や検察庁、裁判所などに提出するための書類を作成し、不動産登記や相続に関わる書類の作成を依頼できます。
相続に関する相談で司法書士に依頼できるのは以下の手続きです。
・相続登記の依頼
・相続放棄の相談
・不動産の名義変更
・遺言書の作成
・遺産分割協議書の作成
承継する遺産に家や土地などの不動産が含まれている場合は、司法書士が相続登記を行えます。
相続登記を行わないと罰則が適用される可能性が高いので、注意しましょう。
また、司法書士は不動産登記を専門としているため、相続によって家や土地の所有者が移転した場合は所有権移転の登記の依頼が可能です。
また、遺言書の作成は行政書士にも依頼できますが、裁判所に提出する相続放棄申述書などの書類作成ができるのは、司法書士と弁護士のみです。
遺言執行者の専任や相続放棄などを裁判所に申し立てるのに必要な書類は、司法書士に依頼しましょう。
弁護士
弁護士は、幅広い法律事務を行える専門家です。
法律の専門家としてさまざまなトラブルを解決できます。
相続に関する相談で弁護士に依頼できる内容は以下のとおりです。
・相続に関するトラブルの相談
・遺産分割の相談
・相続放棄や相続財産の相談
・相続手続き全般の代行
弁護士への依頼が多いのは、相続に関するトラブルが起きたケースです。
具体的には、裁判手続きの代理や他の相続人との交渉・対応を依頼できます。
例えば相続人の中に法定相続分を超える権利を主張したり、遺言書の無効を主張したりする人がいるなどの問題を解決したい場合は、弁護士に相談しましょう。
相続人同士が不仲なため、話し合いが進まなかったりできなかったりする場合にも有効です。
ただし、弁護士に依頼する際はまとまった費用が必要です。
税理士
税理士は税に関する専門家として、相続税の計算や節税アドバイス、税務署への相続税の申告の手続きなどを行います。
相続に関する相談で税理士に依頼できる内容は、以下のとおりです。
・相続税に関する相談(相続税の計算や節税アドバイス)
・税務署への相続税の申告
・相続財産を売却した場合の確定申告の代行
・故人に収入があった場合の準確定申告の代行
税理士に依頼できるのは、主に相続税に関連する内容です。
特に被相続人が多額の財産を残している場合は、相続税申告の要否を確認する必要があります。
相続財産が明らかに基礎控除に収まる場合は、相続税申告の必要はありませんが、判断に迷う場合は税理士に相談するのが無難です。
また、相続財産が基礎控除を超える場合は納税の有無に関わらず相続税申告が必要になりますが、相続財産の評価や相続税を考慮した遺産分割方針のアドバイスや各種税額控除や特例のアドバイスを受けることも可能です。
ただし、相続税は特に税理士の知識・経験・ノウハウでアドバイスに差が出やすく、納税額にも大きな差が出る場合があります。
特に差が出やすいのが土地の評価額なので、土地をたくさんお持ちの方は注意が必要です。
不動産鑑定士
不動産鑑定士とは、不動産の適正な価格を判断し決定する専門家です。
主に不動産鑑定評価書の作成を行います。
相続に関する相談で不動産鑑定士に依頼できる内容は以下のとおりです。
・相続する不動産の適正な時価の算定
相続税の申告で使用する相続税評価額は、国税庁が規定する財産評価基本通達と呼ばれる指針によって評価を行うのが一般的です。
しかし、土地が所在するエリアや、位置、形状、高低差、地積、特殊な事情等により、財産評価基本通達では適正な評価ができず、相続税評価を時価(実際に売れる金額)が大きく下回ることがあります。
このような場合、相続税評価を適正な時価で評価して申告するのが妥当なことから、不動産鑑定士の不動産鑑定評価等を使用して相続税申告を行うことがあります。
一般に不動産鑑定評価書の作成報酬は高額ですが、実際に納める相続税額によっては決して高くないかもしれません。
相続の相談は専門家同士が連携する事務所への依頼がおすすめ
相続問題に詳しい専門家にはそれぞれの業務範囲があるため、相談できる内容が異なります。
相続に関する悩みや相談内容に応じて適した専門家を選ばなければならないのは、手間がかかる作業でしょう。一貫してさまざまな依頼をしたい場合は、専門家同士が連携している事務所を選ぶのも一つの方法です。
はじめて相続の手続きを行う場合や周りに相談できる人がいない場合は、専門家同士の連携や手配まで任せられる総合事務所の利用がおすすめです。
相続に関する相談内容に合わせて適切な専門家に相談できるため、必要な手続きをスムーズに進められます。
まとめ
相続に関する相談は、内容によって適切な相談先が異なります。
公的機関や銀行、行政書士、司法書士、弁護士、税理士、不動産鑑定士など、それぞれ専門とする範囲があるため、相続の際は内容に応じて相談先を選びましょう。
また、相続は適切な評価をして相続税を節税できるケースもあります。
特に相続の作業をはじめて行う人にとっては、効率よく手続きを行うことは難しいため、専門家同士が連携している事務所を選ぶのがおすすめです。
フジ相続税理士法人は、相続専門の税理士と不動産鑑定士が協働する、土地の相続税評価を得意とする税理士事務所です。
相続に特化して数多くの相続税申告を手掛けることから、相続人に適切なアドバイスができ、相続税申告手続きもスムーズです。
また土地の相続税評価に精通した不動産鑑定士が、時価の観点からすべての土地をチェックして、適正な評価を行うので、特に相続財産に土地が含まれる場合に納税額に差が出ます。
無料相談も行っているので、相続・不動産に関することならお気軽にご相談ください。
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