相続した土地を売却する際の税金の計算方法は?控除や特例についても解説

相続した土地を売却する際の税金の計算方法は?控除や特例についても解説

相続した土地を売却しようとする際、「どのくらい税金がかかるのか」「特別な手続きは必要なのか」といった疑問を持つ方も少なくありません。
実際、相続した土地を売却する際には複数の税金が関係しますが、一定の条件を満たせば各種控除や特例を適用することも可能です。

本記事では、相続した土地の売却時に生じる税金について、計算方法や適用可能な特例・控除の概要を説明します。
ご自身のケースと照らし合わせながら読み進めていただき、税金の試算や売却判断の一助としてご活用ください。

もくじ

相続した土地を売却する際にかかる税金とは?

相続した土地を売却する際にかかる税金とは?

土地を売却する際には、主に以下の税金がかかります。

土地を売却する際に関係する税金

印紙税:土地の売買契約書に貼付する収入印紙に対して課される税金
登録免許税:抵当権の抹消や名義変更などの登記手続きに必要な税金
譲渡所得税:土地の売却によって得た利益(譲渡所得)に対して課される所得税の一種
復興特別所得税:所得税と併せて課税される、東日本大震災の復興財源確保を目的とした税金
住民税:売却で得た所得に対して、翌年度に課される地方税

また、売却時には固定資産税の精算も必要です。
固定資産税の清算方法に法的な規定はありませんが、一般的には不動産の引渡日(所有権移転日)を基準として日割りで計算し、引渡日以降の分を買主が売主に支払う形で調整されます。

ここからは、相続した土地を売却する場合に関係する各種税金について、詳しく解説していきます。

①相続税

相続税とは、亡くなった方(被相続人)から財産を引き継いだ相続人に課される税金です。
相続税には一定の非課税枠である「基礎控除額」が設けられており、相続財産の総額がその金額を超えた場合に課税されます。

また、相続によって取得した土地や建物をのちに売却した場合も、これらは相続財産として課税対象に含まれため、注意が必要です。
基礎控除額は、以下の計算式で求められます。

3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

②印紙税

土地の売買契約書は、印紙税法で定められた「課税文書」とみなされるため、収入印紙を貼付する義務があります。
契約書には、取引金額に応じた額の印紙を忘れずに貼付しましょう。
印紙の貼付漏れや金額が不足していると、本来の税額に加えて過怠税が課される場合があります。

以下に、2027年3月31日までの契約書に適用される軽減措置を反映した印紙税額をまとめます。

記載された契約金額印紙税額(軽減後)
1万円未満非課税
1万円を超え10万円以下200円(※この区分は軽減措置の対象外)
10万円を超え50万円以下200円
50万円を超え100万円以下500円
100万円を超え500万円以下1,000円
500万円を超え1,000万円以下5,000円
1,000万円を超え5,000万円以下10,000円
5,000万円を超え1億円以下30,000円
1億円を超え5億円以下60,000円
5億円を超え10億円以下160,000円
10億円を超え50億円以下320,000円
50億円を超えるもの480,000円
契約金額の記載のないもの200円

③登録免許税(名義変更)

被相続人名義の土地を売却するには、まず不動産登記簿上の名義を相続人に変更する「相続登記」を行う必要があります。
その際に課税されるのが登録免許税であり、法定相続人が相続や遺産分割によって不動産を取得した場合には、固定資産税評価額の0.4%が課税額となります。

一方、遺言によって法定相続人以外が取得する場合には、課税率は2%となり、負担が大きくなります。
また、相続登記には登録免許税のほか、司法書士への報酬や必要書類の取得費用もかかります。
報酬額は相続財産の所在地や土地数によっても異なりますが、5万円から15万円程度を目安として手続き前に見積もりを取っておくとよいでしょう。

④登録免許税(抵当権抹消)

売却予定の土地に抵当権が設定されている場合、抵当権を抹消するための登記手続きが必要になります。

この登記を行うには、抵当権者から発行される書類が必要となるため、売却が決まった段階で速やかに抵当権者に連絡を取り、書類の準備を依頼しましょう。
抵当権抹消登記にも登録免許税がかかります。

税額は、「抵当権を抹消する不動産の数×1,000円」で計算されます。

⑤譲渡所得税・住民税

土地を売却して得た利益には、所得税と住民税が課されます。
この利益は「譲渡所得」と呼ばれ、次のような計算式で課税額を求めます。

課税譲渡所得金額=土地の売却による収入金額−(取得費+譲渡費用)−特別控除額

譲渡所得税の税率は、土地の所有期間によって異なり、相続した場合は被相続人が所有していた期間も合算されます。

また、取得費が不明なケースでは、売却額の5%を概算取得費として計算する方法が認められています。
譲渡所得税の具体的な計算方法については、後述する事例で詳しく紹介します。

⑥復興特別所得税

復興特別所得税は、東日本大震災の復興のための財源を確保する目的で導入された税金です。

2013年1月1日から2037年12月31日までの25年間、所得税の税額に対して2.1%を乗じた金額が復興特別所得税として追加で課されます。
この税金は、給与や事業所得だけでなく、相続した土地や建物を売却して得た譲渡所得にも適用されます。

⑦固定資産税

固定資産税は、毎年1月1日時点で登記簿に名前が記載されている土地の所有者が納める税金です。

税額は、市区町村から送付される納税通知書に記載されています。
共有名義の場合は代表者に通知されます。

土地の登記名義人が亡くなった場合は、通常、相続人が納税義務を引き継ぎます。
土地を売却する際の固定資産税の精算方法については、法的な規定はありません。
しかし、取引の実務では引渡日を基準として日割り計算を行い、引渡日以降の分を買主が負担することが一般的です。

相続した土地の売却時に発生する税金の計算方法

相続した土地の売却時に発生する税金の計算方法

土地や建物を売却して利益が発生した場合は、所得税、住民税、復興特別所得税が課税されます。
これらの税金を正確に計算するためには、次のような情報が必要です。

相続した土地を売却する際の所得税と住民税の算出に必要な情報
  • 譲渡所得金額
  • 土地の所有期間
  • 土地の取得費
  • 譲渡費用
  • 特別控除額

譲渡所得税の基本的な計算式は次のとおりです。

譲渡所得税の計算

課税譲渡所得金額=譲渡収入金額−(取得費+譲渡費用)−特別控除額
譲渡所得税=課税譲渡所得金額×税率

特例や控除には適用条件があるため、実際の計算や申告には注意が必要です。

課税譲渡所得金額に課される税金と税率(所得税・住民税・復興特別所得税)

土地を売却して利益が発生した場合は、所得税、住民税、復興特別所得税の3つが課税されます。

これらの税率は、土地の所有期間に応じて異なります。
以下は、所有期間ごとの税率一覧です。

区分所得税住民税復興特別所得税合計税率
短期譲渡(5年以下)30%9%0.63%39.63%
長期譲渡(5年超)15%5%0.315%20.315%

土地を相続して売却する場合には、被相続人が所有していた期間も合わせて所有期間を計算します。

そのため、相続して間もない場合でも、長期譲渡と判定されるケースがあります。

土地の取得費

土地の取得費とは、その土地を取得する際にかかった費用を指します。
相続によって土地を引き継いだ場合には、被相続人が過去に支払った取得費も引き継ぐことができます。
具体的に取得費に含まれるものは、以下のような費用です。

取得費に含まれるもの
  • 土地購入代金および購入手数料
  • 土地購入時に納めた税金(登録免許税、不動産取得税、印紙税など)
  • 土地取得時の登記費用
  • 土地の造成費用、測量費用
  • 借地権に関する契約等でかかった費用
  • 所有権を確保するために要した費用(訴訟費用など)
  • その他、土地の取得に関連する費用(他の土地契約を解除する際の違約金など)

相続によって取得した土地では、当時の取得費が不明なことも多くあります。
その場合は、売却金額の5%を概算取得費として計算することが認められています。

なお、概算取得費の金額が適正金額よりも少ない場合、譲渡所得が大きくなり課税額が増える恐れがあります。
その場合、不動産鑑定士に依頼して「推計取得費」を算出する方法もあります。
費用は生じますが、概算取得費よりも有利になる場合もあるため、状況に応じて検討してみる価値はあるでしょう。

土地の譲渡費

土地を売却する際に譲渡費として控除できるのは、売却に直接関連する費用に限られます。
主なものとしては、以下のような費用が該当します。

譲渡費に該当するもの
  • 不動産会社に支払った仲介手数料
  • 契約書に貼付する印紙税(売主が負担した場合)
  • 売却のために土地上の建物を取り壊した費用や建物の損失額
  • より有利な条件で売却するために、既に締結していた契約を解除した場合の違約金

一方で、固定資産税や土地の維持・管理にかかった費用、売却代金を回収するための費用などは、売却に直接関係がないため、譲渡費としては認められません。

相続した土地の売却で適用できる特例・控除とは?

相続によって取得した土地を売却した場合、一定の条件を満たすことで、税金の特例や控除を適用できる可能性があります。

具体的にどのような制度があるのか紹介していきます。

相続税の取得費加算の特例

相続税の取得費加算の特例とは、相続や遺贈で取得した不動産などを売却する際に、納めた相続税の一部を取得費として加算できる制度です。

これにより、譲渡所得が減少し、結果として税負担が軽減される場合があります。
この特例を適用するには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

取得費加算の特例を適用するための要件
  • 相続や遺贈によって財産を取得した人である。
  • その取得に対して相続税が課税されている。
  • その財産を、相続開始日の翌日から相続税申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡している。

空き家の売却時に3,000万円特別控除される「空き家特例」

相続した空き家を売却する場合、一定の条件を満たせば、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度があります。

この制度は「空き家特例」と呼ばれ、2027年3月31日までに売却した場合に適用されます。
主な適用条件は、次のとおりです。

3,000万円控除の空き家特例の主な適用要件

(1)建物に関する条件

  • 昭和56年5月31日以前に建築された建物である。
  • 区分所有建物登記がされていない建物である。
  • 被相続人が亡くなった時点で一人暮らしである。

(2)売却した人に関する条件

  • 相続または遺贈によって建物を取得した人である。

(3)売却の内容に関する条件(以下のいずれかを満たす)
パターンA:「家屋」または「家屋と敷地」を売却する場合

  • 相続から売却までの間、建物を事業、賃貸、居住に使っていない。
  • 売却時点で耐震基準を満たしている。

パターンB:建物を解体して土地のみを売却する場合

  • 相続から解体までの間、建物が使用されていない。
  • 相続から売却までの間、土地も使用されていない。
  • 解体後から売却まで、土地が構築物の敷地として使われていない。

パターンC:令和6年1月1日以降の売却(Aに該当しない場合)

  • 売却まで事業、賃貸、居住に使っていない。
  • 売却後2月15日までに耐震改修を行った。
  • 売却後2月15日までに建物を解体した。

(4)その他の条件

相続開始から3年を経過する日の12月31日までに売却している。

  • ほかの特例を併用していない。
  • 土地と建物を合わせた譲渡価格が1億円以下である。
  • 同じ被相続人から複数の空き家を相続している場合、他のケースでこの特例を活用していない。
  • 売却相手が親族など特別な関係者でない。

居住用財産を売却(譲渡)した場合の3,000万円の特別控除の特例

この特例は、マイホームとして使用していた不動産を売却した際に、最大3,000万円まで譲渡所得から控除できる制度です。

適用を受けるためには、次のような条件をすべて満たす必要があります。

3,000万円控除のマイホーム特例の主な適用要件

(1)売却する資産に関する条件
以下のいずれかに該当する家屋または敷地が対象

  • 現在住んでいる家屋
  • 過去に住んでいた家屋(住まなくなってから3年以内に売却したもの)
  • その家屋と一緒に売った敷地または借地権
  • 取り壊した家屋の跡地(取り壊し後1年以内に契約、かつ住まなくなってから3年以内に売却)
  • 災害で失われた家屋の敷地(災害後3年以内に売却)

(2)過去の特例利用に関する条件

  • 売却した年、前年、前々年にマイホーム特例や損益通算特例を使っていない。
  • 買換え特例や収用による特別控除を受けていない。

(3)売却相手に関する条件

  • 親子、夫婦など特別な関係のある人に対する売却でない(同居の親族や内縁関係を含む)。


※以下のような家屋には、この特例は適用できません。

  • 仮住まいや新築までの一時的な入居物件
  • 趣味や保養のための別荘など

そのほかの特別控除

上記以外にも、一定の条件を満たせば適用できる特別控除がいくつかありますが、対象者は限られています。

特別控除の種類主な条件控除額
平成21年および平成22年に取得した土地の特別控除・平成21年または22年に取得した国内の土地である。
・5年以上保有してから売却している。
・親子や配偶者など特別な関係のある人から取得した土地ではない。
※詳細条件は国税庁ホームページ参照
1,000万円
低未利用土地等の特別控除・都市計画区域内の利用が少ない土地である。
・売却年の1月1日時点で5年を超えて所有している。
・売却先が親族など特別な関係者でない。
※詳細条件は国税庁ホームページ参照
100万円

相続した土地の売却時の計算事例

相続した土地を売却する際、譲渡所得税がどのように算出されるのか、2つの具体例を用いて説明します。

(事例)先祖より受け継がれた亡父名義の土地を相続して売却

先祖から受け継がれてきた亡父名義の土地を相続し、売却したケースの譲渡所得税を計算します。

(1)前提条件
譲渡価格:3,000万円
取得費:不明のため、概算取得費=3,000万円×5%=150万円
譲渡費用:150万円
所有期間:10年(長期譲渡に該当)

(2)譲渡所得の計算
譲渡所得=3,000万円−150万円−150万円=2,700万円

(3)所得税・復興特別所得税
所得税:15%
復興特別所得税:15%×2.1%=0.315%
2,700万円×15.315%=413万5,050円

(4)住民税
住民税:5%
2,700万円×5%=135万円
合計税額(国税+地方税):548万5,050円

(事例)亡夫名義の土地を相続して売却

亡夫が3年前に取得した土地(領収書あり)を売却した場合について、譲渡所得税、住民税、復興特別所得税の計算例を前述の事例と同様に確認します。

【前提条件】
譲渡価格(売却価格):7,000万円
取得費:5,000万円
譲渡費用:200万円
所有期間:3年(短期譲渡所得に該当)

この条件の場合、譲渡所得に対して、
・所得税:30%
・住民税:9%
・復興特別所得税:30%×2.1%=0.63%
合計税率:39.63%が適用されます。

課税対象となる譲渡所得は、
7,000万円−5,000万円−200万円=1,800万円

税額は以下のとおりです。
1,800万円×39.63%=7,133,400円(713万3,400円)

なお、詳細な税額は個別の状況により異なるため、専門家への相談がおすすめです。

相続した土地の売却手続きと流れ

相続した土地の売却手続きと流れ

相続した土地を売却するには、いくつかの段階を経て手続きを進める必要があります。
相続登記や不動産会社との契約、買主との売買契約、さらには確定申告まで、一連の流れを理解しておくことでトラブルを避け、スムーズに手続きを進めることができます。

相続した土地の売却前に準備する書類

相続した土地を売却する前には、以下のような書類をあらかじめ用意しておくことが一般的です。

相続した土地を売却する前に用意しておきたい書類
  • 不動産の登記簿謄本
  • 相続関係説明図
  • 遺言書または遺産分割協議書(当該書類がある場合)
  • 固定資産税評価額が確認できる書類(例:納税通知書)
  • 登記識別情報通知書(相続登記時に交付されたもの)
  • 売却する相続人の実印
  • 売却する相続人の印鑑証明書
  • 本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)

なお、売却の方法や土地の状況によっては、上記以外の書類が求められることもあります。
不動産会社に相談しながら、必要書類を確認して準備を進めましょう。

相続した土地の売却手続きの流れ

相続した土地を売却するには、まず不動産の名義を相続人へ変更する「相続登記」の手続きが必要になります。
次に、不動産会社に査定を依頼し、査定価格や担当者の対応なども比較して、信頼できる会社と媒介契約を結びます。
媒介契約が締結されると、不動産会社が広告活動や購入希望者との調整を進めます。

購入希望者が見つかり、条件が整った場合は、売買契約を締結して残代金の支払いと同時に土地を引き渡し、買主名義への所有権移転登記を行います。
土地の売却によって利益(譲渡所得)が生じた場合は、売却した翌年の2月16日から3月15日の間に確定申告を行い、必要に応じて所得税・住民税を納めます。
ここからは、それぞれの手続きについて詳しく解説します。

①相続登記の申請手続き

土地を売却するには、まず不動産登記簿に記載された名義を、亡くなった方(被相続人)から相続人へ変更する「相続登記」の手続きが必要です。
相続人のうちの一人がその土地を取得して売却する場合には、相続人全員で財産の分け方を話し合う「遺産分割協議」を行い、その内容を文書化した「遺産分割協議書」を作成する必要があります。

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この協議書と必要書類を揃え、法務局へ提出することで、土地の名義を特定の相続人名義へ変更することができます。
ただし、協議の調整や必要な書類の収集に時間がかかると、登記が完了するまでに予想以上の時間を費やす場合があるため注意が必要です。

なお、2024年4月1日より相続登記が義務化されました。
これにより、相続の開始を知った日から3年以内に相続登記を行わなければなりません。
正当な理由なく登記を行わなかった場合には、「過料(行政罰)」が科されることもあります。
手続きを遅らせないよう、早めに対応することが大切です。

②不動産会社と媒介契約を締結(土地の査定・売却を依頼)

「土地の査定」とは、相続した土地のおおよその市場価格(売却の目安となる金額)を不動産会社に見積もってもらう作業です。
不動産会社に依頼する際は、金額だけでなく、担当者の説明や対応も比較して判断し、信頼できる業者を選んで媒介契約を結びましょう。
契約後は、その不動産会社が広告や販売活動、購入希望者への案内を担当します。

土地売却の媒介契約には、次の3種類があります。

契約種類複数業者への依頼自己発見取引
(自分で買い主を見つけた場合の直接取引)
レインズ登録義務業務報告義務
一般媒介契約可能可能任意任意
専任媒介契約不可(1社のみ)可能7日以内2週間に1回以上
専属専任媒介契約不可(1社のみ)不可(必ず仲介業者を通す)5日以内1週間に1回以上

それぞれ契約内容に違いがあるため、ご自身の状況や希望に沿った契約形態を選ぶことが大切です。
不動産の査定や売却を依頼する際に、事前に用意しておくとよい書類は次のとおりです。

不動産の査定や売却を依頼する際、事前に用意しておきたい資料
  • 購入時の売買契約書
  • 重要事項説明書(物件購入時のもの)
  • 登記事項証明書(登記簿謄本)
  • 固定資産税・都市計画税納税通知書
  • 固定資産税評価証明書
  • 土地測量図
  • 境界確認書

これらの書類を事前に揃えておくことで、査定や契約手続きが円滑に進みやすくなります。

③売買契約の締結・土地の引き渡し(決済)

購入希望者が決まったら、売主と買主の間で正式に売買契約を締結します。
その後、残代金の支払いと土地の引き渡し(所有権の移転)を行い、取引は完了します。
このタイミングで、買主名義への所有権移転登記が申請されるのが一般的です。
売買契約の決済時に、売主が用意しておく代表的な書類や持ち物は、以下のとおりです。

売買契約の決済時に、売主が用意しておく主な書類や持ち物
  • 登記識別情報通知書(または登記済権利証)
  • 印鑑証明書(発行から3か月以内のもの)
  • 実印
  • 本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)
  • 固定資産税・都市計画税の納税通知書
  • 残代金の入金確認用の預金通帳または口座アプリ
  • 仲介手数料
  • 司法書士報酬および登録免許税
  • 不動産の鍵
  • 建築確認済証、検査済証、建物図面などの関連書類

土地に抵当権(ローンなどの担保)が設定されている場合は、あらかじめ抵当権抹消に必要な書類も準備しておく必要があります。

④税金の申告(確定申告)

不動産を売却した場合は、原則として譲渡所得税の計算を自ら行い、売却した翌年の2月16日から3月15日までに確定申告を行う必要があります。
売却後に税務署から「譲渡所得がある場合の確定申告のお知らせ」が届くこともありますが、譲渡所得が発生していない場合は申告は不要であり、案内に同封された返信用はがきでその旨を返送すれば問題ありません。

ただし、申告の期限を過ぎると、3,000万円の特別控除などが適用できなくなるだけでなく、無申告加算税や延滞税が課されることもあるため注意が必要です。

相続した土地を売却する際の注意点

売却のタイミングを見計らう

相続した土地を売却する際には、「いつ売却するか」が税額に大きく影響するため、所有期間を十分確認しておくことが重要です。
売却する年の1月1日時点で所有期間が5年以下の場合、所得税30%、住民税9%と高い税率が適用されますが、5年を超えると税率が大きく下がります。

また、相続から3年以内に売却することで、相続税の一部を取得費に加算できる「取得費加算の特例」が適用できる可能性があります。
保有期間や特例の条件に加えて、不動産市場の動きや買主の需要も踏まえたうえで、売却のタイミングを慎重に検討しましょう。

小規模宅地等の特例を適用する際のタイミング

小規模宅地等の特例とは、一定の要件を満たすことで、相続税の計算上、対象となる土地の評価額を最大80%減額できる制度です。

この特例を活用するには、相続税の申告期限(相続開始から10か月以内)まで、その土地を所有していることなどが条件となります。
仮に申告期限前に土地を売却してしまうと、特例の適用が受けられなくなり、結果として多額の相続税を納めることになる恐れがあります。
制度を活用する予定がある場合は、売却のタイミングに十分注意しましょう。

土地取得に関する書類を収集する

相続した土地を売却する際には、その土地の購入時にかかった費用(取得費)を確認することが大切です。
しかし、相続の場合は被相続人が取得した当時の資料が見つからず、取得費が不明というケースも少なくありません。

その場合、原則として売却価格の5%を取得費とする「概算取得費」が適用されますが、概算取得費の金額が適正金額よりも少ない場合、譲渡所得が増え、課税額が高くなる恐れがあります。
そのため、売買契約書や仲介手数料の領収書など、取得時にかかった費用をできるだけ揃えておくことが、税負担の軽減につながります。

また、不動産鑑定士に依頼して推計取得費を算出する方法もあります。
費用は生じますが、概算取得費よりも有利になる場合もあるため、状況に応じて検討してみる価値はあるでしょう。

土地の譲渡費用を計上する

土地を売却した際にかかった費用のうち、条件を満たすものについては「譲渡費用」として譲渡所得の計算時に控除することができます。
譲渡費用として計上できる代表的なものは、以下のとおりです。

主な譲渡費用
  • 不動産会社へ支払った仲介手数料(売買契約時)
  • 売却のために実施した不動産鑑定にかかる鑑定料
  • 売却前に実施した土地の測量費
  • 建物を取り壊して更地にした際の解体費用(売却目的の場合)
  • その他、土地売却に直接必要だった手続きに関する費用

これらの費用を正しく計上するには、領収書や契約書などの書類を保管しておくことが重要です。

相続した不動産の売却収入による寄付金は、控除対象外となる

相続税における「寄付金控除」とは、相続や遺贈によって取得した財産を、相続税の申告期限までに国や地方公共団体などに寄付した場合、その寄付した財産の金額を相続税の課税対象から控除することができる制度です。

ただし、相続した不動産をいったん売却し、現金化したあとに寄付した場合(いわゆる換価財産)は、この寄付金控除の対象にはなりません。
また、ふるさと納税のような制度を通じて行った寄付についても、相続税の寄付金控除とは関連がないため、適用されません。

まとめ:相続した土地売却を検討する場合は専門の税理士へ相談

相続した土地の売却では、不動産の売却手続きだけでなく、税金の仕組みや特例の条件も理解したうえで、計画的に進めることが重要です。
そうすることで、不要な税負担を抑えることにつながります。

特に相続した不動産の売却では、売却の時期や控除の可否など、多くの検討事項があります。
手続きの漏れや特例の適用漏れを防ぐためにも、相続税に精通した税理士へ相談すると安心です。

藤宮 浩(不動産鑑定士)

この記事の監修者

フジ総合グループ代表 藤宮 浩(ふじみや ひろし)|不動産鑑定士
フジ総合グループの代表を務め、年間1,100件以上の相続関連案件の土地評価に携わる。
相続税還付業務の第一人者として各地での講演を多数行うほか、テレビ、雑誌、新聞など、各種媒体への出演、寄稿も行う。
髙原 誠(相続専門の税理士)

この記事の監修者

フジ総合グループ副代表 髙原 誠(たかはら まこと)|税理士
フジ総合グループの副代表を務め、不動産に強い相続専門事務所の代表税理士として、年間約1,100件の相続税申告・減額・還付案件に携わる。
多くの経験とノウハウを活かした相続実務に定評があり、プレジデントや週刊女性など各種媒体への寄稿・取材協力も多数行う。

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